トノモトショウさんの映画レビュー・感想・評価 - 54ページ目

ナイアガラ(1953年製作の映画)

2.0

中盤あたりまではモンローの魅力のおかげでサスペンスとして面白く観られるが、モンローが退場した後はお粗末な展開。ナイアガラの壮大なロケーション、モンローと対比して人間的な表情を見せるジーン・ピータースも>>続きを読む

ビルマの竪琴(1985年製作の映画)

3.0

葛藤と苦悩と絶望を見事に演じきった中井貴一と、ラストの「仰げば尊し」に心打たれた。日本人が描く戦争映画にはどれも無力感が漂っており、人と人の絆を物語の柱に据える。それは敗戦のトラウマを昇華させようとし>>続きを読む

ナインハーフ(1985年製作の映画)

2.0

当時のミッキー・ローク以上にセクシーな俳優にお目に掛かることは少ない。散漫なエピソードばかりが連なり、エロティックなシーンもそれほどまでに官能的ではなく、二人の歪んだ愛の変遷が描き切れない浅薄な物語で>>続きを読む

晴れ、ときどき殺人(1984年製作の映画)

3.0

"角川三人娘" の中でも抜群に可愛い渡辺典子を楽しむ映画。ミステリーでありながら漫然と展開されるストーリー、井筒の悪ふざけとしか思えないギャグも、渡辺の存在感だけで気にならなくなる。松任谷正隆のキレの>>続きを読む

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)

3.0

ゴンドリーの映像センスは映画の文法からは逸脱しているが、それが面白く作用している部分もあれば、ハイセンス過ぎて理解しがたい部分もある。使い古されたテーマとアイデアをしっかりと練られた脚本・緻密な構築で>>続きを読む

暗くなるまで待って(1967年製作の映画)

3.0

主人公が盲目のサスペンス、しかもオードリー・ヘプバーンという配役がこの映画の全てである。秀逸なプロット・巧みな脚本・ラストの暗闇での緊迫したシーンにおける演出も素晴らしいと思うが、結局はヘプバーンの卓>>続きを読む

ロープ(1948年製作の映画)

3.0

ヒッチコックが徹底的に映画芸術を追究していたことがよくわかる佳作。1カット・1シーン、80分の実時間という挑戦的なアイデアを軸に、巧みにキャラクターを造形し、ミステリー・エンタテインメントの枠にしっか>>続きを読む

細雪 ささめゆき(1983年製作の映画)

3.0

とにかく女優陣が美しく画面に映え、完璧なキャスティングと言えるくらい各人が役柄にぴったりはまる演技を見せた。エセ大阪弁が気にならないくらい佐久間良子と岸恵子が良い雰囲気を醸し出し、石坂浩二・伊丹十三も>>続きを読む

Laundry ランドリー(2001年製作の映画)

2.0

この時代の邦画によく見られるじめっとした空気感が気持ち悪いが、窪塚洋介の天真爛漫なキャラクターがそれを中和してくれる。もっとミニマルな物語を想像したが、大半が不器用な女の独りよがりを追うばかりで物語に>>続きを読む

許されざる者(1959年製作の映画)

2.0

リリアン・ギッシュのピアノ、馬を乗り継いで敵を追い詰める場面など見所のあるシーンは多数あるが、インディアンに対する圧倒的な差別意識を軸とした物語が肌に合わなかった。結局肝心なところが解決しないラストも>>続きを読む

鉄道員(ぽっぽや)(1999年製作の映画)

3.0

高倉健でなければこの物語は成立しなかったと言えるくらい、朴訥で実直な男の姿をありのままの演技で画面に映し出した彼の功績は大きい。広末涼子とのシーンはともすると馬鹿馬鹿しくなるところだが、高倉健の振舞に>>続きを読む

彼女が消えた浜辺(2009年製作の映画)

4.0

他人のために良かれとついた嘘は次第に自分を守るための嘘に繋がっていく。サスペンス的な展開やイスラムの倫理観も大きな主題ではあるのだが、何気ない嘘の連鎖が単純である物語を複雑にしていくという展開には常に>>続きを読む

桜田門外ノ変(2010年製作の映画)

2.0

かなり早い段階でクライマックスが訪れ、蛇足のように回想とエピローグが延々と続く。殺陣シーンの迫力はあるが、ラストショットに至るまでセンスがない。大沢たかおの例のむず痒さを感じる演技のせいで主人公に感情>>続きを読む

赤ひげ(1965年製作の映画)

5.0

それぞれのエピソードが濃密で示唆に富んでいるため長尺を気にする必要が一切ない。特に少年と少女の最後の会話は映画史上に残る名演であり、胸を詰まされる見事な演出である。貧困と無知を野放しにする政治に対する>>続きを読む

キャリー(2013年製作の映画)

3.0

デ・パルマ版におけるシシー・スペイクほどのホラー感がクロエの表情からは読み取れず、どちらかというと母親の狂気的なキャラクターと、それを演じたジュリアン・ムーアの徹底した演技にこそ恐怖を感じた。映像のリ>>続きを読む

隠された記憶(2005年製作の映画)

3.0

ハネケ作品には常に緊張感と底知れぬ不安感がある。ひたすら静かに風景や事象だけが映し出され、淡々と時間が流れるシーンに何故ここまで心が揺さぶられるのか。ビデオの送り主が誰なのかというミステリー的な物語で>>続きを読む

ある子供(2005年製作の映画)

1.0

10代の頃に観ていたなら少なからず思うものがあったのかも知れないが、愛情も理性もなく無軌道で短絡的な主人公には嫌悪感しか抱かない。例えそこに深いテーマがあろうと、批判的な視点があろうと、終盤で自己犠牲>>続きを読む

ゴールデンスランバー(2009年製作の映画)

3.0

プロットが巧妙なのは認めるが、センスの乏しい小細工のせいで洒落たものにならない伊坂作品。それがそのまま物語における重要なアイテムになるので、映像化してもそのダサさは隠しきれない。全体的に緊張感は保たれ>>続きを読む

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)

3.0

静謐で地味な物語だが深奥に濃密なテーマが練り込まれており、心に残る佳作となっている。晩餐会の場面では料理シーンと食事シーンが繰り返されるだけ、宗教的な制約により会話も少ないはずなのに、各キャラクターの>>続きを読む

チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密(2015年製作の映画)

2.0

魅力的なキャラクターが多いわりにストーリーは非常に薄っぺらい。主人公の胡散臭さはジョニーの完璧なキャラクター造形のお陰でどうにか成立しているが、本来ならば脚本や演出で肉付けしなければならないはず。全体>>続きを読む

メランコリア(2011年製作の映画)

3.0

最初と最後の10分で映画としては成立しているのかも知れないが、姉妹を対比することで物語としての意味を付加させているように感じた。幸せな披露宴(日常におけるハレ)をぶち壊す妹が異常なのか、惑星の衝突(非>>続きを読む

炎のランナー(1981年製作の映画)

3.0

2人の主人公のエピソードが散漫になっており、物語のどこに重点を置いて観るべきなのかわからなかった。エイブラハムズとコーチの交流・リデルと妹の確執など、もっと濃密に描けばもっと感動的なものになっていたは>>続きを読む

暴力脱獄(1967年製作の映画)

2.0

若い頃に観ていれば反体制を貫く主人公に何かしらの感銘を受けたのかも知れないが、下らない犯罪で刑務所に送られ、馬鹿げた反抗と脱獄を繰り返したところで何も生まれないという、当たり前のことを描いているだけに>>続きを読む

スパルタカス(1960年製作の映画)

3.0

膨大な数のエキストラを使った戦闘シーンの迫力、古代ローマを再現した壮大な美術・衣装が素晴らしい。スペクタクル史劇たる重厚な物語でありながら、個性的な各キャラクターの動向も興味深い。逆にスパルタカス自体>>続きを読む

郵便配達は二度ベルを鳴らす(1981年製作の映画)

2.0

散漫なエピソードが多く展開そのものに緊張感がないし、主人公達の描写が曖昧なのでキャラクターが際立たない。とはいえジェシカ・ラングの美しさとセクシーさがたまらなく、彼女の官能的な表情を楽しむだけで充分見>>続きを読む

クレージーモンキー/笑拳(1978年製作の映画)

4.0

ジャッキー初監督作ということもあり気合の入り方が尋常ではない。コミカルな功夫というジャッキー独自のスタイルが惜しげもなく発揮されている。師父との箸による攻防や壺を使った修行など、テクニカルでありながら>>続きを読む

コン・エアー(1997年製作の映画)

4.0

アクション娯楽作品の中でも群を抜いて緊張感の途絶えない佳作。タフなニコラス・ケイジ、理知的なジョン・キューザック、サイコな悪人がハマるマルコヴィッチも良いし、ブシェミの異様なまでの存在感に注目したい。>>続きを読む

サンダーアーム/龍兄虎弟(1986年製作の映画)

2.0

ジャッキーらしいアクション・シーンに至るまでが冗長で、浅はかなストーリーに嫌気がさしてくる。エンドロールで映されるジャッキーの姿は痛々しいが、そこで改めて映画を振り返るとリアルな演出への拘り、生と死の>>続きを読む

パッチギ!(2004年製作の映画)

2.0

おそらく日朝の関係性にはもっと根深く幅広いものがあるはずだが、喧嘩と恋愛を軸に上辺だけを掬い取ったかのような物語。キャラクターの背景描写も乏しく、なぜこの場面でこの人物がこういう行動を取るのかという核>>続きを読む

サクリファイス(1986年製作の映画)

3.0

終盤まで物語の焦点が見えず、難解なセリフと長回しのカメラがひたすら退屈。いくつかのキーワードを元にラストの映像に対峙した時、ようやくテーマの一端が垣間見られる(ような気になれる)。タルコフスキーらしい>>続きを読む

フル・モンティ(1997年製作の映画)

4.0

失業した男たちが一攫千金を狙ってストリップをするというミニマルな物語だが、愛すべきキャラクターを創造したおかげで面白い作品になっている。どこかハートフルな印象を持つのは、ダメ親父を見放さず時には背中を>>続きを読む

マイ・ルーム(1996年製作の映画)

3.0

繊細で危うい表情のディカプリオを間に挟んで、ストリープとキートンの洗練された演技が心地良い。一つ一つの設定は重苦しいが物語そのものは淡々と進むため、人間ドラマとしては浅薄な印象がある。叔母や弟などの余>>続きを読む

父の秘密(2012年製作の映画)

3.0

ひたすら淡々と固定カメラで撮られる映像には常に緊張感があり、それが最後の父の行動に帰結する。それまでの演出は全てラスト数分の、父が一人でボートを運転するシーンのためだけにあったと言い換えても良いだろう>>続きを読む

HANA-BI(1997年製作の映画)

4.0

初期北野映画の到達点とも言える良作。突発的な暴力とコメディがあり、美しい景色とセンチメンタルな旅がある。物語自体に特異なものはないのかも知れないが、自ら描いた絵画のモチーフを巧みに使いながら、花火のよ>>続きを読む

浪人街 RONINGAI(1990年製作の映画)

3.0

奔放な原田芳雄の殺陣、色気と美しさを兼ね備えた樋口可南子の表情、石橋蓮司の居合、勝新の愛すべきキャラクターなど見所は多いが、物語はダラダラとしており的を射ない。とはいえここまで豪華なキャストだと常に画>>続きを読む

渇き。(2013年製作の映画)

2.0

狂気に満ちたキャラクターの造形、胸糞悪い展開そのものは良く出来ていると思うが、これまでの中島のキャリアを顧みると極端に醜悪な作品に思える。小松菜奈の妖艶さにはドキドキさせられたが、父娘の関係性にはどう>>続きを読む