浮浪者さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

浮浪者

浮浪者

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Somm(2012年製作の映画)

3.3

クイズ王が知識人ではないのと同様に。

発酵させた葡萄汁という観念から認識を生み出したいのか、恩寵/聖霊という即物感覚から生きはじめたいのか。

吟味と鑑定と官能が排他的でも相補的でもないとしたら。

暗くなるまでには/いつか暗くなるときに(2016年製作の映画)

3.3

映画にしかみえない辛さ。映画というのもまた比喩の形式であることを知り尽くした上で、実体や本質へ向かって表現が横滑りしているむなしさ。

ありふれた話(2009年製作の映画)

3.5

ありふれる、がゆえに、いとしい。

ありふれない、がゆえに、かなしい。

切断と接着が異音同義語でありえるように、平凡と非凡も峻別不能な地点がある。

その瞬間を怠惰で滑稽にえがきだす青春が確かにあっ
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放浪の画家 ピロスマニ(1969年製作の映画)

3.3

一喜一憂の末、描き続ける才能ではなかったことを露呈させたいのか?おそらくは違うのだろうが。

ニコラが「彼ら」に眼差される前から、必要によって酒場を彩り続けてきた絵画の過程、この膨大なる時間は、なにゆ
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三度目の、正直(2021年製作の映画)

3.5

素直・愚直・正直。さまざまな直向き。

斜に構えるものに見下されることが、不可能なまでの磁力で。

力を生じさせながらも、向き合わさることが可能になるとしたら。

治るために狂うのではなく、狂うために
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アメリカの友人(1977年製作の映画)

3.4

生を何に賭しているかも分からぬまま、不可解な共同戦線がはられていく。

電車から人が投げ落とされていく。

笑えばいいのか、眠ればいいのか分からぬまま。この見放された感覚、他人の情事をみているときに、
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クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

3.3

つまらんがゆえにおもろいということ。ワンモアチャンス…。

奇跡(1954年製作の映画)

3.8

ORDET/御言葉が奇跡とカップリングされるまでの壮大なる準備劇。

深沢七郎ばりの陽気な無常感を奏でるために陰鬱な基底音が配置されていく。この配置の馬鹿馬鹿しさと、当たり前さに触れていく時間に「飽き
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ガートルード/ゲアトルーズ(1964年製作の映画)

3.6

末喜ばしい時間。ほぼ正面がない無正面の立体感覚が蠢いている。

「愛に生きる」ことが蕩尽でしかないことを知りすぎている中でそれを貫くことの愚かさと喜ばしさ。だが、蕩尽なき生を否定しない。超然としながら
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MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)

3.3

狂気の安売りが過ぎると思うけれど、狂気がブランド品に成り上がりすぎた世界においては1つの均衡点か。それもまた虚しいものだ。

夜空に星のあるように(1967年製作の映画)

3.5

八方塞がり、救いようがなさの臨界を清々しく映し出すことの萌芽がありすぎて眠たい。

偶然と想像(2021年製作の映画)

3.6

時間にゆっくりと殺されゆく日常。この強固な形式を微弱な磁力で虐げていく。

非日常を分け与えるのはたやすいといわんばかりに、ハレとケ(この不毛な二項対立)を揺さぶっていく。

その先に何があるのか?
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クローズ・アップ(1990年製作の映画)

3.8

はじめからおわりまで素晴らしさが途切れない。夢?

夢のアンデス(2019年製作の映画)

3.5

象徴の闘争から闘争の象徴へ。『チリの闘い』へ還るようであり、闘いは間断なく続けられているのだ、という喚起のようでもある。切実さ軽快さを併せ持つことの難行。彼はひたすらその道を歩む。もう写してしまったの>>続きを読む

阿賀に生きる(1992年製作の映画)

3.5

完全に消滅したパロールの塊。この話法がありえたものとして知っているものはいる。

ハズバンズ(1970年製作の映画)

3.5

ルームサービスの過剰さと、癇癪の強度が通底していく。過ぎも強さも、それはそれとしてと処理されていく友愛空間に潜入できるか、どうかが分かれ目。

アメリカの友人 4K レストア版(1977年製作の映画)

3.5

途方もない、救われる見込みのないバディームービーが照らし出すもの。友愛よりも孤独でありきることの愉悦。

精神(こころ)の声(1995年製作の映画)

3.6

何もみていないと思えてしまう、すれすれの知覚を続けることは、暗闇において内部発光を知覚する瞑想と近似する。倦怠と解脱の重ね煮。

光のノスタルジア(2010年製作の映画)

3.5

すでに。もはや。ないものへむけられた歓喜と悲哀の目線を束ねられるなら。

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2019年製作の映画)

3.3

凡庸な悪にはじまり、凡庸な幕切れとして英雄は消える。

もはや、魅力的な悪をえがくことが不可能なほどに善悪が一体化している。

国家という確定的な組織が夢の藻屑と化し、テクノロジーのみが蠢く世界へと変
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

3.8

必然性の轍から可能性の束へ開かれていく旅路。あるいは、可能性の軛から必然性の穴へ堕ちゆく愉楽。

わたしもまた同乗者として3時間、無何有なる時空を生きることができました。

少年の君(2019年製作の映画)

3.4

内容・形式ともに陳腐の鏡でしかないのに、気散じすることなく視界の中で生き続ける。

その生命に賭けられた技量と資本に舌を巻きつつ、狡猾なプロカンダ映画をみた気分でもある。

名もなき歌(2019年製作の映画)

3.5

モノクロ・スタンダードサイズ好きはみておくれ。ぎりぎり新作骨董だけど贋作とおもえる不快さは無い。

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

3.5

悲しみは使い古された喜び。

ゆえに、かつて/たったいちど生まれ落ちた喜びを味わい尽くすのだろう。

時間が含みこむ他者性が友愛に感染することで、寛容/免疫の実験がとりおこなわれていく。

ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

3.6

ネイティブのナラティブにやられてまう浮浪者たち。土着する野生、都市化する野蛮。いづれの野性が尊いのか、はたまた賢しらなのか。謡と視線のポリフォニー。

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

3.5

ノマドランドを持ち出すほどの切実さはなく、ガードマンに扮するトランプに渡された皺くちゃの1ドル札(ジョージ・ワシントン)が与えてくれるものは希望よりも祖国からの別離であろう。思えば遠くまできたものだ。

復讐 THE REVENGE 消えない傷痕(1997年製作の映画)

3.4

飄々とした人間が癇癪を起こせる時もある。復讐に浸るただ一瞬のために。消えない傷痕を癒そうとする(消えなさを再自覚化するための)無意味なるものへの投企。

復讐 THE REVENGE 運命の訪問者(1997年製作の映画)

3.5

この一発を撃つために生きてこれた、復讐だけが生きがいだった。

忘れることもできたろう、トラウマになることもできたろう、だが、彼はそうしなかった、いや、できなかった…。