トリコ

桐島、部活やめるってよのトリコのレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
5.0
打ち込めるものを見つけて、
限界を知って、
それでも捨てきれず、
バカにされたり。

打ち込むものが無くて、
有っても見えないふりをして、
同類でつるんで安心したり。

自分の価値を他人から見える自分で値付けして。

やっぱりこの映画は痛い。

青春物、特に自分探しの話は大好き。
けれど、こんな大量の思春期の痛みを出しておきながらも、どれもこれもが身に覚えがあるもんだから大火傷。

恋愛があり、進路があり、逆らえない奴や、よく判らんオタク共や、前に喧嘩した奴や、単に嫌いな奴や、人間腐ってる奴や、真面目過ぎて絡みにくい奴や。

そんなカオスみたいな場所でやりたい事を見付けて、それを周りに説得するって、ほんと高校生って残酷な年代だよな。って思う。

それでも、ラストの涙を見ると、この子はこのグルグル期を抜けて前に進むんだな。という腑に落ちる感が凄くて。
こうやって、自分で自分を受け入れて大人になるんだよな。

それにしても、群像劇スタイルでここまで成功している映画を邦画でも作れるっていうのは、なんだか感慨深い。
主要なキャラだけではなく、とにかく出てくる子供達の全員に個性の様な物を感じるし、複雑すぎる人間性と関連をサラサラっと描いているのに、それぞれに対して親しみや嫌悪を感じてしまうっていうのは、映画として大成功だし、群像劇としても大大成功なんだと思う。
きっと、個々が個性として吐き出す言葉が、観ている側の懐かしさや共感、時には恥ずかしさを呼び起こして勝手に理解させてしまうだけの力を持っているんだと思う。
だから意外なサブキャラにやたらと感情移入してしまう人もいるんじゃないだろうか??

この辺りは原作の力と同時に、脚本の力も大きい。
そして、役者陣の熱量の高さも大きい。
そういうのも引っ括めた全体として、奇跡感を感じる程、良く仕上がっている映画だと思う。
トリコ

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