ゆきのすさんの映画レビュー・感想・評価 - 11ページ目

禅 ZEN(2008年製作の映画)

2.6

宗教団体が総力を結集して作った割には思想宗旨にそれ程偏らず道元の足跡がメイン。具体的な説明より、もっと日本中国の風景で禅世界を表現できればなあと思いつつ見る。北条頼時の大熱演には苦笑!

愛の記念に(1983年製作の映画)

3.2

「人を愛さないで生きるのは面白くない」伝統芸とも言える仏ティーンズ映画だが、今作の主役は監督自ら演じる父親かも。実直堅実な父が不意に出奔。その不在がもたらす家族同士の取っ組み合い。奔放に生きる事につい>>続きを読む

都会のアリス(1973年製作の映画)

4.0

「さすらい」と双璧なすヴェンダース作品となった。自然音、フィナーレの空撮! 自分が存在する証拠を孤独に揺さぶられつつ探している人たち。だんだんと見えてくる彩り鮮やかな世界に心を持っていかれる。

ヤングガン(1988年製作の映画)

3.2

ビリーに関する事を調べると本作の彼は相当リアル(似ている!)。過剰なエンタメ的脚色があるに関わらずキッド映画の決定版と言われるのも納得。近代が押し寄せる無法時代最後の空気を銃弾の嵐と共に。

プライベート・レッスン 青い体験(2000年製作の映画)

3.0

ぺどぅなぺどぅな!コテコテの青春エロ映画と思いきや、甘酸っぱいを通り越してかなり辛辣。愛と性の袋小路。あまりにも美しく爽やかな田園風景がトラウマを彩るのが悲壮ですらある。

人数の町(2020年製作の映画)

3.5

よくあるシチュエーションものと思って軽い気持ちで見ると、きっと嫌〜な気持ちになるのではないか。人数の国で生きている私たちに突きつけられる練られた脚本。一番最後のセリフはサービスが過ぎるが(くどいよね?>>続きを読む

バード・ボックス(2018年製作の映画)

3.3

見えない何かとの戦いは、まさにコロナ時代を予見していた。正体が見えない分からない事が、この作品の肝だ。混沌として先行き不明の時代、行き止まりの世界。この世は鳥籠。明日死んでもいいように夢を見ようとは至>>続きを読む

もどり川(1983年製作の映画)

3.9

尺137分でも足りないと思うのは私だけ?太宰がモデルなのだろうが大正時代を背景にした事で退廃ときな臭い空気が効果的。死へと誘う情愛のロマンチシズムに酔い溺れる男と流されざるを得ない過酷な運命の女性たち>>続きを読む

エヴァ(2018年製作の映画)

1.5

彼女が一体どんな風に素晴らしい高級娼婦なのかさっぱり分からない演出(脚本の不備ではないと思う)が致命的では?無難に作ろうとして破綻か。ユペールさんなので最後まで頑張って見たよ!

シンドバッド 七回目の航海(1958年製作の映画)

3.3

特撮映画の古典中の古典。ハリーハウゼンの人形使いに注目しがちだが、お姫様のキュートさも破壊力抜群。冒険活劇でありながら胡散臭い展開を引っ張るのは彼女の天真爛漫さ。定期的に見てしまう。

變臉(へんめん)/この櫂に手をそえて(1996年製作の映画)

4.0

場面の切り替えが絶妙。センス抜群。よくできた人情話ではあるが、その時代その場所の非情や非道を決して誤魔化さない。変面芸とお爺さんの笑顔が素晴らし過ぎてじんわり。

マヌケ先生(1998年製作の映画)

3.0

監督作ではないがどこを切っても大林映画。自伝を自ら監督するのもね(出てるけど)。スタッフも役者も監督と尾道が大好き過ぎ!思わずにやにや。幻の憧れの女性たち、分かる分かる。

サンタ・サングレ/聖なる血(1989年製作の映画)

3.9

色彩に加えてカメラワークが美麗。カルトというより謎解きサスペンスにして娯楽作。幼き日に見た(思い描いてしまった)悪夢を甦らす眩いイメージの応酬に目が眩み脳が痺れる。監督の両親への怨念と愛情を垣間見る。

黒い箱のアリス(2017年製作の映画)

2.1

わくわくさせる設定や道具が揃っているのだが締まりがない。刺したり刺されたりの意味が…。自然音の使い方は巧み。音楽やSEはむしろ邪魔。事故の件もタイムマシンの存在についても謎のままの方が潔い。残念な気持>>続きを読む

心と体と(2017年製作の映画)

4.2

孤独だからこそ見る事ができる夢、絶望に近い場所でないと感じられない宇宙。現実的だが濃厚なまでの幻想的イメージは、素朴で温かいメッセージに溢れている。彼女が世界を知っていく場面に心踊る。

ウンギョ 青い蜜(2012年製作の映画)

3.8

うんたくうんたく!問答無用でときめいた。老人パクヘイルに多少無理はあるが、真正面から回春を描こうという姿勢に感服。老作家がどうしても二人の情事を覗きたいあの気持ち、居ても立っても居られないよなあ。

ビリー・ザ・キッド/21才の生涯(1973年製作の映画)

3.8

2005年版。ジョン・ウェインが幻想だった事を知らしめる傑作。現実に近い西部の空気。そして西部の最後。どのバージョンがペキンパーのものと言えるのかは判然しないが、彼が記したかった事は伝わってくる。

人間の條件 第1部純愛篇/第2部激怒篇(1959年製作の映画)

4.0

このままだと人間でなくなってしまう!仲代の叫び。鬼畜として描かれる軍部の姿は、今でも脈々と私たちに受け継がれている。ナショナリズムという不治の病とどう向き合えばいいのか。

映画 賭ケグルイ(2019年製作の映画)

1.1

これはwww 完走した自分に驚いた(+0.1)。ルールやノリや今時の役者を知らない私が悪いのです。すまん。

サイレント・パートナー(1978年製作の映画)

3.7

スケールは小さいがサスペンスの醍醐味が詰まった傑作。日常の些細な綻びからまさかの展開、恐怖と衝撃の連続。ヒッチコック的!彼はこれをどう見たか気になる。電話ボックスの使い方が心憎い。

サム・ペキンパー 情熱と美学(2005年製作の映画)

2.9

天才鬼才は狂人と紙一重。酒とドラッグは、むしろ常人に留まるための唯一の手段だったのではないか。良くも悪くも生粋のアメリカ人であったペキンパーの入門テキストとしては良。

ありふれた事件(1992年製作の映画)

4.0

密着殺人鬼!!という長編コントだと思うと腑に落ちた。欲望に忠実過ぎる稀有な男の生態と思想、そして奇矯な感性は、不愉快を通り越して比類ない不条理ギャグの極みだ。サウスパークを実写にしたらこうだよ。笑って>>続きを読む

クワイエット・プレイス 破られた沈黙(2021年製作の映画)

3.0

すき。いざとなると人間は合理的行動ができなくなったりするもの。お利口さんばかりが主役をやる訳ではない。そこを突っ込んでもね。でも90分でまとめて欲しい!

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)

4.3

「他人の期待通りに生きる方が罪だ」突き刺さってくる。自由という思想の、人生の教科書。生を肯定し、生きた自分を許し讃え、親や隣人をありのまま受け入れる事。参った。ありがとう。

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

2.5

とにかく美しい!!登場人物も美術も特撮も。映画館で見るべき。だが作品世界が持つ禍々しさが微塵も感じられない。私にとっては致命的な欠点。リンチやホドロフスキーとは根本的な解釈の違いが。

罪と女王(2019年製作の映画)

3.7

破滅へと一直線!あり得ないことなんかない。誰もが自分では考えも及ばない愚かな事をしでかす予備軍。多くの家族で、多かれ少なかれこういう闇が進行中だったりするんじゃないか?

スパイの妻(2020年製作の映画)

3.0

「アカ」である事も含めて、正気か狂っているか、それを決めるのは社会の空気。現代でもそうした線引きはある。戦時を描いた作品としては少々パンチが弱く、おそらく予算も足りない。劇中8m劇の蒼井優が凄まじく素>>続きを読む

エヴォリューション(2015年製作の映画)

3.7

こんなSF映画が見たかった!R18な暗喩(少年愛など)に満ち溢れ、見る側の想像力を刺激しまくる。美しいというよりゾクゾクと妖しいおののき。解答は見た人それぞれ。そこが更によい。

(1965年製作の映画)

3.8

英軍刑務所、究極の階級社会。地位こそが権力であり正義。丘は難攻不落理不尽不平等社会の象徴。コネリーらの反骨精神に心打たれるも、看守たちの憎々しさ(超好演!)にむしろ己の浅ましさや負け犬根性を感じ苦々し>>続きを読む

戦争と人間 第三部 完結篇(1973年製作の映画)

3.4

その後の日本と伍代家の運命が見られることなく完結してしまったのがとにかく残念。戦時における罪と罰を描いた傑作には変わりないが。今作は笘さん(夏純子)が素晴らしい!看板女優さんたちを圧倒。

博士と狂人(2018年製作の映画)

2.9

市井の奇人変人犯罪者の話だろう。現実はもっと淡々としていたのでは。派手なようで案外地味ないい話。脚色と演技でここまで素晴らしい感動作になってしまう!役者陣が凄すぎ。

仮面ライダーアマゾンズ THE MOVIE 最後ノ審判(2018年製作の映画)

1.8

シリーズやっとこさ完走したので完結編を。期待してた訳ではないが残念。さすがに悪趣味。「人間様」を告発するにしても詰めが甘い。徹底的に情け容赦なく表現できないならやるべきでない。

ゴジラ対ヘドラ(1971年製作の映画)

3.3

怒濤のいかれっぷり。この映画に一体どんな怨念が込められているのか。市川森一脚本のような執念をも感じる。なぜ、ゴジラはヘドラと戦う?一緒に人間を滅ぼして欲しいよ!返せ!!!!

ROOM237(2012年製作の映画)

3.5

特定作品の分析の形をとっているが、創作物を考察する事の意味意義可能性とバカバカしさを同じベクトルで提示する奇妙かつエキサイティングな作品。オカルトや陰謀論は異常な愛情から始まる!

戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河(1971年製作の映画)

3.9

第二部も引き続き重厚濃厚社会派ドラマで圧倒的メロドラマ!投げナイフシーン、本物だよなあ(ひえっ!第一部でもあり)。国や軍の過ちを糾弾しつつ娯楽映画である事を決して放棄しない商業映画監督の矜持。

霧の旗(1965年製作の映画)

3.6

桐子の願いも弁護士の必死さも切々と伝わってくる。常識では説明しにくい人間の行動や言動に歯痒くも。抑えた山田洋次演出は、理不尽で不条理な世界をむしろ際立たせる。数ある霧の旗の中で一番と思う。