偏執的と言いたくなるほど、砂漠の風景と風俗が長い時間をかけて映し出される。その中に佇む男女の姿は、とても脆く儚く見える。それぞれが深い内面の世界に閉じこもり、自らの感情の迷路をさまよっているのだが、外>>続きを読む
シンプルに嫌な話。政治の腐敗の縮図のような物語でどうしようもない。後味として残るのは不快感ばかりだが、損得と正義のあいだで揺れ続け、結局どちらにも振り切れない人間こそ最も損をしてしまうというのが厳しい>>続きを読む
映画らしい満足感のある上質な映像美と、クラシックな雰囲気が心地よかった。物語自体は、かなりシンプルでストレートな戦時下の悲恋物語なのだが、キャスト一人ひとりの存在感が作品の見応えをぐっと高めている。>>続きを読む
役者たちの自然体の演技が生み出す日常描写のリアリティ、そして閉塞感をほんの少しだけ和らげてくれる優しいユーモアがとても良かった。どんなに辛い状況の中にも、一歩引いて眺めれば可笑しみが潜んでいる。それは>>続きを読む
夢二とその周囲の人々は皆、刹那的で抒情的で、まるで夢二という芸術家が見ている世界を追体験しているようだった。作品全体には、この世のすべてをどこか軽んじているような飄々とした明るさが漂っており、倫理観が>>続きを読む
終始やさしく穏やかな雰囲気の中、少女が少しずつ知らない世界を知っていく姿が描かれる。点在する小さなエピソードはそれぞれ、少女にささやかな気づきと成長のきっかけを与えるものだった。ただ、感情や人間関係の>>続きを読む
一旦火種が立ってしまえば、あとは一気に連鎖的な爆発が起こり、すべてが崩れていく。「ダイナマイト倉」という表現はまさに言い得て妙で、現在の世界が抱えている深刻な危うさを突きつける作品だった。
終わりの>>続きを読む
シンプルなワンシチュエーション劇でありながら、実録をそのままトレースしているという事実が、最後まで途切れることのない緊張感を生み出していた。
国防のための機密情報と、民主主義を根底から揺るがす事実が同>>続きを読む
冒頭から映像の情報量が非常に多く、これを長時間見続けられるだろうか、と不安になったが、しばらくすると不思議と目が慣れ、細かな演出にも過度に気を取られなくなって、ストレスなく物語に没入できた。まるで、最>>続きを読む
物語の発想がとてもユニークで惹かれた。肉体が精神を左右する感覚は誰もが覚えのあるものだろう。例えば、元気な時と病気の時では思考そのものがまるで別人のように変化してしまう。同じ精神性を保ったまま、まった>>続きを読む
まさにシリーズの集大成と言いたくなる、サービス精神あふれる一本だった。物語の核は、キャッチーなAI暴走に核戦争危機を重ねた王道の展開。しかしそこに多彩な仕掛けが編み込まれ、さらに、やや取ってつけた感は>>続きを読む
ロボットが感情を覚え、体の弱い小鳥は努力の末に羽ばたく力を身につけ、仲間外れだった存在から皆を支える立場へと成長していく。敵対していた動物たちは、大きな危機の前で手を取り合う。そして、ずっと言葉にでき>>続きを読む
人生の意味について深く考えさせられるドキュメンタリーだった。
少年が手にすることのできなかった身体活動を伴う体験はあまりに多く、その喪失がもたらす苦しみと絶望は想像をはるかに超えるものだろう。しかし、>>続きを読む
ブータンという馴染みのない国の姿を眺めているだけでも興味深く、悠久の時を感じさせる美しい自然を前に、自然と心が静まっていった。そして何より、幸福とは何かを考えさせられる作品だった。
ブータンは国民の>>続きを読む
大きな出来事こそ起こらない静かな物語だが、映像と音楽の美しさが心地よく、じんわりと余韻を残す映画だった。
人生は、さまざまな縁の重なりで形づくられている。今の自分をここまで導いた縁があり、そして同時に>>続きを読む
現実に起きているあまりにも酷い出来事を扱った作品。こうした剥奪行為が長く見過ごされている事実には強い憤りを覚えるし、しかもそれを行っているのがホロコーストを経験したユダヤ人であるという事実にに複雑な疑>>続きを読む
別々の監督による三つの作品からなるオムニバスだが、共通して流れているのは “なんくるないさぁ” 的な心地よい大らかさだった。
大きく揺るぎないものの上にいるからこそ、人間はドタバタできる。そう感じさせ>>続きを読む
外部からの刺激によって精神や肉体が変異していくことへの好奇心と不安に満ちた作品だった。五感に作用するデジタル技術や通信技術が高度化した現代にこそ、より一層リアリティを帯びて響く物語でもある。物理的な刺>>続きを読む
公民権運動が盛り上がっていた1958年のアメリカでこの設定はなかなか挑発的だったはずだが、作品全体は意外なほどカラッとした空気をまとい、気負わず楽しめるエンタメ逃亡劇に仕上がっていた。
苦い現実を伝え>>続きを読む
息が詰まるような白熱の会話劇だった。加害者側に共感することはどうしても難しかったが、互いに行き場のない苦しみを抱えていることが痛いほど伝わってきた。
不条理な出来事で愛する人を失ったとき、その理由を>>続きを読む
大量の偽札で国力を蝕むという作戦自体が史実として興味深かった。最低限のモラルについて考えさせられるが、そもそもモラルの境界線そのものが崩れているのが戦争なのかもしれない。
自分や家族を苦しめる者を救>>続きを読む
ほぼ四人の会話だけで構成されているのに、まったく飽きなかった。その理由は、そこに普遍的な家族のリアリティがあったからだと思う。
自分の人生がうまくいかないことを親のせいにし、更に同じ親に育てられた姉>>続きを読む
アイコニックな研究室の装置の造形や、人間から化物へと変化していく過程の細部へのこだわり、壁や天井を自在に歩き回る様子など、映像表現が魅力的な作品だった。
人間以外の生物の能力を身につけるというのはヒー>>続きを読む
執念の脱獄物語。脱獄行為の是非はさておき、タイプのまったく異なる二人の友情譚として悪くなかった。
罪人の権利の扱いは難しい。誰もが法律によって裁かれ、法律で定められた罰を受ける権利があるのだから、治外>>続きを読む
ほぼワンシチュエーションで展開される群像会話劇。
登場人物たちのやりとりを通して、貧困が生み出す無力感の強さと、その無力感が人を刹那的な生き方へと導いてしまう様が浮かび上がる。
巡礼老人・嘉平の言葉や>>続きを読む
まさか、おっさんたちが子どものように戯れる以上でも以下でもないとは思わなかった。描かれる“あるある”はごく一般的なものだったが、もっとパーソナルな体験が垣間見えたら、より共感できた気がする。伏線らしき>>続きを読む
狂人か、奇跡か。いや、狂信こそが時に奇跡を生むのかもしれない。
信仰と抑圧、そして性欲が複雑に絡み合うクセの強い作品だが、その熱量には不思議な吸引力があり、気づけば引き込まれていた。
予想だにしなかったクセの強い作品で驚かされた。
精神的に未熟で不安定、しかも他者への感受性が完全に欠落している主人公の暴走ぶりは、コメディとホラーの境界を行き来するかのようだった。
思わず「あ〜あ」>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
作品全体のトーンまで一変させる大胆なダブルツイストのアイデア自体は悪くない。
しかし、荒唐無稽なコミカルパートがあまりにも上滑りしていて、一気に冷めてしまった。
もっとも、その違和感も次のツイストによ>>続きを読む
多産DV気質の親のもとに生まれた子が、実の親ではない大人たちの愛情に触れながら、子どもに注がれるべき愛情を少しずつ感じ取っていく物語。
主人公を受け入れる夫婦の一人は、繊細さと脆さゆえに器用に積極的に>>続きを読む
ノートに描いては消すという作業を膨大に繰り返したことが伝わってくる作品だった。その作業は、きっと幾度となく喪失感と徒労感を味わう行為でもある。だからこそ、この作品に込められた苦しみや怒り、そして無力感>>続きを読む
空を飛んだり光線を発したりするような特殊能力ではなく、あくまで人間が動物として備えている能力の延長線上で、しかし驚異的な身体能力を見せる主人公を観るのが楽しかった。
恵まれた容姿に加え、野生動物のよう>>続きを読む
いやー、いい映画だった。
優しい空気感を共有する役者陣の演技が本当に素晴らしく、それぞれに小さな意味を宿したユーモラスな伏線も印象的だった。
歳を重ねても学びは尽きないし、むしろ歳を重ねたからこそ気>>続きを読む
まず、あらゆる光の表現方法が秀逸だった。
光には、カメラのレンズを通したときにだけ見せる独特の表情がある。人は裸眼で捉える光の姿だけでなく、レンズ越しの光の姿も取り込みながら、「光」という概念を心の中>>続きを読む
誰もが権力者の意向や大勢に流されるなか、たったひとり信念を貫く主人公の姿に気が引き締まる。
しかし、そんな彼が追い詰められる様は、現実のあらゆる集団の中で起きていることに通じていて、どうしようもない苛>>続きを読む
オフビートで描かれる群像劇の中に、人間の愛らしさがさりげなく散りばめられていて、見ていて優しい気持ちになった。
誰しもが、大きくはないにせよ悩みや理想とのギャップを抱えながら、それを和らげてくれる小さ>>続きを読む