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ドライブ・マイ・カーのかのネタバレレビュー・内容・結末

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

高槻の持つ二面性、家服と妻の距離、本作における主題「自身と向き合う」。これらの全てを“鏡”を通すことで視覚化してしまう演出力が見事。
フェリーから俯瞰でうつされる激しい波の様子には、PTAの「ザ・マスター」っぽさを感じたり。

ラストに関してですが、彼らは、彼女の故郷での対話とチェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」の完成を経て、過去への精算を済ませたために日本を去り韓国で舞台を続けた、というように解釈しました。自身の選択に対する戒めの象徴であった傷が消えていたのはその証。

“亡くなった娘が生きていれば今は23歳である”というやり取りから察するに、彼は彼女と娘を同一視していたのでしょう。故に、二人の間に恋愛感情が芽生えることもなく、手話を通じて舞台の外へと届いた新たな生き方を実践しているのです。

「ワーニャ伯父さん」で語られる最後の一幕が、そのまま劇中では発されぬ「ドライブ・マイ・カー」へ姿を変え結末へと繋がった、そう思い込みたいだけかもしれませんが…。

この解釈の妥当性はどうあれ、「喪失」「悔い」「再生」という人生における大きなテーマを、それぞれの望む方向へと導かせてくれる素晴らしいエンディングなのは間違いありません。邦画で稀に見る傑作。大満足です。

2022/10/12
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