浮浪者さんの映画レビュー・感想・評価

浮浪者

浮浪者

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その男、凶暴につき(1989年製作の映画)

3.5

ふらふらっと治外法権の人生を選び取ってしまったものの孤独と孤高がすれ違っていく。

菊次郎の夏(1999年製作の映画)

3.5

この夏は二度と訪れない。そして二度と訪れてはいけない。無為であることが充満していく、労働から遠く離れた遊戯と観照の時間。

誘拐魔(1947年製作の映画)

3.4

小さく狂えば芸術家であり、大きく狂えば囚人か病人にならしめるのが近代であることを分かり始めた人々のドラマ。しかし、ことの大小を判別する機能が崩壊し、正常と異常の混合が全面化していくのが現代であり古代だ>>続きを読む

わたしの願い/わが望みのすべて(1953年製作の映画)

3.4

夢に駆り立てられた人間の暴挙を許せるようになるか、許すことが出来なくなるか。その分水嶺と、姿勢の変容、哲学の形成が老いるとことであり、人生に熟達し、甘えていくことの推移であり、成れの果てなのだと。

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.4

「平和利用」という崇高かつ欺瞞に満ちた概念の発生と運用の落差が散りばめられていく。永遠平和、時代錯誤のお題目ではなく、超時代的な理念であることを思い出し続けること、それはいかにして可能なのかと問い続け>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

3.6

瞳をとじる、視覚からの解放。四感が冴え、思考と記憶の領野がひた走っていく。欠落からの豊潤といえるような経験。

瞳をひらく、視覚による制約。刮目するという映画的な視野は、一般的な視覚機能から遠く離れて
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天国はまだ遠い(2015年製作の映画)

3.5

この生は見えぬものに囲われ、触れえぬものを包んでいる。

微かなものたち、微(生)物としての死んだものたちを。

まだ死んでいない者は、生かされ・生き残り・生き続けている者たち。

死というものが生か
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PASSION(2008年製作の映画)

3.6

29歳のハッピアワー。

修正的な追記(八年ぶりに)
真実しか語らないことと、暴露話的誘導尋問の悪魔的カップリング。人間関係史において3年に1度あるかどうかの下らなさを3日に10度起こそうというハプニ
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永遠に君を愛す(2009年製作の映画)

3.3

結婚及び結婚式なるものの形骸/儀式性を逆手にとりながなら、極限までキリスト教的制度/告白の無意味さを炙り出していく手つきによもや背信/背徳は感じない。

永遠の愛も、衝動の不貞も、等しく眼差していくゴ
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何食わぬ顔(2003年製作の映画)

3.4

開花から遡及した萌芽の兆しを見つめるのは容易い。種でも芽ですらないものから、花にも葉にもなり得なかったものを見つめ返す不可能性の中心。

奇蹟(1951年製作の映画)

3.4

奇蹟が開かれるための条件。持続した時間、生命、この身体と環境…。信仰や生死の前に幾重にも連なるこの設えこそが、奇蹟の基礎条件であり、奇蹟それ自体であることを改めて噛み締めるレッスン。

ショックプルーフ(1949年製作の映画)

3.5

ご都合主義というメロドラマに託された美点の全面化。脚本通りに人間と世界が奏でられること!

違国日記(2023年製作の映画)

3.5

誰しもが、誰しもなりの方法で居直っている。不器用に、そして不甲斐なく。そしてまた、待ち構えている。恥じらいもなく畏れ、浮足立って祈りながら。

パンと植木鉢(1996年製作の映画)

3.5

どうやったらこんなものが生み出されるのか?複雑怪奇なものに向けた眼差しが持続するが、幕が閉じ、眼差しが折り返される時分。あまりにも単純なものをみた!と複雑性を事の純粋さへと解体/誤認していく。その運動>>続きを読む

あなたの瞳に話せたら(2019年製作の映画)

3.3

物語に情緒を潜ませる素朴な話法より、手紙という語りで情緒を全面化するほうがまだマシなのだなぁと思えてしまった。消極的肯定として。

何かを変えるのではなく、何も変えてはならない、この命法を生き抜くため
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春をかさねて(2019年製作の映画)

3.2

あなたにとっての春を、誰かにとっての春に向けてかさねあわせる、その必然性を生むことはとても難しい(という当たり前のことを)。素朴さと相まって朽ちてゆく。

高校(1968年製作の映画)

3.5

支配と被支配の規則が全面化したゴミクズを平然と食らいつくし、そのゴミクズの残滓によって我々もまた延命されているのだと言わんばかりに。

チチカット・フォーリーズ(1967年製作の映画)

3.8

あまりにもデモーニッシュな作品。ホモ・サケルとしか言いようがない状況を否定的媒介にし、人間をモノとして平均化し、善悪・正邪・清濁併せ呑む。

ふと五木寛之のエピソードを思い出す。

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平壌で終
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憐れみの3章(2024年製作の映画)

3.3

一章を引き延ばして一時間弱で終わっていれば…としか思えないほどの続章の冗長さ。

異常さの百科事典をつくる行為ほど愚かしさはない。正常と異常の裂目にして発生、そしてその反転の縮小モデルを創り上げる才能
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捕えられた伍長 4Kレストア(1962年製作の映画)

3.5

爆撃の最中。逃亡よりもブランデーを選択する、いや、選択肢ではなく、酒と心中しきっている老獪さには、誰も訓育されない。

コルドリエ博士の遺言 4K レストア(1959年製作の映画)

3.4

オパール、カウリスマキに出てくる悪漢そのもの。チャップリンも成し得なかった、道化の極致。

二つの季節しかない村(2023年製作の映画)

3.3

自己への配慮が利己へと暗転し、社会変革の連帯が愚者の舞踏へと進展する。世界は私を内包しないし、私もまた世界を外延しない。並列する必要もない異種格闘技。

"では、人間とはいったい何という怪物だろう。何
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石がある(2022年製作の映画)

3.4

存在の大いなる連鎖。

"生きようとねがいながら、外側の運命のために押しつぶされるあわれな人間たち。思考が逃亡を欲する。思考はみずからを傷つける不幸を眺めることを欲しない。"シモーヌ・ヴェイユ「工場日
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ピアニストを待ちながら(2022年製作の映画)

3.5

村上春樹よりも宮台真司を感じてしまう。待つと待たないの両価性からの逃走として、待ちながら、という状態記述。

閉じ込められているのでもなく、閉じこもっているのでもなくという、現実性の問題。

排中律を
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グレース(2023年製作の映画)

3.4

コーカサスを彷徨する豹柄の幽霊。

「一夜のお楽しみ」を呆気なく葬り去るための犠牲的経験ともみれるが、骨灰を海へ撒くための儀礼的経験だったともいえる。

SUPER HAPPY FOREVER(2024年製作の映画)

3.5

伊東へ行くならハトヤ♪の作詞が野坂昭如であることを知る。

西湖畔(せいこはん)に生きる(2023年製作の映画)

3.2

貫ききれなかったギャスパー・ノエ成分が私を戸惑わせる。山水画に墨はいるが毒はいらない。俗世が毒なのだから。

Cloud クラウド(2024年製作の映画)

3.3

黒沢雲:因果も縁起もなく奇天烈な豪雨(事象)を撒き散らす。

ソウルの春(2023年製作の映画)

3.4

世界一無能な上官は誰だ選手権。事前予想と事後決裁で廻っていく権力空間。

きみの色(2024年製作の映画)

2.5

作家の意図をこえて、造形された生き物たちが動き出すことは全くなく。色にも音にも見放されたクレイが元気印の予定調和で飼い慣らされていく。

リリー・マルレーン 4K デジタルリマスター版(1980年製作の映画)

3.5

ナチとユダという対極を拵えれば、その間に存在するものたちは超然的に処理されていく。

極にのみ理性と倫理が費やされ、際と狭間の物事などはケチなものとして一括化される。

その一括性のさなかで失われてい
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自由の暴力 デジタルリマスター版(1974年製作の映画)

3.5

便所により事がはじまり、便所のように死に絶える。金により糞を忘れたものに向けたバラの花束。