トリコ

こわれゆく女のトリコのレビュー・感想・評価

こわれゆく女(1974年製作の映画)
4.5
精神に異常を来たした妻と、
妻を思うが故に追い詰めてしまう亭主。
夫婦に挟まれる子供達。

大切な人の精神が壊れた時にそれでも愛することができるか?という問掛け。
逃げたい。
捨てたい。
壊したい。
それでも、逃げなかった人々への救いの映画かと。

妻の異常性の高まりは怖いが、それ以上に、心の行き場所を失くした亭主が攻撃性を増し、妻や子供、周りの人間達を自分の管理下に置こうとする姿が怖い。

それを心の弱さや、教養や社会性がない故に、と突き放した描き方はするが、そんな映画ではないと思う。
むしろ、愛する人を失わない為にボロボロになりながらも寄り添い続けることは、どれだけ惨めで狂っていても尊いという賛美なんだと思う。

ヒリヒリとした緊張と恐怖。
その感覚を忘れる事はない映画。

同じテーマの『死の棘』も素晴らしかったけれど、『欲望という名の電車』が無性に観たくなった。
トリコ

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