トリコ

映画に愛をこめて アメリカの夜のトリコのレビュー・感想・評価

4.5
映画作りを「期待が消え、目的地に着くだけになる。」という、苦悩と悲哀に満ちたトリュフォーの言葉。
フェリーニの「人の心が通い合う小さな映画を作ろうと思っていたら、いつの間にか巨大ロケットのセットを製作していた。」と同じ境地かな。

映画監督は芸術家のようで、実態は目の前のトラブルを悉く薙ぎ払い、作品をゴールに辿り着かせるだけの事務能力勝負のメンタルアスリート。
これってSE時代のリーダー精神と同じで、超僭越ながら物凄い共感。

一方で、ワンマンかと思いきや、信頼したスタッフに仕事を委ね、放任しつつ、全てに目を配る姿。
そして、スタッフとのやり取りから得たインスピレーションを映画の中に奇跡として残していく姿。
もう、本当に映画作りの苦労と喜びを知りつつ、耐え忍びながらも作りたい物をギリギリで壊さずに成し遂げていく姿がかっこいい。
そんなトリュフォーが言う「君や私のような者には仕事しか幸せはない」
わかりみが深い。

トリュフォーの映画を観ると、自分も歪んでるけど、皆どっかおかしいんだし、そんなおかしさが人を惹きつけ合うんでしょ?っていう、そんな気持ちになって。
もうたまらなく好き。

だから悩ましい顔の人間達がこの上なく愛おしい。
そして、心地良すぎる音楽も、
苦悩の末に辿り着くラストの達成感も、
何も彼にもが大好きな映画。
トリコ

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