タケルさんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

タケル

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TENET テネット(2020年製作の映画)

3.8

 時間の逆行って斬新な考えだと思ったが、そもそもなぜ多くのタイムリープが点から点へと移動するものとして描かれてきたのだろう。時間は過去から未来を貫く"流れ"であるという解釈は太古から存在するはずなのに>>続きを読む

インセプション(2010年製作の映画)

3.8

 ド派手なアクションや夢の世界の演出にも心躍らされたが、何よりも"ネガティブなイメージよりポジティブなイメージをインセプションしよう"という方向性に話が進んだのが良かった。結果として、ターゲットである>>続きを読む

人情紙風船(1937年製作の映画)

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 不思議なことに、「山中貞雄」という名前をここ最近で何度か耳にすることがあった。最初はNHK「歴史秘話ヒストリア」の小津安二郎の特集回において。小津と山中は日中戦争で共に出征し、山中は現地で戦病死した>>続きを読む

彼女がその名を知らない鳥たち(2017年製作の映画)

3.7

 「共感度ゼロ」とは大胆なキャッチコピーだと思っていたが、たしかに共感できる要素が全くなかった。十和子はクレーマー気質でクズ男に惹かれやすい自堕落な女だし、陣治はとにかく汚い。だが、最も共感できなかっ>>続きを読む

The Witch/魔女(2018年製作の映画)

3.9

 とてつもなく厄介な脅威に見えた悪役たちが、ちょっとかわいそうな存在へと転落していく様が面白かった。"魔女"の強者の余裕が圧倒的すぎる。闘いを楽しんでいるようにも見えて、敵側に同情してしまうが故に変な>>続きを読む

男はつらいよ(1969年製作の映画)

3.6

 名前はよく知っていて、顔もなんとなく知っている寅さん。くまのプーさんのようなのんきで穏やかなおバカだと勝手に思い込んでいたが、思いのほか下品で暴力的な表情も持つオッサンだった。だが、そのような否定的>>続きを読む

さびしんぼう(1985年製作の映画)

4.2

 尾道で生活する少年の小さな恋の物語。具体的な場所における個人の物語を描いているはずが、過去から未来を貫く長大な時間の流れと、普遍的な「愛」の存在を感じさせられた。だからこそ、この作品のジャンルはSF>>続きを読む

海辺の映画館―キネマの玉手箱(2019年製作の映画)

4.5

 大林監督の作品には「一回性」の魔力が宿っている。今回、初めて監督の作品を映画館で鑑賞して、漠然とした印象が確信へと変わった。だが、何度上映しても同じものが流れる映画に「一回性」があるというのはおかし>>続きを読む

DESTINY 鎌倉ものがたり(2017年製作の映画)

3.6

 日常として存在する鎌倉の異界、温泉街のような黄泉の国。作り物であることを前面に出したデザインであり、舞台設定も深掘りされていなかったが、やけに魅力的な光景に映った。なんでもありのゆるい世界観を演出す>>続きを読む

君が君で君だ(2018年製作の映画)

4.0

 「見守る」って、全然「守る」ことにならないんだよな。だって見てるだけだもん。でも、一緒にいることがそんなに偉いことなのか。泣かせてばかり、寂しがらせてばかりでも、一緒にいるやつの方が、ただ見てるやつ>>続きを読む

極道兵器(2010年製作の映画)

3.6

 自称「日本国が認めた極道」の武器人間は、日本全土を人質に取ったところで止めることなどできない。全身サイボーグと化した悪役の方がよっぽど常識に囚われていて、人間らしい思考をしていたところが面白かった。

花筐/HANAGATAMI(2017年製作の映画)

4.1

 切って貼ってを繰り返した、作り物であることを隠そうとしない映像の連続。目の前で展開される世界が"紛い物"であることは十分理解できているはずなのに、それでもなお神秘を感じずにはいられない。だが、そもそ>>続きを読む

マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年製作の映画)

3.8

 見渡す限りの異世界!派手にも程がある演出!うおおお!アガってきた!!!と思いきや、プツっと意識を失った。そして、バカでかいエンジン音で我に返るという珍体験。おそらく、めちゃくちゃ疲れていた。序盤から>>続きを読む

武曲 MUKOKU(2017年製作の映画)

3.8

 言葉では容易に説明し難い荒ぶる力と力のぶつかり合い。側から見れば彼らの行動には何の合理性もないし、正気だとは思えない。だが、"生きていること"を思い知るためには欠かせない決闘であったことはたしかだ。>>続きを読む

国際市場で逢いましょう(2014年製作の映画)

4.2

 2時間で一人の男の人生を描き切った佳作。我々の日々の生活の下には、先人たちが必死に生き抜いた激動の時代の地層が眠っているという事実に改めて気づかされた。辛いことばかりの人生の中にも、いつまでも一緒に>>続きを読む

CUBE(1997年製作の映画)

3.6

 序盤では主人公らしく振る舞っていたクエンティンが、とんでもないクズ野郎だと判明していく過程が印象的だった。鑑賞者は序盤において、クエンティン側の立場からワースの素性を疑う。それが終盤では覆されて、む>>続きを読む

ナイトクローラー(2014年製作の映画)

3.6

 簡単に説明のつかない狂気の持ち主と凡庸な狂気の持ち主とでは、どちらがより悪質で恐ろしい存在だろうか。本作の主人公は明らかに後者だ。彼の言動はたしかに狂気的ではあるが、人々を沸かせる映像を撮りたい、自>>続きを読む

オフィシャル・シークレット(2018年製作の映画)

3.7

 主人公の言動にいくつか違和感を覚える点があったが、その気づきこそが主人公と自分との立ち位置の違いを照らし出しているように思えた。後々自身の行動を後悔することになる割には、機密情報のリークに至るまでの>>続きを読む

ニュー・シネマ・パラダイス(1989年製作の映画)

4.0

 トトとアルフレードの深い友情に心を打たれながらも、より心を奪われたのは映画鑑賞のシーンだ。当然のようにおしゃべりをして、声を出して泣いたり笑ったり、台詞を口ずさんだり、映画を"オカズ"にしてオナニー>>続きを読む

トランス・ワールド(2011年製作の映画)

3.6

 物語の概要はおろか、作品のジャンルさえ十分に把握しないまま鑑賞。作中に仕掛けられたいくつかの「罠」を楽しむためには、その選択は欠かせないものであった。"評価が高いから、よくわからないけどなんとなく観>>続きを読む

犬猿(2017年製作の映画)

3.5

 兄弟、姉妹の愛憎劇というメインテーマより、新井浩文の怖さの方が見どころではないかと感じてしまった。相手の発言を受けた後の絶妙な間と、湧き上がる怒りを隠し切れてない死んだような目がとにかく恐ろしい。あ>>続きを読む

ジョーカー(2019年製作の映画)

4.1

 アーサーはなるべくしてジョーカーになった。彼が底なしの闇に染まっていく過程に"納得"させられてしまうこと。それこそがこの作品が持つ恐ろしさだ。悪事を為す者には"普通の人"とは違う価値観や倫理観が備わ>>続きを読む

爆裂都市 BURST CITY(1982年製作の映画)

3.6

 断片的な映像で物語としての一貫性には欠けるが、細部にこだわる余裕がないくらい、とにかく勢いがすごい。ポスターにある『これは暴動の映画ではない。映画の暴動である。』という言葉が全てを物語っている。テー>>続きを読む

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.4

 パラサイトは一方通行ではあり得ない。半地下の家族が、坂上の家族の幸せをつまみ食いしただけならば話は単純だ。坂上の家族の幸せが、家事労働の外部委託という"寄生"によって成立していた事実にこそ、問題の構>>続きを読む

ミスミソウ(2017年製作の映画)

3.6

 ポスターには『最も切なくて、最も美しく残酷なトラウマ・サスペンス』と説明が添えられていた。正しくは、『けっこうバカで、それなりに美しく狂気的な日常系・バトルロイヤル』ではないかと感じた。主人公の家族>>続きを読む

イエスマン “YES”は人生のパスワード(2008年製作の映画)

3.9

 「よし!俺も明日からイエスマンになるぞ!」などと触発されることのない"No man"にとっても面白い気づきを得られる作品だった。本作は、「YesとNoの非対称性」をあぶり出す、極めて哲学的なテーマを>>続きを読む

チョコレートドーナツ(2012年製作の映画)

4.5

 タイトルとポスターから、心温まるハートフルコメディだと思い込んだまま鑑賞してしまった。まさかこれほどまでに怒りを覚え、心を引き裂かれるような気持ちになるとは。ただ、このような唐突な理不尽との直面は、>>続きを読む

天使のくれた時間(2000年製作の映画)

3.7

 プライベートを犠牲にして大きな社会的成功を収めるか、大切な人と幸せな時間を共有するために夢や目標を過去のものとするか。これぞ究極の2択のように思えてしまうけれど、プライベートも仕事も充実させることは>>続きを読む

アウターマン(2015年製作の映画)

3.8

 「日本バカ映画の巨匠」と呼ばれる河崎実監督の作品を初鑑賞。作品選びの順番を間違えたのだろうか。たしかにバカ映画ではあるのだが、不覚にも薄っすらと感動を覚えてしまった。弱くてやられ役の"侵略宇宙人"が>>続きを読む

殺人狂時代(1967年製作の映画)

4.6

え?この水虫オヤジが主人公?という違和感に始まり、まるで少年の空想がそのまま現れたかのような刺客たちとの闘いに熱狂し、溝呂木省吾の怪しい魅力に囚われ、美しくも哀しい"最終決戦"に心を打たれて‥‥。これ>>続きを読む

レベル16 服従の少女たち(2018年製作の映画)

3.7

 ヴィヴィアンが"先生"に口うるさく吹き込まれていた文句を文脈を変えて言い返すシーンが痛快だった。「忍耐は美徳ですよ」。美徳としての忍耐。それは、"先生"が言うように、口答えせず慎ましい女性として振る>>続きを読む

ガス人間第1号(1960年製作の映画)

3.8

 Amazonプライムの紹介文に『特撮の凄さとドラマ性の高さで評判の高い傑作』とあった。「凄さ」という言葉では何も説明できていないのではないか。公式がこのような表現を用いるのはいかがなことか‥‥などと>>続きを読む

地獄の黙示録(1979年製作の映画)

4.1

今の自分には評価しきれない側面を多分に含んだ大作だと感じたので、一言だけ‥‥。

「サーフィンくらい我慢しろよ!」

それを我慢しないし、我慢できないのがアメリカ帝国主義というものなのか。そんなことの
>>続きを読む

この世界の片隅に(2016年製作の映画)

4.0

 戦争とは当たり前の日常を破壊し尽くすもの。そう思っていた。この作品に触れて、そのような認識を一部改めることになった。たしかに、戦争は日常を破壊する。そこに間違いはない。私が想像しきれていなかったのは>>続きを読む

HOUSE ハウス(1977年製作の映画)

4.3

 映画ってこんなにも自由なものなのか。未来への希望を与えてくれる、40年以上前の古くて新しいカルトムービー。超常現象に襲われる少女たちを描いているわけだから、一応ホラー映画なのだろうが、過剰で時に意味>>続きを読む