主人公が身体をほとんど動かせない状態でどうやって逃走劇を展開するのだろうと思いながら見始めたが、意外にいろいろ起伏があって楽しめた。助けになりそうな人が助けにならないという典型パターンの繰り返しではあ>>続きを読む
平和で優しいファンタジーのような世界でずっと浸っていたくなる。東京という一見ドライな街で何者でもなく蟻のように働く市井の生活の中にも、人と人との触れ合いや思わず笑顔になる時間がちゃんと存在することを思>>続きを読む
時間を巻き戻すほど幸福感が増す構成が切なさを招くが、終盤の短い回収で、その切なさがある種の心地よさに変化し、今を肯定する安堵感の一部になる。とにかく愛らしい伊藤沙莉とややシニカルな雰囲気の池松壮亮が交>>続きを読む
閉鎖的な荘園社会に蔓延する不気味な負の感情、そして次々と現れる性根が腐ってしまった人間の姿にとにかく嫌な気分になった。家族から国家を超える規模まで、あらゆるレベルにおける支配被支配の関係性が、人間をお>>続きを読む
ザ・エンタメ大作。夢のあるスケールの大きな舞台で繰り広げられる開拓の物語。恋と友情、策略と機転、そしてこの時代の実写ならではのリアルな迫力があるシーンが幕の内弁当のようにてんこ盛りで楽しかった。予定調>>続きを読む
非常にシンプルなプロットだが最後までハラハラドキドキ飽きさせない。意思を持った怪物のようなトラックの描き方が秀逸。主人公を執拗に襲い続ける凶暴性と時に見せる狡猾さや気まぐれ、スクールバスのエピソードで>>続きを読む
シンプルながらインパクトのある少女の姿と動き、そして日常の景色に一瞬で不穏な気配を与える存在感抜群のBGMと効果音がよかった。石像やメダルの意味、神父の執筆内容、天井裏の音、聖水の効力、終盤の刑事の訪>>続きを読む
なかなか不憫な物語だった。傷つくことに敏感で遠くから眺めているだけの恋心から、勇気を出して一歩踏み込んだら想像を超える仕打ちを受けてしまうという。雷光が浮き上がらせる窓の奥の白い顔や、相手に見えない位>>続きを読む
今どきの若者らしい暮らしぶりや会話の中に殺しというアクティビティがカジュアルにブレンドされた世界が面白い。まるで旧世代には理解し難い次々と生まれては消える新しい文化の一部であるかのように殺しを描いてい>>続きを読む
粗削りだが何だか清々しい気分になれる映画だった。ツベコベ言ったりアレコレ考えたりする前にやれることやるしかないと。後ろ向き思考の主人公が、ずっと混乱したまま少しだけ前向きに変わってゆくのだが、決してわ>>続きを読む
独創的な色彩で描かれたポップアートのような世界が目に楽しい作品。生命体の造形には手塚治虫や永井豪などの70‐80年代あたりのアニメ作品に通じるものがあった。おそらく人は動植物全般に対して公約数的な概念>>続きを読む
第二次世界大戦後間もない頃の映画。帰還兵三人がそれぞれに抱える苦しみや葛藤とそこからの緩やかな開放の物語が、互いへの情が呼ぶ縁の力を交えてきれいに紡がれていた。かなり画一的な価値観が当たり前のように前>>続きを読む
偶然出会った世代も境遇も違う二人が小さな旅を通して友情を深めてゆくというオーソドックスな物語。主人公が抱える問題がこの出会いによって解決されることも織り込み済みで見てしまうので最後までムズムズしてしま>>続きを読む
アパートの中という閉ざされた空間で起こる出来事を、人の動きや表情をあえて追わず、現実の時の流れや間や音をそのまま定点観測のように映し出す。その手法が見ていられないほどの生々しい閉塞感と恐ろしさを生み出>>続きを読む
最初から絶望的なのだが、この状況を絶望的たらしめているものを一つひとつ突き詰めて考えてゆくと、人は生きる目的など無くても、社会の中にいるからこそ得られる瞬間的な喜びの積み重ねだけで、絶望を忘れて生きて>>続きを読む
ロダンが理論的に革新を起こす常識的な人物として描かれているだけに、私生活のだらしなさに共感し難かった。芸術家と好色は結び付けられがちだ。色事が創作への情熱や創作の質を高める面もあるかもしれない。しかし>>続きを読む
余白だらけの映画。価値基準も曖昧で何者でもなかった頃をずっと後になって思い出した時に浮かぶ断片を繋ぎ合わせたような。心からの抱擁の瞬間や、逆に誰かのことを果てしなく遠く感じた瞬間は、前後の文脈の記憶が>>続きを読む
オッペンハイマーの多面性や葛藤や変化をひとりの人間としての連続性を保ちながら描く脚本が素晴らしかった。前半でオッペンハイマーの根源的動機である真理への情熱と強迫観念が簡潔ながら丁寧に描かれていて、その>>続きを読む
日本とトルコが互いに褒めあっている友情確認作品。登場人物はもれなく物わかりのよい善人で、家族愛や友情を描くサイドストーリーはベタ中のベタ。暗部に踏み込まずひたすら美談を描いているので物足りないが、全体>>続きを読む
事実がわからないままで展開する法廷劇。圧倒的に不利な状況証拠に被疑者を疑ってしまうが、その一方で、憎々しい検察官や幼稚な夫に毅然と対峙する利発な主人公を信じたくなる。事実を証明する決定的証拠がない時、>>続きを読む
クセの強い映像がクセになる。精神が肉体変化に作用する力を極限に高めることが真理を追求するひとつの手段になるという発想がおもしろい。この物語が示すように真理と虚無は同義かもしれず、だとしたら、真理に到達>>続きを読む
生々しく描かれる身近な貧困の中で責任感と尊厳をなんとか維持しながら生きる少女の姿、無責任な親の犠牲者として生きる彼女の行き場の無さに息苦しくなる。少女の顔を間近で追い続けるカメラワークと極端に狭い画角>>続きを読む
予定調和感のある物語だし、五十両を巡るエピソードには緩い点が多く、その周囲のシリアスな空気感とのギャップにやや違和感があったことは否めない。しかしながら、主人公二人の其々の美学に沿った生き方と、それを>>続きを読む
自己実現欲求は、自分という個人が生きているうちに何か生産的なことを成し遂げなければならないという強迫観念でもある。それは、社会に対する新しい創造行為であったり、次世代を担う子供を産み育てることだったり>>続きを読む
稚拙な時を経て、悲しみを知り、大人へと変貌する瞬間の物語。それは不可逆的なプロセスで、もう、その前の世界には決して戻れない。刹那的に輝くバカンスの光景は生の悦びに溢れていて、悲しみのない奇跡的な瞬間を>>続きを読む
いきなりオチのようなトンデモ設定で描けるネタも限られているかと思いきや、あの手この手で最後まで飽きさせずに楽しませてくれた。インド映画のひとつの典型なのかもしれないが、復讐に容赦がないところが凄い。許>>続きを読む
精霊と動物と人間、そしてこの世とあの世が境目も曖昧に横並びで存在する世界観に奇妙な安堵を覚えた。しかし、根底には搾取される人たちの悲哀があり、それに抗うウンタマギルーの姿が気持ち良かった。ラストシーン>>続きを読む
ほのぼのとした雰囲気だが、描かれているのは所謂ASDのような特性を持つ子の生きづらさで、ほのぼのとした気分にはなれなかった。そのマイペースさが尊重されるべき個性であることを理解していても、やはり苛つい>>続きを読む
家族四人を演じる役者達が紡ぎだす空気感に、自分の家族との幾つかの瞬間を思い出した。特に男性三人の距離感にリアリティがあった。湧き出る苛立ちとそれでも消えない好意、他人行儀だがいつでも踏み込める距離感。>>続きを読む
太陽の塔にインスピレーションを受けた人たちが様々な角度でそれから得た概念や思想を語る。まず長い間、多くの人に刺激を与え続けるその創作物の存在の大きさに畏敬の念を抱いた。しかも、常に変わり続ける背景に呼>>続きを読む
アイデアに溢れた独創的なストップモーションが創造力と創造欲を掻き立てる作品。どんな身近なものにも物語を与えて頭の中で動かせる子供の能力の素晴らしさを思い出したし、それがすぐに失われてしまうことを改めて>>続きを読む
文化によって過ごし方は様々でも、年末年始は家族を想う時期。だからこそ独りであることを改めて自覚する時でもある。そんな年末を強制的に共に過ごすことになった三人が、それぞれの痛みと孤独に共感し合い不器用に>>続きを読む
当然、救いを求めて見続けるのだが、最後まで救いはない。その非情で冷徹なプロットが逆に武力支配への強い抵抗心と憎悪を浮き上がらせていた。救いはないが変革の種を残しているところにも強い意志が感じられ、作品>>続きを読む
すごく陰鬱な気持ちになった。短い時間の中に詰め込まれた圧倒的な熱量と説得力を伴った感情、それは、”許せるわけがない”という当たり前の感情だった。そう、許せるわけがないのだ、大切な人を苦しめた人間のこと>>続きを読む
無責任に人を責め、また護る大人や子供や集団の姿が恐ろしかったし、許されてしまったことから生まれる無限の苦しみがやがて麻痺し、罪自体が当事者の心の表層から消えてしまう様も恐ろしかった。犯した罪が正しく裁>>続きを読む