しょうたさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

しょうた

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おもいでの夏(1970年製作の映画)

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「人生のつかの間の出会い」
ラストのナレーションの中の言葉が、映画の宝石のような輝きを掬い上げていた。

人生は固有のものであり、自らの人生と切り離せない映画があるとしたら、15歳の時に観たこの映画は
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雨にぬれた舗道(1969年製作の映画)

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何よりも性をめぐる話だったと思う。
青年(少年)は性的に奔放で捕らわれない姉(恋人との性交渉の直後に弟を招く、弟を誘いもする)と共に暮らす中で身につけたセックス観を持つが、彼を招き入れるヒロインの態度
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ロング・グッドバイ(1973年製作の映画)

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冒頭の猫のエピソード、私立探偵の日常のディテールが愉しい。
ラスト、「そのため(利用するために)友だちはいる」というサイコパス的な人間観に対する(それだけではないが)マーロウの怒り。
ミステリーがあま
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白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

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予告編が魅力的だったので楽しみにしていた。だが、ジャズの世界を堪能するにはガチャガチャしたドラマが煩く、期待した作品ではなかった。バブル初期を背景に、狂騒の時代の萌芽を描いていたのだろうか。

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

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切ない。

(前半、少し眠ってしまったので、もう一度観たい。)

国葬の日(2023年製作の映画)

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土曜日の午前、映画館は満席で、人々の関心の高さが伺える。映画自体はテレビニュースの延長のようで強い関心は持てなかった。(ところどころ居眠りした。)だが、何十年後かに観られた時にはこの時代の社会の写し鏡>>続きを読む

ありふれたファシズム/野獣たちのバラード(1965年製作の映画)

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現代(当時)の幼児の映像が流れ、教育の大切さがナレーションされる。ソビエトのプロパガンダの側面が感じられる。
ナチスの映像はNHK映像の世紀などでも観てきたものが多い。目を瞠ったのは、敗戦が濃厚となっ
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バービー(2023年製作の映画)

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冒頭の2001年宇宙の旅の破天荒なパロディから度肝を抜かれた。
男性たちの一人のセリフ、自分たちに主体性?がないからダメなんだ、といった意味のセリフ(記憶が怪しいが)が印象に残る。
ぼくも子どもの頃に
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こんにちは、母さん(2023年製作の映画)

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スカイツリーを仰ぐ下町の風景、現代を舞台にしながら山田洋次の世界は変わらず優しい人々の葛藤と交歓を描く。
新聞のエッセイで、自分の知っている「逝きし世の面影」を描きたいと語っており、時代遅れ?は百も承
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ナイン・マンス(1976年製作の映画)

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工場の採用面接に訪れた女性を面接した上司が一目惚れし、恋愛話が始まる。人生には恋愛しかないかのような少女漫画のような展開。誰かと愛し合うことの切実な思い、その困難さがしみじみと描かれる。
タイトルはお
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アダプション/ある母と娘の記録(1975年製作の映画)

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70年代、フランスでヴァルダが「歌う女、歌わない女」が撮っていた頃、ハンガリーではマールタがこうした作品を撮っていた。モノクロ映像の温もりのある感触。女性たちの親密な関係性が味わい深く描かれる。
里子
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福田村事件(2023年製作の映画)

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【同調圧力と「否認しない」こと】

映画は前半、「白」を点景として進む。白布に包まれた骨箱、静子の白いパラソル、瑞々しい豆腐の白、朝鮮白磁の指輪…。(それは誰もがどこかに宿しているイノセントを表してい
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キエフ裁判(2022年製作の映画)

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ニュールンベルク裁判、東京裁判と並んでキエフ裁判があった。いずれも克明な映像記録が残されており、この中の一部の記録及び絞首刑の映像は「バービヤール」で使われたものと同一で、2日続けて観る。
ドイツ兵た
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破壊の自然史(2022年製作の映画)

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「バービヤール」を観て帰宅、新聞で翌日のこの映画初日を知って衝動的に席を取る。既にほぼ埋まっていつ、仕方なく最前列端の方にしたのが失敗。とても見づらく、スクリーンが目に入っているが映画を鑑賞するという>>続きを読む

バビ・ヤール(2021年製作の映画)

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冒頭の強烈な爆発音、黒煙を上げる建物の映像から、戦時の恐怖世界に否応なく連れていかれる。字幕も淡々と事実だけ示され、解説はない。驚くのは、これだけの克明な映像と音響の記録が膨大に残されていること。再現>>続きを読む

新生ロシア1991(2015年製作の映画)

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70年以上のソビエト国家に終止符を打つ歴史的な瞬間の記録。それは国旗が取り替えられるところに象徴的に現れていた。
ゴルバチョフの改革が社会の民主化を準備し、クーデターを未遂に終わらせることができたのだ
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

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さまざまな感想があり、黒澤明の「夢」や大林宣彦の晩年の作品を想起させるという感想があった。だが、ぼくがこの映画を観ながら想起していたのは、志賀直哉の短編小説「母の死と新しい母」だった。主人公が母の死を>>続きを読む

REVOLUTION+1(2022年製作の映画)

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上映後のトークで四方田犬彦氏が言っていたように、映画の主張は主人公の妹のセリフに集約されているだろう。「銃撃は民主主義の破壊だという者があるが、冗談じゃない。これまで散々、民主主義を破壊してきたのは誰>>続きを読む

略称・連続射殺魔(1975年製作の映画)

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上映後の質疑応答でどなたかが言われていたが、半世紀近く前の映像だが、鮮烈なカラー映像で、今そこの外の風景だと言われても頷けてしまうくらいの鮮やかさだった。
だが、淡々と風景を観ることに飽きて途中、朦朧
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1秒先の彼(2023年製作の映画)

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時が止まった世界をさまよう夢の中のようなシーンが圧巻だった。京都郊外の佇まいも味わえた。

波紋(2023年製作の映画)

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これほど、登場人物に感情移入できないままに物語が進む映画も珍しい。依子(筒井真理子)は「自分」を生きていない。夫から義父の介護を押しつけられ、そのお粥に貴重なペットボトルの水を惜しむくらいの裁量権しか>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

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3時間、これでもかという刺激的な映像をたたみかけて飽きさせない。これまでさまざまな映画を観てきたが、ここまで「世界が違う」と感じさせる映画は稀だ。圧倒された。
ここでの価値は、個人ではなく祖国や故郷で
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ナワリヌイ(2022年製作の映画)

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忘れ物はないか、パスポート、スマホ、キー。ロシア人は出掛ける前にひと休みする。そして気持ちを落ち着かせ出掛ける。
ナワリヌイが妻娘とともにロシアへの帰国する前の、この映画の最も好きなシーンだ。
ナワリ
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ファミリア(2023年製作の映画)

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ブラジル人たちの暮らす団地の空間を強調させて見せる。その広場での地域に開かれたFestaのシーンが一番好きだった。昔の下町の人情長屋のような暖かいものが流れている。
だが、この映画がこれでもかと描くの
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美女と野獣(1946年製作の映画)

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オリジナルはおとぎ話なのか、でも映画としては最も古いものではないか。
陰影の濃い画面作りはドラクロワの影響、と最近知った。
手袋という道具で、野獣の館とベルの実家を行き来するのは、メタバースのようだと
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オルフェ(1950年製作の映画)

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20歳の頃、日仏学院で英語字幕で観た。その時の神秘的な印象…死の国との往来…が、改めて観たらやや興ざめした感じを受けた。
でも、怪奇SF的な雰囲気は、後の日本の円谷プロの特撮シリーズに受け継がれている
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シェルタリング・スカイ(1990年製作の映画)

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『戦メリ』や『ラストエンペラー』の音楽は、ポピュラー音楽でありながらオリエンタルなテイストが巧みに織り込まれていた。では、アフリカ北部を舞台にしたこの映画で、坂本龍一は何を意識して作曲したのだろう。>>続きを読む

ケースがはばたく日(2023年製作の映画)

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ケースのあけすけな言動に最初はハラハラしながら観ていたが、あそこまで自分に正直だと少しうらやましくもなる。
自閉症のケースを温かく見守る両親、兄夫婦。映画全体に温かいものが流れており、会場からの笑い声
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テス(1979年製作の映画)

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公開時ほとんど眠っていて、ラストのストーンヘンジだけ覚えていた。
40年ぶりに再見して堪能した。コスチュームプレイでもあり、今観ても古びない作品。
作品世界の感触が、観た翌日にも脳裏に残り味わえた。
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

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学生の時、シベリア鉄道の旅でのコンパートメントを思い出した。
出会いと別れ。人生は旅。

「女性は賢い生きもの。自分の中に、ものを見て判断する基準を持っている」という意味のセリフが印象的。
途中下車で
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TAR/ター(2022年製作の映画)

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(以下、ネタバレあるかも)
ターが昔のVHSのビデオを引っ張り出して観る。ややぶれた映像だが、バーンスタインだろうか、言葉では表現できないものがあるのだと、音楽の唯一無二の価値を語る。
ターもまたその
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パリ、テキサス(1984年製作の映画)

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37年ぶりに再見。「アダマン号に乗って」に出てくる精神障害の当事者の男性が、「パリ、テキサスに出てくる兄弟は自分と弟をモデルにしている」という場面があった。あの映画に兄弟が出てきたっけ?というくらい内>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

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ぼくは「万引き家族」の感想に追記としてこう書いていた。
…観賞後一月が経つが、あれからひとつのシーンが何度も脳裏で繰り返されている。少年がスーパーの店員に捕まりそうになり、橋から道路に飛び降りるシーン
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ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(2023年製作の映画)

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(他のSNSに書いたもの)
昨日、(『ケアを紡いで』に関連して)「ケアとは人を傷つけないことである」という東畑開人さんの言葉を紹介しましたが、若い世代には人から傷つけられたり人を傷つけることに敏感な人
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ケアを紡いで(2022年製作の映画)

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(他のSNSに書いたもの)
この映画を観る前日、東畑開人さんのオンライン講座「心のケア入門」の第一回を視聴しました。饒舌な語りの中で東畑さんの論旨は明快でした。
「ケアとは人を傷つけないことである」
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せかいのおきく(2023年製作の映画)

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ああ、面白かった。だが、なぜだろう。この映画のことを思い出すとサイレント映画のように思い出される。
モノクロであること、字幕が多用されること、ヒロインが途中から声を失うことが大きな理由ではある。
だが
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