かさんの映画レビュー・感想・評価

か

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

高槻の持つ二面性、家服と妻の距離、本作における主題「自身と向き合う」。これらの全てを“鏡”を通すことで視覚化してしまう演出力が見事。
フェリーから俯瞰でうつされる激しい波の様子には、PTAの「ザ・マス
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気狂いピエロ(1965年製作の映画)

3.4

当然のように第四の壁をぶち破ってきたり、ミュージカルが始まったかと思いきや、気づくと画面に死体が転がっているような脈絡のなさがそのままマリアンヌの生き様を表しているよう。
ストーリーはこれ以上なくシン
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映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)

2.4

新人女優としての初々しい拙さを声のみで表現しなければならないナタリーという難しい役どころに、本当に声優初挑戦の女優を起用してしまうのは些かセンスを感じられない。
カメラが回って“演技”をしているという
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HANA-BI(1997年製作の映画)

2.5

“死に場所を探す”という大枠のテーマでソナチネに近い内容にも思えるが、こちらは「死」という概念についてより克明に身近な存在として描くことで、それでも尚「生」へと執着する尊さが綴られている。
全編を通し
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ソナチネ(1993年製作の映画)

3.5

郷愁的な束の間の休息に終わりを告げるが如く、音も無く冷徹な現実が突きつけられる瞬間のもの哀しさ。淡く繊細なタッチの画作りは言わずもがな、何より劇伴が素晴らしい。

繰り返し見たくなる味わい深い名作。

ジャスト 6.5 闘いの証(2019年製作の映画)

3.0

異常なまでのテンポの良さから織り成される二転三転していくストーリー。スピード感とハチャメチャ具合で言えば24にも比肩するほど。

野郎共でごった煮にされたむさ苦しい拘置所に雨を降らせる場面だったり、賄
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秘密と嘘(1996年製作の映画)

3.4

初めて対面したホーテンスを前に、過去への悔いから来る己への恥や、立派な女性として育ってくれていたことへの喜びが入り交じり、嗚咽をこぼしながらそれでも苦しそうに笑うシンシアの表情が見事。

寄り添うつも
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エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)

2.5

記憶の中を流浪することで、恋人と歩んできた数々の経験が重くのしかかるという筋書きはいいのに、精神世界の見せ方が視覚的なインパクトを重視しすぎてて情緒に欠ける。あの見せ方はなんとかならなかったのか。>>続きを読む

とっととくたばれ(2018年製作の映画)

2.5

キリキリとする切羽詰まった状況で楽しげな音楽を流すタッチのずらし方が独特だと思ったら、清々しいまでのタランティーノフォロワー作品だった。邦題のインパクトに負けず劣らずの尖った作風。惜しみない血しぶきが>>続きを読む

ファントム・スレッド(2017年製作の映画)

4.2

彼にとって、アルマの存在は、あくまでも理想の衣服を仕立てるために不可欠な“道具”でしかなかったんだろうなあ。火花を散らさぬ物静かな駆け引きが苦しい。

我を捨て、相手の願望に沿うように寄り添い続けたと
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ボーイズ・オン・ザ・ラン(2009年製作の映画)

2.6

周りを見えなくなった男が、相手の気持ちなんてお構い無しに、自分の胸のつかえをとるための舞台装置として女性を利用するという「宮本から君へ」のような暑苦しい筋書き。ただし、こちらは昭和の古臭い熱血漢から冴>>続きを読む

セイント・モード/狂信(2019年製作の映画)

4.1

患者を死なせてしまった過去のトラウマを払拭するべく宗教に救いを求めた女性。彼女に聴こえる“声”は果たして現実のものなのか。

その信心深さゆえに教義を曲解してしまい、神のお告げの元に行動をエスカレート
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シアター・プノンペン(2014年製作の映画)

2.4

クメール語の映画を見るのはこれで2度目だが、どちらの作品にも共通して話の根幹にクメール・ルージュの悪行が関わっているのを見るに、現代のカンボジアを語るにあたって、やはりポルポト政権のもたらした影響は無>>続きを読む

マルコヴィッチの穴(1999年製作の映画)

3.1

他人の体を介して世界を見ることで、オリジナルの肉体では気づけなかった奥底に眠る願望に気がつくという展開はなんとも哲学的。マルコヴィッチ自身が穴に入って見えた世界はもうほとんどホラーだった。全員の倫理観>>続きを読む

ゲーム・オブ・スローンズ:ラスト・ウォッチ(2019年製作の映画)

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最終話を見てから2年以上経つのに口述される場面をほとんど脳内で再生できたことに驚いた。
7章以降の展開に散々文句を垂れてしまったことを申し訳なく思うほどキャストも裏方もとことん本気。
てっきりほとんど
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悪なき殺人(2019年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

奇跡的な噛み合いを見せて終わらない負の連鎖。女性はいかにして姿を消したのか。
個人の一人称的な視点からはこの“偶然の積み重ね”を観測できないというのが最大のミソで、実際に劇中でも複数の視点から多角的に
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火祭り(2006年製作の映画)

4.3

いわゆる昼ドラ的な痴情のもつれを第三者の視点を通して醜く描いているだけなのに、こうも画面に釘付けにされるとは考えもしなかった。
“何か”に気づいた家政婦の眼前を炎の揺らめきが照らしていく演出が美しい。
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美しい都市(2004年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

本作は「別離」に並ぶとんでもない傑作だったが、内容よりも先に日本では考えられないあまりに衝撃的な法整備について記させてほしい。

・未成年でも死罪が適用され、18歳になった時点で刑が執行される。(これ
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砂塵にさまよう(2003年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

当人の意志が介在することなく、周囲が世間体を優先して離婚を強いられてしまう家庭内での板挟みや、イランにおける女性の地位の弱さをファルハディ的な繊細な人物描写で掘り下げていくのかと思いきや、慰謝料を稼ぐ>>続きを読む

死刑にいたる病(2022年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

鬱屈とした日常を惰性のように消費し、周囲の同級生ほど馬鹿にもなりきれない大学生が、“自分は殺人鬼と同じ血を引いている”という予感だけで、しがらみから解放され真の自分を見出す。
自己同一性を見失いかけて
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彼女が消えた浜辺(2009年製作の映画)

4.0

話が彼女の安否確認から責任の所在を巡る擦り付け合いに変化していくのを、誰一人として咎めないまま口論へと発展する場面に見ていて違和感を全く覚えないのが恐ろしい。
本来は被害者とも呼べるはずの彼女へ疑いの
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勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

2.6

脈絡のなさと途切れの無い会話がまんまタランティーノで、ゴダールの映画が本当に好きだったんだなあと。

恋する惑星(1994年製作の映画)

3.3

恋愛ドラマ風ヒトコワ系ホラー。陽気な音楽と陰影のハッキリした明るい画面に騙されるけどナチュラルに狂ってる登場人物たち。大好き。
雰囲気映画を撮らせてウォン・カーウァイの右に出る監督を知らない。

アテナ(2022年製作の映画)

2.5

行使する側の肩書き次第で“暴力”という行為に帯びる意味が変わってしまうことの理不尽さや、先入観に囚われてしまうことの危険性といったわかりやすいテーマが盛り込まれてはいるものの、社会派として捉えるには劇>>続きを読む

ブレックファスト・クラブ(1985年製作の映画)

2.0

作文を押し付けられたオタクくんを横目に美男美女でカップル成立してるのがいかにも“青春”で笑ったけど、扱ってるテーマを考えると着地点は違うように思えてしまう。

マイ・マザー(2009年製作の映画)

3.3

奥底では嫌っていないことを自覚しながらも、どうにかして溝を埋めようと距離を詰めてくる母の存在を疎ましく感じてしまうことは誰しもが経験するはず。
それらの相反した感情やそれまでの過去、これから先の未来を
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女神の継承(2021年製作の映画)

1.6

独自のアミニズム的な信仰が根付いた集落における“得体の知れなさ”を恐怖に昇華するという最近のホラーにありがちなやつ。

視覚的な面でのディテールの詰めは、同じく信仰やお祓いを作品の根幹に据えた「呪詛」
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カプリコン・1(1977年製作の映画)

1.4

有人飛行での火星への到達を捏造した政府と宇宙飛行士・記者による真実を巡ったSFサスペンス…が見れるのは冒頭の30分だけ。以降はいつもの大味なハリウッド映画。

当時はアポロ十一号が月面に着陸した際に流
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受取人不明(2001年製作の映画)

3.7

戦争の呪縛に苦しみ続ける閉塞した村での青春の1ページ。表面だけ掬うとどこまでも暗くてどん底へと下降の一途を辿っているのに、不思議と内容ほどの重さは感じさせない。

彼らの歪んだ愛憎やコンプレックスが絶
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スティング(1973年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

“殺し屋”と思い込んでいた者の正体に触れて主人公と共に一杯食わされ、FBIの仕掛けで更に主人公にも騙される。騙す側が騙される側に回った、と思いきや更にその先がある、という多重構造が美しい。
コンゲーム
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パーマネント野ばら(2010年製作の映画)

1.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭から続く些細な日常を切り取ったようなひとコマが、全く視聴者の日常に寄り添ってないせいで没入を削ぐ。
男性器の名称を連呼するキャラクターを面白いと感じる制作陣のユーモアセンスはとにかく絶望的で、全く
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ラブ&ポップ(1998年製作の映画)

2.5

ぐわんぐわんと揺れるカメラに魚眼のようなパース、極端な煽りや俯瞰を多用したアングル。

ハンディカムで撮影することで女子高生の一人称的な視点から等身大の渋谷という街を描こうとした、という意図は伝わるが
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嘆きのピエタ(2012年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

彼自身の不幸な生い立ちだけは本物で、それに直接触れることで、欠如した空白を取り戻した人間の無垢な愛を肌で感じてしまい、憎むはずの相手に同情を覚えてしまうというアンビバレントな感情に胸を痛める。

かり
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オーディション(2000年製作の映画)

3.4

赤みがかってざらついた映像と、微妙に聴き取りにくい音質が逆に不安を助長してくれた。
鮮明な映像では表現できない独特の湿っぽさ。

女性がそれまでに歩んできた過去や生きるために身につけた術を、妄想と現実
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