箱庭のような世界と描かれぬ外側。
埋め得ない二人の空白がその断絶を際立たせ、過ごしてきた理不尽な時間を果てしないものとして映し出している。
悲惨な歴史から個人を取り返す道程は切なく険しい。けれど、なお>>続きを読む
語らないこと、語れないこと、語っても忘れること、語らなくても忘れないこと。
さまざまな語りそれ自体が、漂うように姿を浮かべ、役目を終えると消えていく。
異界に通じた車や舞台で。
22年13本目。
繰り返される同じようなシーンも、そのたびに異なる意味が与えられ、個人間の関係と集団との意識差の対比が徐々に際立つ構成にグイグイ引き込まれた。
主従が逆転する王道の仕掛けはもとより、
特に食事は、するし>>続きを読む
揺さぶりをかける人物の登場で主人公の葛藤が表面化していく過程が見事。何より原節子がうまい。こんなに上手なのかと、思慮深さを滲ませるその表情に少なからず感動を覚えた。
大阪から東京への移動で微妙に変化す>>続きを読む
過去と未来が革を通じてほどかれ、また結ばれていく。
先住民が教えてくれる。もっと昔の話を。
広大なモンタナはいつも厳しくそこにあり、ただ人々を見つめていて、誰にも知られない生と死がベッドの下で眠ってい>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
こんなにステキなかたちで過去の作品を呼び戻し、もろとも昇華させるとは。
被害と加害を善悪に矮小化せず、問題の根を断ち切るため、憎しみを抑えながらひたむきに手を合わせる。
言葉では簡単でも、制約の多いヒ>>続きを読む
そりゃないぜ笑、という数々の強引な展開に翻弄されるも、だってそうしないと話進められないんだもん!の気概すら感じるやりすぎな様式として納得することにした。
未成熟な男たちの男たちによる男たちのための、蛮>>続きを読む
博士が葛藤を経て力を振り絞る姿は落とし前の付け方として真っ当で、素直に応援できた。
ピーターが負っているままならぬ人生が凝縮された悪夢のパーティーシーンを筆頭に、ハリーが終始牙を剥き出しているが、ピー>>続きを読む
教養あるクリーンな青年がファミリーの引力と格闘していく展開はゴッドファーザーを思い出させる。
ガガの濃さもなかなかに強烈で、家族の境界線を描く役割を担いながら、薬物のごとき依存も示す難しい役柄を見事に>>続きを読む
アメイジングスパイダーマンの後に鑑賞。ピーターとベンおじさんの関係性はこちらの方がより印象深く織り込まれていて、対比するとおもしろい。
22年5本目。
ジェイミー・フォックスが不憫な役柄で深みを出していたけれど、その哀切をもう少し掘り下げてもよかったのでは。
途中まではとても良かっただけに、内面描写が薄められていく後半が惜しい。
飛行機内の悪役もパラ>>続きを読む
アンドリュー・ガーフィールドの表情がとても豊かだし、彩度とコントラストがバチバチに極まってるスパイダーマンスーツのシーンもシビれた。
映像的な満足度は高い。
22年3本目。
ゴッホをはじめとした万人に受け入れられやすい高額な絵画を、日本の企業がこぞって買い付けたバブル期。
この会社もその一つなのだろうが、
なぜか壁にはゴヤの作品が掛けられていて、組織の抱えるネジれがよくあ>>続きを読む
冒頭からグイグイ引き込まれ、ほぼ失速することなく最後まで楽しめた。
ディカプリオも、あんな大きな息子の父親役を演じる歳になったんだね。
今回もすごかったよ。
22年1本目。元旦に母とリビングで。
ブレードランナー2049とよく似たライアン・ゴズリングの役どころ。
粛々とした姿に魅了されるが、なによりも鑑賞者への信頼を担保に展開されるクールな映像の語り口に痺れた。
プレゼント開封からの切ないシーンが白眉。
中身についてのシンプルな仕掛けで、ここまで胸が詰まるのも、気丈に振る舞いながらも堪えきれない涙が「漏れて」しまう、そのお手本のような名演技あってこそ。
村瀬幸子扮するおばあちゃんが滋味深い。
彼女の佇まいを見つめるだけで価値のある映画。
ジェームズワン節は楽しめたけれど、音の付け方など含め、少しチープな印象。
思わず笑ってしまった箇所もところどころあった。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ作品は毎回楽しみにしているから、もちろんパート2も見に行く。
偶然触れた予告映像で興味をそそられたのち、監督したジャーナリストのインタビューを読んで鑑賞を決めた。
内容を一言であらわすと、ダヴィンチを描かないにもかかわらず、ダヴィンチが描かれるドキュメンタリー。>>続きを読む
ホラーの枠組みだからこそ語れる繊細な心の物語。
爪弾きにされながらも、味方が側にいるだけで闇に取り込まれず生きていけるかもしれない。
そんな勇気を与えてくれる。
後味の良い温かなエンディングも尊い。
ヘリコプターで始まり、ヘリコプターで終わる。無事に降りられない乗り物。ヴェスパーの尋問テープはちょっと見たかったな。
劇中に登場する絵画たちを物語に重ねながら有効に機能させており、Qと出会うロンドンナショナルギャラリーのシーンは故なきことではなく、そのささやかな宣言だったのだろう。
ターナーやモディリアーニといった大>>続きを読む