hydrangeaさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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福田村事件(2023年製作の映画)

3.8

機会(口実)があれば、人は人を殺したがる。
人は自分より下層の人がいると嬉しい。バカにできるし、虐められるから。
そういった人々が複数になると連帯が生まれ、万能感が上昇する。
ジャーナリズムは事実を情
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怪物(2023年製作の映画)

4.0

前半で張り巡らされた違和感という伏線が、後半でサクサク回収されていく。結末の解釈だけは観客に委ねるという芸術的親切心もちゃんとある。私の苦手な安藤サクラのねちっこい演技がここでも遺憾なく発揮されていて>>続きを読む

さかなのこ(2022年製作の映画)

2.5

のんさんが魅力的。彼女の中性的な存在感が素晴らしく、彼女が着れば学ランもダサいポロシャツもスタイリッシュ。
でも映画として面白いかというと、全然面白くなかった。他にも良い役者たちが出ているのに、もった
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キングダム II 第3章/第4章(1997年製作の映画)

3.7

前回裂けたお股から飛び出した恐怖の巨大ベイビーが、超絶巨大化して、その重みに骨が耐えられなくて死んでしまったが、実は善の存在であり、ホロリなのだった。一方悪の存在はやりたい放題だが、ずっこけてばかりで>>続きを読む

ジェーンとシャルロット(2021年製作の映画)

4.0

心情を表すのにふさわしい言葉を選びながら紡がれるジェーンのフランス語が尊い。ひとつの文学になっていると思う。楽天的かつ悲観的。人々に寄り添う術を知りながら、自分の娘たちへの接し方は不器用だった人。>>続きを読む

シモーヌ フランスに最も愛された政治家(2022年製作の映画)

4.0

ホロコーストを生き延びて政治家となり、中絶法を勝ち取り、移民、エイズ患者、囚人らの人権と健康を支援して、欧州議会の議長にもなった人。既婚で3人の子の母でもある。彼女の心身を塞ぐ惨事の記憶がどれだけ大き>>続きを読む

サントメール ある被告(2022年製作の映画)

4.0

元凶は、法学から哲学に転部したいと言った娘に仕送りを打ち切った父親だと思う。ロランスは学籍がなくても熱心に聴講に通っていた訳だし、彼女の人生をネガティブな方向に舵を切ったのが、白人でもアカデミック社会>>続きを読む

美しき結婚(1981年製作の映画)

3.7

主人公も相当痛いけど、従姉妹を紹介して焚き付けて煽りまくる女友達が罪深い。
とは言え恋する女性の内面は万国共通で、脈ないって薄々わかっているのに、クヨクヨしながらも付きまとってしまうのよね。
フランス
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永遠のジャンゴ(2017年製作の映画)

3.0

アコギ修行者としては疑問も多い。音響装置がない場所で他の楽器の混じった状況の中、ギターソロの音がしっかりと聞こえたのだろうかとか。
逆に音量補うためにジプシー音楽に複数のギター奏者がいた意味はよくわか
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キングダム(1994年製作の映画)

3.6

1〜2話で蒔かれた種が3〜4話でめちゃめちゃ面白くなるという一気見しがいのある4時間半。(ついウトウトした1〜2話だが、ここを読むととそういう方が多いので、睡眠効果のある化学物質がスクリーンから放出さ>>続きを読む

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)

3.8

どの瞬間も美しいので、もしかして死ぬってこんな感じ?と、思わされる。
人が死ぬ場面もコンピューターが無力化される場面も、時間軸が渾然一体である宇宙に溶け込むプロセスの中なので悲壮じゃない。
結局、本作
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華氏451(1966年製作の映画)

3.7

『突然炎のごとく』で掴みどころのない文学青年役のイメージが強かったオスカー・ウェルナーが、この作品ではやはり掴みどころはない上に薄気味が悪い感じもあって、存在自体がSFだ。
車やポストの赤や制服のデザ
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メッセージ(2016年製作の映画)

3.5

地球外生命体があるとしたら、それは人間が知覚できない全く異次元のものだと思っているので、こんなに見えて聞こえて文字まで理解できるなんて都合良すぎると思う。宇宙船も生命体も安っぽく感じる。
時間の進行が
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アフター・ヤン(2021年製作の映画)

3.9

東洋と西洋の静かな融合が全編を貫く。素材の感じられる衣装、スタイリッシュなインテリア空間、穏やかな物腰。
小津が大好きな監督だが、日本でも西洋でもない外部の眼に映る小津の美意識を認識させられる。
内容
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ザ・ビートルズ:Get Back(2021年製作の映画)

4.0

数日かけて完走。胸熱。

次に動物を飼うことがあったら、ジョジョと名づけよう、と思う。

ビリー・プレストンの登場で楽曲がグンとよくなる。
リンゴ・スターのチャーミングな笑顔が素敵だった。
ジョージ・
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苦い涙(2022年製作の映画)

3.6

映画人の自己愛、身勝手、傲慢さなどを滑稽に描いているが、それは多かれ少なかれ一般人にも当てはまることばかり。むしろなりふり構わない主人公の破れかぶれが爽快だ。美青年は写真だとモサっとムチっとした感じだ>>続きを読む

マイスモールランド(2022年製作の映画)

4.0

欧州はクルド問題に積極的に関わっているけれど、日本では殆ど意識されていないなと、常々感じていた…
この映画は日本におけるクルド難民の実態を伝えているが、それだけではなく、思春期の少女•少年の描かれ方
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TAR/ター(2022年製作の映画)

3.9

ケイト・ブランシェットの全ての動きがエネルギッシュで美しくて、目がスクリーンに釘付けになりっぱなしの158分だった。彼女は常に至高の音楽を目指していて、自分にも他者にも厳しく妥協がない。饒舌で、時には>>続きを読む

Ryuichi Sakamoto: CODA(2017年製作の映画)

3.2

坂本龍一のチャーミングさがぎっしり詰まっているドキュメンタリー。あ、良い音だなと感じる瞬間が同じで、普遍的な感性を持った人なんだと思った。彼はメチャクチャ笑顔になるのでわかりやすい。

彼の作る映画音
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それでも私は生きていく(2022年製作の映画)

4.0

原題のUn beau matin(美しい朝)は、哲学教師だった父親が日記につけていたタイトル。

仕事、子育て、介護、そして恋愛でいっぱいいっぱいのシングル女性の姿が、本当に等身大で描かれている。観て
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EDEN/エデン(2014年製作の映画)

1.5

音楽にまつわる映画なのに、音楽の魅力が感じられない。クラブシーンの話なのに、クラブの楽しさが伝わってこない。流行りのDJが主人公なのに、プレイ中のノリがモサっとしている。しょっちゅうコカイン吸ってるけ>>続きを読む

《ジャンヌ・ディエルマン》をめぐって(1975年製作の映画)

3.7

このフィルムを撮ったサミー・フレイがgood job過ぎる…単なる色男俳優じゃなかったんだな…と、一瞬思ったが、記録しておきたくなるほど刺激的な現場だったということなのだろう。
結果としてあの映画の完
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私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016年製作の映画)

3.9

オルガは美しい。うつろな怒りの蓄積を示す眼差しの強さに魅了される。静寂を保ちつつもテンポの良い編集で、構図もキマっていて、スタイリッシュな仕上がり。
ぎこちなく歩く彼女は明らかに発達障害であり、統合失
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.8

主人公は、恋人を失った喪失感と、家族を捨てた悔恨に苛まれている。それを和らげるために、健康維持などお構いなしに食欲を過度に満たすわけだが、こんなにタガが外れたようなような食べっぷりができたら快感だろう>>続きを読む

ノー・ホーム・ムーヴィー(2015年製作の映画)

3.8

老いた母親との会話は、対面でもSkypeでも、親愛な言葉の交わりに終始する。悲壮な思いはむしろ、対話を囲うように長く映し出される茫漠とした風景の映像に込められている。衰えていく最後の様子を記録するのは>>続きを読む

アダマン号に乗って(2022年製作の映画)

4.5

セーヌ川に浮かぶ船のような建造物が精神科のデイケアの場で、水平に開閉する鎧戸に覆われている外観はノアの方舟のようだ。
登場人物は皆、言葉や音楽や絵や身体を用いて、のびのびと自己を表現する術に長けている
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午前4時にパリの夜は明ける(2022年製作の映画)

4.1

絶望や悲しみや辛さを払拭するには、淡々と生きていくことだと、『サマーフィーリング』や『アマンダと僕』で示してくれたミカエル・アースは今作も同様、メソメソ泣きつつも新しい出会いの波に乗って生きていく主人>>続きを読む

幻滅(2021年製作の映画)

3.8

人間の精神の愚かさが90%、やるせなさが5%、純真さが5%という配分だが、悲劇というよりはむしろ喜劇で、さすがバルザック先生の原作。主人公の青年の成長物語でもある。配役が適材適所で、それぞれの演技や表>>続きを読む

サマーフィーリング(2016年製作の映画)

4.5

夏に親しい人を失くすのは辛い。明るい日差しも、気持ちの良い夜風も、胸を締め付けられる辛い記憶を呼び覚ますから。
主人公の男性は、決意したように新しい女性を愛し始める。それでいいんだけど、ちょっと寂しい
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囚われの女(2000年製作の映画)

3.7

少女だった『ビヨンド・サイレンス』から3年後の、ほぼ大人になったシルヴィー・テステューの美しさに見惚れた。独占欲と嫉妬心に苛まれる金持ちメソメソ男は気持ち悪すぎるが、その心情の一端は理解できる。
出て
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故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

3.7

ニューヨークの殺伐とした風景に、落ち着きと安定が感じられた。
私も母のもとを離れて海外で暮らし、娘も私のもとを離れて海外で暮らした。しかしこの母娘のような強い結びつきではなかったような…娘を心配して思
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街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)

3.5

こちらあみ子のあみ子を凌駕する落ち着きのなさ。うるさくてハチャメチャでグルーヴしていて、意識が釘付けになる。アケルマンにとって台所はサンクチュアリで、靴磨きはパラノイアックな作業らしい。

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.0

共感はするし、良いなと思う場面は幾つかあったが、全体的にぎくしゃくした映画だった。永野芽郁のヤンキー口調にも無理があって、これほどタバコの似合わん役者も珍しい…

シンプルな情熱(2020年製作の映画)

4.0

端的に言えば恋する女性の映画。文学部の先生なのに、スーパーでハーレクイン小説を買ったり、彼以外のあらゆることに上の空だったり、可愛いではないか〜
年齢に関係なく恋愛をするのは良いと思う。主人公の心かき
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花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

2.8

恋愛が面倒くさいことを思い出した。
よくこんな面倒くさいことを何度もやってきたなって、自らを労いたくなる。
趣味と恋愛は別な方が良いと思う派。
終わりの方、なかなか別れなくてイライラした。
菅田将暉く
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トリとロキタ(2022年製作の映画)

4.4

過酷な状況下を生きる移民の子供達が、搾取されまくった挙句(ベルギーの悪人だけならともかく、アフリカの母親まで送金を強要するので八方塞がりのロキタ)に悲劇的な最後を迎えるという物語なのに、不思議とカラッ>>続きを読む