うえびんさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

うえびん

うえびん

映画(368)
ドラマ(0)
アニメ(0)

ダラス・バイヤーズクラブ(2013年製作の映画)

4.0

自分の身は自分で護る

2013年 アメリカ作品

想像していたより重いテーマの社会派の作品で見応えがありました。

1980年代後半にHIV陽性患者として余命宣告を受けたロン・ウッドルーフの半生を元
>>続きを読む

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

3.9

支配と従属

2021年 アメリカ/イギリス作品

重厚で見応えのある作品だった。1つの事件を3人の視点から描き出す3部構成は、黒澤明監督の『羅生門』が踏襲されている。

舞台は14世紀のフランス、英
>>続きを読む

うなぎ(1997年製作の映画)

3.8

水に流す

1997年 今村昌平監督作品

不倫した妻を殺し、人間不信になってしまった山下(役所広司)。服役後、小さな床屋を営む彼は、ペットとして飼っているウナギにだけ心を開く。そこへ舞い込んだ桂子(
>>続きを読む

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.4

私たちは何に隷属しているのか

2022年 スウェーデン作品

北欧の映画独特の間と皮肉がとても面白かった。前情報を何も知らずに観ていたら、どこかで見たことがある雰囲気だと感じて監督の作品を調べると『
>>続きを読む

君だけが知らない(2021年製作の映画)

3.5

殺し合い、救い合う

2021年 韓国作品

全般、静かなトーン。シリアスな内容の割に心地いい。現在から未来、そして過去が少しずつ蘇ってくるという展開。最初は強引に感じられたものの、最後に全ての謎が解
>>続きを読む

インフル病みのペトロフ家(2021年製作の映画)

3.5

東スラブ人の還る場所

2021年 ロシア作品

2004年ロシア
1974年ソビエト

インフルエンザの流行
現実と妄想

主人公ペトロフ
飛び乗ったバスに誘われ
めくるめく世界へ

「統治を中心に
>>続きを読む

スポットライト 世紀のスクープ(2015年製作の映画)

4.1

被害者にも加害者にもならないために

2015年 アメリカ作品

2002年1月に、アメリカ東部の新聞「ボストン・グローブ」の一面に全米を震撼させる記事が掲載される。地元ボストンの数十人もの神父が児童
>>続きを読む

オリーブの林をぬけて(1994年製作の映画)

3.7

繰り返す

1994年 イラン作品

『友だちのうちはどこ?』
『そして人生はつづく』
アッバス・キアロスタミ監督
ジグザグ道三部作の三作目

前二作に通じる
飾り気もない映像
繰り返されるカット
>>続きを読む

ラッシュ/プライドと友情(2013年製作の映画)

4.0

コックピットの中の孤独と恐怖

2013年 アメリカ作品

F1マシンのコックピットは「走る棺桶」とも言われるそう。ほぼ地面に対して水平、最低地上高6cmのすれすれのドライビングポジションで、時速30
>>続きを読む

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>(1987年製作の映画)

4.3

愁いを奏でる

1987年 西ドイツ作品

前に観たのは学生時代だっただろうか。テーマ曲の「コーリング・ユー」だけは鮮明に覚えていた。物語は全く覚えていなかった。今回は物語も心に響いた。

異国の僻地
>>続きを読む

二十四の瞳(1954年製作の映画)

3.9

学びを起動させるもの

1954年 木下恵介監督作品

『昭和のエートス』(内田樹著)

▶『二十四の瞳』は高峰秀子演じる小豆島の分教場の大石先生と子どもたちの戦前戦中の心の交流を描いた佳作である。私
>>続きを読む

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)

4.2

噛み合う歯車
嚙み合わない歯車

2013年 イタリア作品
英題:The best offer

『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』のジョゼッペ・トルナトーレ監督・脚本作品。全体のバ
>>続きを読む

マイ・バッハ 不屈のピアニスト(2017年製作の映画)

3.7

稀代のピアニスト
自らの人生を弾き語る

2017年 ブラジル作品

ジョアン・カルロス・マルティンス(1940-)
「傷だらけの名演奏家」と呼ばれたピアニスト。成功と挫折、再起と苦悩、波乱万丈の人生
>>続きを読む

土を喰らう十二ヵ月(2022年製作の映画)

3.9

タオの人

2022年 中江裕司監督作品

『タオー老子』(加島祥造著)

▶飯だけはたっぷり喰う

世間が
頭のいいやつを褒めるもんたから
ひとはみんな
利口になろうとあくせくする。
金や宝石なんか
>>続きを読む

キャロル(2015年製作の映画)

3.7

年年歳歳花相似たり
歳歳年年人同じからず

2015年 アメリカ作品

1950年代のニューヨーク
セットも衣装も小道具も
一場面一場面
映像が美しい

ストーリーも音楽も
ゆったりして心地いい

>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

2.2

なんじゃこりゃ?

2022年 アメリカ作品

監督のやりたい放題。現実には起こり得ない世界の映像化は好きなんだけれど、それにしても…。

時間と空間の超え方が忙しくて目が回る。カンフー・アクションや
>>続きを読む

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)

3.3

無分別の世界

2013年 アメリカ作品

妻と別居し、離婚調停中のセオドア(ホアキン・フェニックス)は、自分を責めて絶望の中にいた。そんな彼が、人工知能のサマンサ(声のみ:スカーレット・ヨハンソン)
>>続きを読む

ロストケア(2023年製作の映画)

3.7

介護と悔悟

2023年 前田哲監督作品

殺人犯のシバ(松山ケンイチ)と検事のオオトモ(長澤まさみ)の事件を巡る攻防戦は見応えがあった。ずんのやすの演技、初めて見たけど気のいい人オーラがほとばしって
>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

3.4

昭和歌謡
のようなもの?

2022年 韓国作品

ストーリー展開も、現在と過去や夢が入り交じる映像も、カメラワークも、BGMの選曲も音のトーンも、演技もセリフも。

全てが、自分の感覚とズレて感じら
>>続きを読む

金の糸(2019年製作の映画)

3.8

過去→現在→未来
未来→現在→過去
過去の超え方

2019年 ジョージア/フランス作品

かつて「グルジア」と呼ばれた国
ジョージア

「グルジア」はロシア語
「ジョージア」は英語

帝政ロシアから
>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.5

魂をめぐる冒険

2023年 宮﨑駿監督作品

東京大空襲
猛火で最愛の母を喪い
東京から焼き出された
少年・眞人(まひと)

疎開先
父の経営する軍需工場
新しい母・ナツコ

多感な眞人
この世の新
>>続きを読む

プリズナーズ(2013年製作の映画)

4.0

正義のための暴力の末

2013年 アメリカ作品

『灼熱の魂』『ボーダーライン』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品は、冒頭からグッと作品世界に惹き込まれ、ずっとひりひりとした緊迫感が続き、はらはらする
>>続きを読む

プアン/友だちと呼ばせて(2021年製作の映画)

4.1

旅は道連れ 世は情け

2021年 タイ作品

友情と恋愛、愛情のもつれやあれこれ。ウードとボスの二人が、旧いクラシックカーのカーステレオでカセットテープを聴きながら、タイの各地を巡る旅。

異国情緒
>>続きを読む

戦争と女の顔(2019年製作の映画)

3.9

この世界から戦争を無くすこと

2019年 ロシア作品

1945年レニングラード
(現サンクトペテルブルク)

第二次世界大戦の独ソ戦の中心地
市民の死者は100万人以上
主な死因は餓死と言われてい
>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

4.0

“本当の自分”とは何か

2022年 石川慶監督作品

原作の著者・平野啓一郎さんは「分人主義」という概念を提唱しています。

「分人主義」公式サイトより

▶「分人dividual」とは、「個人in
>>続きを読む

崖上のスパイ(2021年製作の映画)

3.6

明けない夜はない

2021年 中国作品

舞台は1934年、冬、満州国のハルビン。ソ連で特殊訓練を受けた共産党スパイ・チームの男女4人が、極秘作戦「ウートラ計画」を実行するために現地に潜入する。目的
>>続きを読む

グランド・ブダペスト・ホテル(2014年製作の映画)

4.2

おもてなし

2014年 ドイツ/イギリス作品

カラフルで統一された色合い、計算された構図、印象的な小道具、この独特な世界観は大好きです。鑑賞のひと時を異世界に誘われた感じです。

ストーリーもじっ
>>続きを読む

椿の庭(2020年製作の映画)

3.4

眼に、耳に触れ
心に去来するもの

2020年 上田義彦監督作品

藤、椿、つつじ、紫陽花、牡丹、松、笹、すすき…

春夏秋冬、四季折々の花たち

金魚、蜂、カマキリ、蛙、蜘蛛、蝶、蝉、ヤモリ…

>>続きを読む

マンディンゴ(1975年製作の映画)

3.6

自由の国で自由を奪われた人びと

1975年 アメリカ作品

マンディンゴとは、南北戦争前のアメリカ南部で、白人たちが最高の黒人奴隷としていた種族、“血統”のこと。舞台は、南部ルイジアナ州の“人間牧場
>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.2

静かに燃える

2019年 フランス作品

18世紀末の女性画家と
伯爵夫人となる運命の女性の物語

一場面一場面が絵画のようで美しい

絵のフレームのような
美しい構図

絵を描くときのように
研ぎ
>>続きを読む

羅生門(1950年製作の映画)

3.6

生きる

1950年 黒澤明監督作品

『怪物』(是枝裕和監督)のレビューに「羅生門スタイル」という言葉が散見されたので気になって鑑賞。一つの事件を複数の関係者が語る手法は、現在では『怪物』でも世界中
>>続きを読む

ボーダーライン(2015年製作の映画)

4.0

境を越える

2015年 アメリカ作品

麻薬カルテルを潰すために、FBIの常識を捨て、超法規的措置の世界に足を踏み入れた女性捜査官ケイト。その心中の葛藤とアメリカとメキシコとの国境で繰り広げられる抗
>>続きを読む

英雄の証明(2021年製作の映画)

3.8

火のない所に煙は立たぬ

2021年 フランス/イラン作品

ソーシャルメディアによって、平凡な一般人が一夜にして英雄に祀り上げられ、それを証明しようと奮闘した結果、一夜にしてペテン師に落ちてしまうと
>>続きを読む

さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について(2021年製作の映画)

3.6

祖国愛

2021年 ドイツ作品

エーリッヒ・ケストナー(1899-1974)
『飛ぶ教室』などの児童文学で有名な詩人・作家の成人向け文学が原作。

1931年のベルリンが舞台。第一次世界大戦で敗戦
>>続きを読む

42〜世界を変えた男〜(2013年製作の映画)

3.7

ヒーロー

2013年 アメリカ作品

3ヵ月前、神宮球場でヤクルト対広島の開幕カードを観戦した。WBCでの侍ジャパンの優勝の余韻が残る中、村上選手など、間近で観るプロの選手たちの真剣なプレーに胸が踊
>>続きを読む

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

4.2

面白さは寄生する

2020年 韓国作品

前半のコメディタッチ、後半のサスペンスタッチ、物語の背景に描かれる社会問題、一つの作品の中にこれだけ多くの要素がバランスよく盛り込まれた作品はめずらしい。
>>続きを読む