原題のA Boy's Life通り、内容はホロコーストを生き抜いた1人のユダヤ人少年の人生の証言であり、観客としての私がナチスの代表的な人物として知っているメンゲレという名前も彼が通過した地獄のひとつ>>続きを読む
数々の映画で観たような若者の通過儀礼のロマンス。遠い衛星からの通信のような不安定な兄の声。その光景は本当に実在していたのか。
中盤以降は不思議な展開ではあるが、みんなが夢中になっているすてきな幻想に自>>続きを読む
「裁かるゝジャンヌ」で”お前が跪いたのは天使ミカエルではなく悪魔だったのだ!”というような台詞があったが、天使の名を持った天使でも悪魔でもない放蕩息子の話だった。
お前ほんとに最初はスケッチとか描いて>>続きを読む
客観と主観、過去と現在を行き来して幾度も心中で描きなおされる大嫌い、という感情の筆跡。
ルイを恐れているよりも彼と和解してしまうことを恐れているようなアリスの態度。過去に決定的な感情の衝突があったわけ>>続きを読む
北の悲劇の少女を守るヒーロー願望は作中でもわりと冷ややかに描かれていたと思うが、長谷川の恋人を助けたい願望も割と紙一重だと思ってるので恋人という肩書って一体なんなんだろう…となってしまった。そんな気持>>続きを読む
ピアノの弾き方を忘れちゃった、という女性に春がかける「うん」という相槌のシンプルながらも強い響きに自分も何かを受け止めてもらった気持ちになり涙が込み上げてしまった。
この映画を観ている間はひとが誰かの>>続きを読む
死の影を追いながらも、影そのものにもなっていく主人公。スタンダードサイズの画面がそのまま棺桶の窓から見上げた風景になっていくところは悪夢感強くてよかった。
美術学校での制作風景に自分の学生時代の焦りの記憶が蘇り心がギュッとなり、隣人ジョーへの尊敬と引け目を感じつつもこれは納得できんぞという気持ちの生々しさで、完全に感情が過去に飛ばされてしまった。
私は『オールド・ジョイ』の「悲しみは古くなった喜び」という表現が切なくも大好きで、『ファースト・カウ』ではもはや古びることもなくなってしまった2人の永遠の喜びの結晶に触れた。
冒頭の場面を観ているが故>>続きを読む
作中、「アンクル・トムの小屋」がトットちゃんの父親の行動に影響を与える。物語に込められた普遍的な平和への祈りが伝播する尊さ。まさにこの映画を見た人々がそれを体現するのだと心に訴えかけられた。
各パート>>続きを読む
目を背けたくなるような状況が続く世界でも、それでも人と人との間にはあたたかいものが生まれるという希望を信じたい。立体的なことはなにも言えないが、カウリスマキの映画、やっぱりとてつもなく「映画だ」としみ>>続きを読む
所々、タレントとして知っているビートたけし節が覗くが、その感じが息をふっとつかせるタイミングにはなっても映画の空気を崩さないところが凄い。映画を支配している。
女性で唯一刀を持った役として芸人である>>続きを読む
ひとに秘めた未来や過去、みえないものがある、ことを肯定して優しく触れてくれる。自分の存在を映画に見つけてもらったかのような不思議な体験だった。
アンゲラ・シャーネレク作品は東京国際映画祭で観た『ミュージック』が初見だったが、こちらの作品も永い時間がシームレスに経過。この自然な時間の飛躍は一体…!?と思ったが、これが実際のところ生きていていつの>>続きを読む
街を歩くゾフィーを捉えたバスの車窓からのカットが、さっきまでそこにいた彼女を失ってしまった場所からの目線のような寂しさがあり印象深く。
二度目のマルセイユの訪問で彼女がショッキングな事件を語ったのち、>>続きを読む
激しい映画議論のシーンで感じた事だけれど、議論の中での「あなたの考えはこちらも理解しているけれど」という前置きって相手の意見への尊重を示しつつも、相手よりも一歩進んだ考えとして自分の意見を位置付けてイ>>続きを読む
磔にされた髭の女性は憂悶聖女?
グリム童話の初版にしか存在しない話だから消されてしまった歴史の象徴なのだろうか。
クールで孤高な印象を纏っているアル中女が仲良くなった女性とバー入った時にまるで見守るように彼女の方に絶妙な塩梅で目線を遣っているのに萌え。
まさかのWhat's in my bag?アル中女バージョ>>続きを読む
『眠る虫』と違って今作は原作付きの作品ということでまた手触りがだいぶ違うかな、と思いつつとても楽しみにしていたが、『眠る虫』に続き、金子監督はひとつひとつの言葉や気持ちに居場所をくれる。
どんな姿かた>>続きを読む
母へある夜の体験を告白する時、アンナの顔の半分が翳り、枕に伸びた彼女の横顔の影の唇から彼女の言葉が紡がれていくように見えた。彼女の肉体の半身・心の半身から産まれる言葉を聞いているようだった。
Fil>>続きを読む
とってもかわいい子ども映画だと聞いていたので、男の子が膝に乗せた亀を机の下で隠しつつ女の子にこっそりと撫でさせる場面の意味深な気まずさには正直動揺してしまいました。
前の席の女の子のグリーンのリボン>>続きを読む
恐らくジェレミーも何度も観たであろうサウンド・オブ・ミュージックの「Sixteen Going on Seventeen」が母親が彼氏と映画を観ている部屋と、ステとジェレミーが抱き合う寝室にオーバーラ>>続きを読む
ビーチボーイズの「神のみぞ知る」が流れる中、ヴィンセント・ギャロがパンを焼く店か…タンクトップでパン生地こねている姿を見るだけで汗の味が口に広がってきそうだ。
ネネットが街で偶然会ったパン屋の奥さん>>続きを読む
絵の具が溶けていくように水の波紋と混ざり合い戯れ、時に飛沫をはね返す身体の存在感。
細いココナツの幹を尺取り虫みたいに登っていく驚異的な光景の愛おしさ。
謎の女・セリーヌをジュリーが追いかけるところからはじまり、同僚からジュリーはもう職場には来ないだろう、とあちら側に行ってしまった人扱いされるその早さにテンションが上がる。
ミステリアスなセリーヌに取り>>続きを読む
恐ろしい思惑に魂を売らないための教訓としての恐怖映画。
校長夫人が失神した後、「カラはイヤですな、酒瓶もね、ガハハハ!」と医者とジョーク言い合ってる職員に紛れ、ガチで心配した表情で大人たちを見上げてる>>続きを読む
運転開始直後から眉間に皺を寄せ、脂汗をかきつつ運転をはじめるジョーに一気に同情を寄せてしまったし、極限状態とはいえマリオはジョーが息を引き取る間際での優しさを少しは足を轢いた直後の瞬間に分けてやってく>>続きを読む
マルガリータの微笑み、トビリシの人々のまなざし、ピロスマニが絵画として遺した彼らが、彼の芸術を目にした人々の前にまた新たなイメージとして息吹をふきかえす。そんな歓びが溢れ出す、讃美歌のような美しい映画>>続きを読む
現実と妄想がまるで互いに餌を与え合い、肥大化し続けるような混沌世界に放り出され、「何?」→「これはもしかして…」→「やっぱり何?」を繰り返しつつ、ラスト行き着く場所にはきちんと行き着いてしまったような>>続きを読む
「自分を尊重し、他者に優しくしよう。」と言葉にしてしまえば薄っぺらく感じてしまうほどシンプルなことをそれでもきちんと自分の一部にしていこうとしみじみ思える。
母親も他者である、ということをはっきりと言>>続きを読む
希望に辿りついてしまうことよりも、希望が存在する可能性のある場所に留まり続けていたい気持ちなら分かる。
やったらあかんぞ!!と言われていること懲りずにやりつつもなんやかんやセーフ判定を貰ってるの面白>>続きを読む
ヨーロッパ系の輸入古着屋で時々見つける「これはどう着るのが正解なんだ?」という服の、最高の着こなし手本が満載で楽しかった。
特にお姉ちゃんが着ているベロア的なポンチョ?は陽光の下と暗闇とで色の輝き方が>>続きを読む
鑑賞中しているうちに、最初は悍ましいと感じていた価値観に徐々に“慣れ”ていってしまう自分を自覚してしまう恐ろしい映画だった…。
子供たちの、他者から引き継がれた物語を自分たちのところで終わらせることへの対する躊躇のなさが面白い。
もし物語が自分に手渡されたと思うと、それはいつか終わることを理解していても自分の番ではない、と無意>>続きを読む
『アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ 2022』で過去作を初見・再見含めて観たことも併せての感想だけれど。
自分が生まれる前より遠く昔に過ぎ去った時間、そして自分が存在しなくなった未来を信じて感じとろう>>続きを読む