トリコさんの映画レビュー・感想・評価

トリコ

トリコ

映画(75)
ドラマ(0)
アニメ(0)

鬼火(1963年製作の映画)

3.5

人生に絶望し、自殺する前にかつての仲間達を訪ね、過去を確かめたい男。
明朗だったはずの男がヨレヨレになって訪ねてきて、面食らう仲間達。
好意的な仲間もいるし、距離を置く者も、その場を繕う者も、色々いる
>>続きを読む

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

3.0

歌が上手いのって羨ましい。
彼女が歌う度に鳥肌が立つ。

聾唖家族という傍から見れば異質な存在の異質過ぎる生活と価値観。
当たり前だと受け入れていても、笑われ、縛られる度に、閉塞感が満ちていく。

>>続きを読む

スラムドッグ$ミリオネア(2008年製作の映画)

4.5

ミリオネアのクイズをスラム出身の若者がなぜ答えられたか?を幼少期からの残酷非道のエピソードを元に解き明かす展開に、アラ、いいですねぇ。と思って観ていたら、どんどん面白くなって、のめり込んで、ラストでは>>続きを読む

映画に愛をこめて アメリカの夜(1973年製作の映画)

4.5

映画作りを「期待が消え、目的地に着くだけになる。」という、苦悩と悲哀に満ちたトリュフォーの言葉。
フェリーニの「人の心が通い合う小さな映画を作ろうと思っていたら、いつの間にか巨大ロケットのセットを製作
>>続きを読む

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)

5.0

打ち込めるものを見つけて、
限界を知って、
それでも捨てきれず、
バカにされたり。

打ち込むものが無くて、
有っても見えないふりをして、
同類でつるんで安心したり。

自分の価値を他人から見える自分
>>続きを読む

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)

5.0

兵士は人を殺す道具か?

米海軍の人を壊して兵士にするプログラム。
ベトナムでの壊れた兵士による享楽的な殺人行為。

大義を失った戦争における人間の異常さを描き、繰り返し問い続ける。

そして更に強烈
>>続きを読む

TITANE/チタン(2021年製作の映画)

4.0

恐怖映画全般が苦手とは言え、これまで怖さにちびって映画を観るのを止めた事はないけれど。
もうギリギリ。
観終えて、脱力した脳味噌とカラカラの喉と。
一切の緩みのない緊張の強制に廃人になりそう。

ゲテ
>>続きを読む

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)

3.0

塩辛い映画に疲れ、甘い映画を。と思ったら、大人達の理不尽極まりない子供への抑えつけに、ず~っとストレスを感じたまま。
逆らう者には10倍返しっていう大人達に、口で言えず、目で訴えるも諦める子供達が不憫
>>続きを読む

黒猫・白猫(1998年製作の映画)

4.0

ロマの人々の滅茶苦茶な日常をバルカン音楽と喜劇で描く。

若い頃に観て凄い泣いたけど、改めて観返している途中は、なんで泣いたんだっけ?って思いながら、どちらかと言うとモヤモヤしながら観ていて、それがも
>>続きを読む

恐怖の報酬 オリジナル完全版(1977年製作の映画)

4.0

世界中から悪い奴らが南米の国に流れ着いて、金に目が眩んで結託するけど、所詮悪い奴らだし。。。と、そんな話。

それにしても、並の悪さでは虫けら扱いされるこの国の地獄加減の描き方が凄い。
そして、理解で
>>続きを読む

こわれゆく女(1974年製作の映画)

4.5

精神に異常を来たした妻と、
妻を思うが故に追い詰めてしまう亭主。
夫婦に挟まれる子供達。

大切な人の精神が壊れた時にそれでも愛することができるか?という問掛け。
逃げたい。
捨てたい。
壊したい。
>>続きを読む

タクシードライバー(1976年製作の映画)

5.0

戦争に行った人間に仕事がなく、それを利用する政治家や取り巻きが真っ当とされる社会。
闇に落ちれば、銃や差別、麻薬、そして児童買春が蔓延するスラム。

壊すべき物は?
この時代の若者にとって、誰もが何を
>>続きを読む

バッファロー’66(1998年製作の映画)

4.5

V.ギャロは男前すぎるし、C.リッチは超下品な言い方をすれば涎が出る。
それだけで最高なのに、ギャロのよく舌の回る難癖が面白すぎる。
粗暴、馬鹿、嘘つき、けれど純。
そして歪な育ちに胸が痛む。

だか
>>続きを読む

晩春(1949年製作の映画)

4.0

どこを切ってものどかで穏やか、ニコニコと笑顔で、たまにイタズラみたいな悪口。
けれど、頑固さがよく似た父娘だからこそ存在する捻れ。
二人の間(ま)が匂わせる超えられない常識と諦めが憎い。

戦後の若い
>>続きを読む

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)

4.0

よくもここまで胸糞悪いものを。と思いながら目が離せない。

いやぁ、気持ち悪い。
どっと疲れた。
これを2週間観続けたら、暴力を感じるだけで吐き気がしそう。

また10年くらいは観る気はないけれど、よ
>>続きを読む

八日目の蝉(2011年製作の映画)

4.0

摺り込まれた憎しみ。
否定された記憶。
歪められた愛情。

子供(だけではないけれど)の心から正しい愛情を奪う事は、多分、容易いのだろう。
それでも、いつか本当の自分を探した時に、愛情を受けた記憶が心
>>続きを読む

浮き雲(1996年製作の映画)

4.5

省略された時間と台詞と表情。
その間に閉じ込められた、夫婦がお互いを思いやる気持ちが幸せ。
過去を懐かしむ気持ち。
言えない本音。
乗り越えてきた苦楽。
そして相手の悲しみは自分の悲しみ。

こんな二
>>続きを読む

オン・ザ・ミルキー・ロード(2016年製作の映画)

4.0

ここまで憎しみが込められた映画は久しぶり。
戦争の中の日常、寓話を謳い音楽と笑いでコミカルに。で、この人の映画が終わるはずがない。

人はどこまでも愚かで残虐。
そして、深い心の傷は一生を掛けても癒え
>>続きを読む

ブッチャー・ボーイ(1997年製作の映画)

3.5

アル中の父、精神障害のある母、貧しさで子供の価値観が崩れていく様を描写し続ける。
グロさで体力も削られるが、人って簡単に壊れてしまうんだな。と、それが悲しくて観てしまう。

アイルランドの映画だけれど
>>続きを読む

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

3.5

傲慢と我儘がぶつかる男女のマウントの取り合いと、言って解らないなら苦しんで学べ!という狂気。
一瞬の緩みすらない、しつこい程の感情の描写に緊張を強いられる。
こいつら絶対一緒は無理。と思いながらも、ラ
>>続きを読む

プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

3.0

過去の恨みを、
復讐して清算するか?
忘れて未来へと進むか?

謎、復讐、恋愛、サイコと話がぐるぐる揺れる程に、女性の不安定な精神の糸が切れそうな怖さ。
観る側の心の闇を穿り、女性の心情に同一化させる
>>続きを読む

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)

4.0

一人の男が演じる破綻なく綺麗に壊れた11の物語。

謎の答えに近付くと前提を外され、何度も思考の渦に放り込まれる快感。
死や時間、生物の概念がずれた物語は、自由に理解と不可解の間を行き来するまやかしの
>>続きを読む

洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)

3.5

脛に疵持つ男女が赤線の目の前で繰り広げる人間ドラマ。

色恋よりも情が勝った男女の話は、爽やかではないけれど心の声が漏れ出てくるような素直さで、嫌よ嫌よ。も、勝手にしろ。も、さようなら。も、裏を返せば
>>続きを読む

夏の嵐(1954年製作の映画)

3.5

昨日のW・アンダーソンの美術拘りど変態に触発され、元祖変態を観る。
流石に、どこを切っても絵になる変態っぷり。

それにしても、つまんないメロドラマだな。と思っていたら、映画史上最凶と言っていいくらい
>>続きを読む

グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

5.0

目の保養、眼福を飛び越えて脳味噌が興奮状態の五感を越えた美しさ。
ブラックな笑いも上品に感じるのは、この映画の魔法的な世界観としか言えないけれど、いや、でも普通に面白い。

これは妻の誕生日に観せよう
>>続きを読む

幕末太陽傳(1957年製作の映画)

4.5

女郎屋の乱痴気騒ぎそのままに、軽妙な台詞回しとカメラワークで痛快に酔う。
機転と軽さが身上の男は、人を信じるなと言いつつ、人情厚く人をたらし込む。
しかし時日が過ぎるにつれ、死の招きが男の軽さを削ぐ。
>>続きを読む

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ(2001年製作の映画)

3.5

出だしから「壊してみろ」と挑発していたけれど、曝け出したにしては虚勢一杯で、感情の歪みそのままに醜く見えた。

苛立ちや焦り、何より幸せになりたいという願望を派手な衣装で武装して、自分を解放したかのよ
>>続きを読む

県警対組織暴力(1975年製作の映画)

4.5

ヤクザ物は掴みが凄い。
オープニングからがっちり画面に齧り付き。

刑事とヤクザがズブズブの癒着で暴力の均衡を保つ世界。
しかし、それぞれの立場で追い詰められた二人の暴発。
途中からギラギラとしか形容
>>続きを読む

情事(1960年製作の映画)

3.5

モニカ・ヴィッティの奇跡感のある美しさに目を奪われつつ。
超軽い濡れ場とは言え、カメラの寄りは映画史上最も近い!

話はなんてことない私的な情愛。
運命の出会いと思っていたのに愛し続ける自信が唐突に失
>>続きを読む

白痴(1951年製作の映画)

3.0

ドスの効いたヤンデレ 原節子様
メルヘン宇宙人 森雅之様
かっこかわいい半グレ 三船敏郎様
その他、脇も凄いが全員、ポスターの通りキャラが突き抜けている。

善悪を直情的にぶつける熱に浮かされ、画の力
>>続きを読む

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)

5.0

人生という長過ぎる時間を満たすものが、成功や野心、財産ではなく、大切な誰かと共有できる日常の連続だと気付くには、多くの絶望と挫折からの帰還を経る必要があるのだろう。

観る側の人生の暗さに対して、相応
>>続きを読む

すばらしき世界(2021年製作の映画)

4.0

生まれついた環境や能力で愚かにしか生きられない人間は罪なのか?
愚かな人間を害悪としてしか扱えない社会が罪なのか?

全体を通して流れているヤクザ者の諦観。
まるで北野映画のよう。
素晴らしい。

>>続きを読む

ヴィデオドローム(1982年製作の映画)

3.5

現実の隣にある人の闇が映像化された部屋。
その存在を追求する内に彼の中に目覚めていく闇。
彼の闇が投影された部屋に映る物は何?
と、こっそり他人の闇を覗き見るような恐怖を感じる心理ホラーかと思いきや。
>>続きを読む

欲望の翼(1990年製作の映画)

4.5

届かない思いばかり。
届かないと判っていても、諦めずに思い続けられるのは若さなのか。
惨めで、苦しくて、強い言葉で感情をぶつけあう。
そして縋り続ける。
それは残酷だ。

ヨディがたった一つだけ心から
>>続きを読む

パプリカ(2006年製作の映画)

3.5

アニメはあまり観ないけれど、映画の世界で鬼才と言われるリンチやキューブリック等、「うわぁ、とんでもない物に触れてしまった。」と思う人達。
この映画も、それに触れたんだな。と思った。

原作は筒井康隆ら
>>続きを読む

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)

3.5

I・ジャコブ、街並み、調度、ファッション、独特の光彩。
全てが調和した美しさ。

欲や攻撃性や変態性と、常識や好奇心や痛みや官能が混濁した符号化した暗示的な世界。

緊張を強いる音の世界も。

しかし
>>続きを読む

>|