ゆきのすさんの映画レビュー・感想・評価 - 13ページ目

地獄(1960年製作の映画)

3.2

ファウストを思わせる物語。現世を地獄絵図に、死後も地獄に突き落としにくるメフィスト!関わりたくない〜!!人間として生を受けた事が、地獄で裁かれ沙汰を受け入れる定めなのだ…。

雪夫人繪圖(1969年製作の映画)

3.1

貴族の没落と退廃、和太鼓とパイプオルガン、フィルムの質感にこだわり抜いた映像美。重厚な文芸作ではあるが、この時代の佐久間を、妖艶なる白い美貌を、永遠に遺そうという強い意思を感じる。

透明人間と蠅男(1957年製作の映画)

3.2

1957年作品という事を鑑みれば、紛う事なき傑作。練られた脚本が冴えまくってる。東京を震撼させた蠅男山田の最後!なんてこった(さりげなく超弩級ギャグも盛込む) !テロの規模が凄まじい。

新座頭市 破れ!唐人剣(1971年製作の映画)

3.6

座頭市と片腕ドラゴン、夢の対決。その魅力と戦いっぷりを存分に堪能。てんぷくトリオと市の掛け合いが絶妙。笑ありの娯楽活劇であると共に相変わらず無慈悲にして悲壮感溢れる展開。南無三。

ボクたちはみんな大人になれなかった(2021年製作の映画)

3.5

この時代に生きた多くの人が痛ッ!ってなる作品構造。「普通」とか「大人」とか実は曖昧模糊で漠然とした概念との格闘が、ある種の人間にとっては人生そのものなのだ。

ニューヨーク・ストーリー(1989年製作の映画)

2.8

小洒落過ぎてる気もするが、ぼんやり楽しめる三大NYっ子監督のオムニバス。大都会のセレブの退屈な日々に巻き起こる非日常。

女帝 春日局(1990年製作の映画)

3.2

三代将軍が実は家康の子だった!というなかなかアグレッシブな設定の下の春日局譚。家康演じる若山富三郎、本気!のお下品炸裂。東映時代劇の珍説ものはわくわく止まらん。大好物っす。

4月の涙(2009年製作の映画)

3.5

1918年フィンランド内戦。敵役である元作家の検事をどう見るかで印象が変わってくる。かなり倒錯した彼もまた戦争の被害者であるのだ。主役2人の秘められた純愛ドラマでもあり歴史の闇を浮かび上がらせる佳作。

突撃(1957年製作の映画)

4.0

ヒロイズムにもヒューマニズムにも絶対に流されない鋼鉄の意思を持つキューブリック。正義と呼ばれるようなものが絵空事で、未来永劫現れない事を叫んでいると感じる。

リリィ(2003年製作の映画)

2.9

フランス人気質を存分に味わえる青春譚。他の国だとドロドロ愛憎劇になりそうな展開だが、ほろ苦爽やかな印象になってしまう!南部海岸沿いの田園風景にはうっとりするばかり。

ソムニア 悪夢の少年(2016年製作の映画)

3.1

子供ならではの悪夢が、現実となって襲ってくる。出来過ぎで隙のない脚本がむしろ鼻につく(褒めてる)。大人のエゴに苦しむ様、子供の不安な面持ちの描き方が秀逸。

ゲット・ア・チャンス!(2000年製作の映画)

3.2

晩年のポール・ニューマンもまた格別。見た目とは裏腹に落ち目のくたびれた呆け老人役ばかり。それがどうしてかハマる。今作はほのぼの?犯罪ムービー。小品だが見所多く小気味良い。楽しい。

こわれゆく女(1974年製作の映画)

4.1

表情を映すことに執念を見せる演出と、それに応える役者馬鹿(誉め言葉です)。迫真の演技とはこれだなあ。主演2人のリアルな壊れっぷりに度肝を抜かす。不幸な共依存。追い詰められた人間の成れの果て。

ばるぼら(2019年製作の映画)

2.1

見るのをとても楽しみにしていたんですが…。「排泄物のような女」ってこうかなあ。原作を尊重してるのか越えようとしているのか、土台となるべきばるぼらとの異常な日常が薄過ぎるのが全てのような。残念。

秘録おんな牢(1968年製作の映画)

2.8

「おんな牢秘図」無惨にして諸行無常はこの時代の大映お色気時代劇に同じだが、東映みたいなぶっ飛び演出はなく、えぐそうで全くえぐくない(と私は思う)。新入り女囚二人(一人はフジ隊員!)は田村正和より魅力的>>続きを読む

おんな極悪帖(1970年製作の映画)

3.8

大楠道代さんはとてつもない極悪女役なのだが、可愛げみたいなものがある。素敵!田村正和の美青年っぷり!小山明子vs侍田村の前代未聞の真剣勝負!岸田森の高笑い!地獄極楽覗きカラクリ。最後まで生き残るのは誰>>続きを読む

渚にて(1959年製作の映画)

3.9

全面核戦争後、生き残った人々の最後の日々のスケッチ。「放射能が来てる。誰かが最初で、順番にやられていく」。その時が来たらどうする? 絶望に生きる事とは。我々もそうできるのか?

鬼婆(1964年製作の映画)

4.0

人間なんて食欲と性欲の塊。餓鬼畜生。これを演じることとは。鬼婆の狂気と役者音羽信子の狂気が凄まじすぎる。人間であることに絶望もするし感動もする。

みちていく(2014年製作の映画)

4.0

忘れたくない事があった事を思い出す。また忘れてしまう事も。思い出せなくなる事も。丁寧で媚びのない演出と演技に感服感動。どのシーンも愛おしい。よく見る青春映画が嘘っぱちだってよく分かる。

野球少女(2019年製作の映画)

2.5

女性だから、というのをテーマにする事が既に古臭く感じた。水原勇気の登場は1975年、現実は何も変わってないという事も。「難しいのは女子だからではない」これをもっと前面に出して欲しかった。

コンジアム(2018年製作の映画)

2.2

よくあるお化け屋敷探索POVもの。この作品に怖さを殆ど感じない私は、面白楽しく生きる事において損してるのかなあ。最新撮影機器と生配信という今時の要素にふむふむでした。

恐竜の島(1974年製作の映画)

3.9

古きよき冒険SFの大傑作。すこぶる丁寧な特撮はミニチュア愛に溢れている。動物(恐竜)や原住民に対する扱い(接し方)は、原作や製作当時の倫理観を知る上でも貴重な資料である。

ファンシー(2019年製作の映画)

3.0

死が軽い。セックスも軽い。だから、生きる事が重い。永瀬正敏の仏頂面がよい。日常とか普通が、どこまで異常に侵食されているのか。リアルペンギンでやればよかったのに、なぜイケメン?

ホームワーク(1989年製作の映画)

3.8

おそらく、宿題について子供に問うことによって、国家や一般家庭の現実を浮かび上がらせようという反体制映画。教育システムについて訴えているようで、様々な問題を抱える国家を浮き彫りにさせる。それにしても質問>>続きを読む

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)

3.7

ギリギリ生きてるその他大勢の人達の生き様。陰惨で悲しい物語だけど、むしろしんみりホッとしてしまった。転落でも破滅でもなく、絶望の迷路に放り出されただけ。

絞殺(1979年製作の映画)

3.9

旧態依然にべばりついて生きていくとどうなるのか。価値観を更新させる事の困難さ。家族家庭ご近所さんの気持ち悪さ特濃ドデカ盛り。昭和だからとか特殊なものではない。これが日本の本性。

マックス、モン・アムール(1986年製作の映画)

4.2

ツボった。大傑作。世界をケムに巻く愛すべき珍作。赤塚不二夫のような、不条理だけどのほほんとした空気に中毒性がある。深読みするのもよいが純然たるファミリーギャグ映画として見たい。

愛の嵐 ノーカット完全版(1994年製作の映画)

4.0

僕の天使なんだ!愛の叫びか呪いの言葉か。その狂おしい程の愛は、倫理や道徳や常識や理性に対して破壊の限りを尽くす。地獄を生き抜いた支配者と被支配者だった二人は愛の地獄に堕ちる。究極の退廃だと思うよ。

さざなみ(2015年製作の映画)

4.0

円満夫婦なんて幻想か妥協なのだ。(手を) 振り切るかどうかだけの問題か。ありふれたすれ違いと根深い憤悶を描き切った監督と出演陣は賞賛に値すると心底思った。さざなみというよりは津波(決定的な破局が訪れた>>続きを読む

死刑執行人もまた死す(1943年製作の映画)

3.7

ナチス独との徹底抗戦を訴えるプロパガンダ映画ではあるが、自由と不屈の精神を描いた骨太サスペンスとして完成度は極めて高い。悲壮感と娯楽性のバランスの良さ!

運命を分けたザイル(2003年製作の映画)

3.0

再現ドラマに特化したドキュメンタリー。リチャード(本人)の笑顔があるから安心して見れる。
雪山メインだが、終盤は岩山行。最後の夜、満天の星空。生への執着は絶望を超える。

消された女(2016年製作の映画)

2.5

主人公の男が何と戦っているのか伝わってこない。このテレビ番組の下りは抑えめにして「消された女」さんの物語を時系列通りに描いた方がよかったと思いました。

ボクシング・ヘレナ(1993年製作の映画)

2.0

とんでもない倒錯変態作を想像していたが、圧倒的普通感! このプロットでどうしてこんなB級メロドラマだかサスペンスになってしまうのか。同じシナリオでもお父さんが撮っていたら大傑作だったかもよ。

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)

2.8

ゴッホ入門。手法に関しては労作であり画期的な試みと思う。しかし、そもそもゴッホの絵を動かしていいのか?その意味や意義は何か?結局そこは腑に落ちないまま。ゴッホのいい人部分のピックアップ。病的だったと言>>続きを読む

無頼漢 渇いた罪(2015年製作の映画)

2.8

チョン・ドヨンに目が釘付け。悲しげな笑みに魅せられてのたうち回る。危うくて脆い愛情を切実に表現する類い稀な才能。驚嘆と溜息。そしてきれい。もうそれだけ。

search/サーチ(2018年製作の映画)

2.5

登場人物全員が相当の問題(闇)を抱えているのだが、ミスリードにしか使わない。薄く感じる。デスクトップ上で展開される目新しさから面白く感じるが、サスペンス劇場的な味わい。