練り込まれた脚本ではあるが、複雑な人間関係を消化しきれない。アクションもダラダラとしており落とし所が見当たらない。ジャッキーの目立った活躍は見られないが脇役は魅力的。
デボラ・ハリーの印象的な唇に誘われてブラウン管の中に侵入していく描写など、強烈なヴィジュアル・イメージによって最後まで緊張感を保ち続け、現実と幻覚の曖昧な境界線が全体に異様な雰囲気を与えている。リアル>>続きを読む
B級感・手作り感の溢れる独特な雰囲気が乱歩の世界観に奇妙に整合している。特に盲獣のキャラクターは恐ろしく猟奇的で、グロテスクな描写はチープだからこそ鬼気迫るリアリティがあったりする。豪華な俳優陣と学芸>>続きを読む
戦争映画でありながら戦闘シーンはなく、基地でふざけ合うだけの散漫なエピソードが続く。だが主人公らは外科医であり、前線で負傷した兵士達の血生臭い有様だけはしっかりと描かれる。その部分に最も諧謔性があり批>>続きを読む
全ての女性(そこには女の心を持った男も含まれる)に対する愛情があり、そして全ての母なるもの(あらゆるものを甘受する主人公が体現する母親像)に対する尊敬が表れているとは思うが、そのテーマがすごく表面的な>>続きを読む
極端に描写が少なく必要最低限のセリフは説明的ですらないが、登場人物のどうしようもない心情が画面に溢れかえる。尾野真千子の幼く繊細な表情が良い。
ロリータの幼稚さと妖艶さを兼ね備えた表情がこの映画の全てだ。少女愛の本質はわからないが、そこにセクシャルな要素と支配欲を見い出した瞬間、どんな男も主人公のように堕落してしまうような気がする。異常といえ>>続きを読む
染谷将太は確かに良いが、二階堂ふみの表情・演技のあざとさが園子温のあざとさに組み込まれてしまい、本質の欠落した重みのない物語に見えてくる。原作にはない東北震災の描写とラストの改変には大人達の身勝手な思>>続きを読む
キキは箒で飛ぶしか能のない魔女ではなく、実直で快活なキャラクターそのものが特別な個性であり、だからこそ彼女は人々から愛される。可愛いジジやお婆さんたちに毎度癒やされる。
これほど眠くなった映画は初めてというくらい生理的に合わない作品だった。少女の大きな瞳・廃墟を見下ろす丘の風景・焚火のシーンなど、脳裏に焼き付く鮮烈なイメージは確かにあるが、少女を通した幼稚な視線に全く>>続きを読む
簡潔でありながら濃密な脚本、緊張感が途切れない演出ともに優れているが、本筋の事件そのものは実はなんだっていい。ハンニバル・レクターという非常に洗練されたキャラクター造形があり、それをホプキンスが見事に>>続きを読む
決してストーリーも全体的な演出も役者陣も悪くないとは思うが、奇跡の歌声を表現する術がないからといって最後までボーカルを排除するというエクスキューズを許容しきれなかった。結果的に最もロックを体現したのは>>続きを読む
西部劇としての体裁の中で、単なる勧善懲悪なドラマではなく、単なる男のロマン的な冒険譚でもない、リアルな感傷が全体を漂う洗練されたバイオレンスがある。冒頭の蠍と蟻のシーンから引き込まれ、列車強盗の痛快さ>>続きを読む
物語構築は巧みなので一連の流れが収束していくラストに爽快感はあるが、よくよく考えてみると各エピソードがそこまでリンクしていない。そもそも ”音楽” そのものが世界を救ったわけではないというのが、このス>>続きを読む
黒澤明「用心棒」のプロット通りではあるが、西部劇の体裁を借りると全く別の物語にみえる。三船にはないイーストウッドのタフガイさがあり、ガンアクションの派手さもある。
西部劇の舞台に南北戦争の概念を深く絡めると男達の強さがブレるのは仕方ないとして、無頼漢・トゥコの存在がコメディ要素を加える結果となった。善玉・ブロンディとの対比が、よりイーストウッドを格好良くしている>>続きを読む
二人の賞金稼ぎと、彼らに標的とされる賞金首という分かりやすい構図にシンプルな格好良さがあって、哀愁漂うニヒルなやり取りにシビれる。イーストウッドも渋い演技だが、リー・ヴァン・クリーフの静かな佇まいがと>>続きを読む
渋い主題歌から始まり、棺桶を引き摺りながら現れるジャンゴの姿は格好良いが、実際はチンピラ風情漂う小悪党な印象が拭えない。娼婦とのロマンスも中途半端だし、あまり男らしさを感じないナヨナヨした西部劇。
一連の流れを複数の視点でどんどん上書きし、群像劇のような体裁で個々の心情を映し出していく。青春時代の誰もが抱える葛藤、恋人・友人関係における微妙な立ち回り方、将来への不安感ややるせなさ、そういったもの>>続きを読む
ゴテゴテと色んな要素を盛り込まずとも、美女と巧い役者と軽快なテンポと洒落た雰囲気があれば充分面白いものになるという良い例。とにかくストリープの緻密な演技が全体のストーリーを支えてくれるので、ハサウェイ>>続きを読む
人間と妖怪の感動的な4つのエピソードを最後のエピソードで集約する構成が良い。いちいち涙を誘うが、しっかりギャグ要素もあって楽しめる。
子供映画と侮って観ていたら、案外感動的なシーンに胸が熱くなる。友達妖怪が集まってくる場面にはゾクゾクしたし、散りばめられたギャグも素直に楽しむことができた。
若い頃に観た際はシンプルな恋愛映画として捉えたが、結婚して子供を持った今となってはどれだけ含意があろうと、肉体関係を持った時点で単なる不倫映画でしかない。彼女の息子達が納得してしまう意味もわからないし>>続きを読む
苦手な顔のダグラスが異様に格好良くキャラクターも立っているので、アープ家の抗争劇そのものにあまり重みを感じない。男の友情のようなものもそれとなく描かれてはいるが、二人の間に微妙な温度差を感じる。銃撃戦>>続きを読む
戦闘機の迫力ある描写がまずあって、挫折からの成功を軸に恋愛と友情をエッセンスとして盛り込むという、80年代映画特有のすごく真っ当な物語なのだが、若きトム・クルーズらの丁寧な演技と小粋な演出も含めて普遍>>続きを読む
映画や舞台芸術を皮肉的に扱いながら、非常にメタな視点はそれらへの深い愛情でもある。長回し風のカメラと激しいドラムのBGMは常に緊張感を保ち、キートンの巧みな演技はファンタジーをリアルなものにしている。
端的に言うならばミステリ仕立ての壮大な夫婦喧嘩といったところだが、失踪していた妻が戻ってきたあたりからこの物語の真の恐ろしさを知ることになる。「―それが結婚よ」という妻の台詞の破壊力は近年稀にみるもの>>続きを読む
端的に言えば「天井桟敷の人々」に「サイコ」の要素を取り入れたサスペンスだが、そこに宗教的テーマや精神世界的イメージ、母と子の呪縛や死に対するトラウマなどを盛り込んでいる。ホドロフスキー的モチーフをふん>>続きを読む
長尺なのは余計な描写が多いせいだが、ジェット機やロケットの迫力あるシーンのおかげでなんとか退屈せずに済んだ。サム・シェパードが主人公かと思いきや後半では宇宙飛行士の物語となり焦点が絞りきれない。ソ連へ>>続きを読む
クズ中のクズのファウストの悪行が散々描かれ、妻の失踪と父からのお仕置きを経て、何事もなかったかのような幸せなラストを迎えるという退屈なドラマ。だが、常に中立なモラルドの物語と捉えた時、鉄道少年との何気>>続きを読む
史実に独自の解釈を付け加えて緊張感のある演出を施しているが、キャラクターの動機付けや関係性を描ききれず、作戦そのものが簡素になり過ぎている。ナチス政権下のドイツの状況を前知識として持った上でこの映画に>>続きを読む
美しい映像とは色彩でもなく洒落た構図でもなく、あくまで表現力であるということを見せつけられた。水に浮かぶ波紋や海辺の砂に物語の細やかな描写を担わせ登場人物を際立たせていく溝口の方法論にこそ真の映画らし>>続きを読む
絶望的な状況を知恵と勇気で乗り越える物語だが、技術者たちの努力であったり、仲間たちの覚悟であったり、そういう側面もしっかり描いていて好感を持てた。ラストに向かって駆け足な展開ではあるが、ディスコ・ミュ>>続きを読む
これでもかというくらい全編が「スター・ウォーズ」らしさに満ち満ちており、ファンにはたまらないサービスが充実している。ライトセーバー同士の格闘や、縦横無尽に飛び回る戦闘機、おなじみのセリフと懐かしいスタ>>続きを読む
どんなに危機的な状況であれカニバリズム以上に狂気を感じるものはない。戦争そのものや飢えに苦しむ兵たちのリアルな描写は、あくまでラストに到達するためのエッセンスでしかないように思える。船越英二の無機質な>>続きを読む
荒唐無稽なストーリーとは思うが、手に汗握るアクションや二転三転する展開など、エンターテイメントとしては充分な面白さがある。ゲイリー・オールドマンの存在感とハリソン・フォードの安定感があれば、内容などど>>続きを読む