ゆきのすさんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

ブコウスキー:オールドパンク(2002年製作の映画)

4.0

かっこいい生き方と思う人は多いだろうし真似をしたい人もいるだろう。が、実際あのように生きたのは赤塚不二夫と中島らもくらいしか思い出せない。「酔って書いてヤリまくれ」そしてシャイであれ、だろう。

ぜんぶ、フィデルのせい(2006年製作の映画)

3.5

左翼家庭あるある!?というお話。子供の成長を描くとはまさにこういう事。70年代社会思想が背景だが、それがテーマではなく、感性が育まれる様こそが主眼。アンナの不貞腐れっぷりが堪らん。

カウントダウン(2011年製作の映画)

3.3

ドヨンドヨン!!人でなしを生むのは自分自身。そして、人でなしにも人の心はあると説くサスペンスアクション。極めて道徳的な着地が見事。誰が呼吸器を外したのか?を最後に持ってくる構成の妙。

恐るべき子供たち(1950年製作の映画)

4.0

子供とは得体の知れない生き物なのだ。私たちもそれだった。異次元のような奇妙な部屋での濃密な日々は、夏休みの秘密基地。苦しくて残酷で甘過ぎる、記憶するのが困難な(大人になると忘れる)思い出。

化粧師 KEWAISHI(2001年製作の映画)

3.0

物語も映像も分かりやすく綺麗にまとまり過ぎてるのはむしろ欠点。時代の闇は徹底的に汚く醜くとも描くべきではないか。菅野と池脇は無化粧(に見えるメイク)の方が圧倒的に美しかったです。

生きてこそ(1993年製作の映画)

2.8

悲劇を丹念に再現しているが、よくできたハリウッド映画感が強い。ドラマ性より淡々と事象を練り上げた方が伝わったのでは。本編より特典(本人らの証言等)の方がより悲惨と絶望、そして希望を感じた。

兵隊やくざ 大脱走(1966年製作の映画)

3.7

戦車と命の交換なんて馬鹿げた死に方はしたくない!どうせ死ぬならお前の腹の上で死にたい!俺は絶対に玉砕はしない!一回だけ!名セリフ連発。生へ意地汚さこそが勇気なのだ。

はなれ瞽女おりん(1977年製作の映画)

3.6

おりんの、半生や憲兵の取り調べでの常に笑みを浮かべ達観した語り口に岩下の女優魂を見る。彼女を抱かない抱けない原田芳雄の男心が切ない。瞽女の生活の丁寧すぎる程の描写は胸を打つ。

四畳半襖の裏張り(1973年製作の映画)

3.2

文芸とか猥褻とか、この作品に纏わる様々な事柄より、映画的野心に唸る。宮下順子のひとつの濡れ場パートを丸ごと描く心意気。大正のきな臭い空気感を男女の睦言から丹念に浮かび上がらせている。

ああ爆弾(1964年製作の映画)

3.0

ペンシル爆弾に右往左往のはちゃめちゃコメディ。外連味も大爆発。喜八演出センスが暴れまくって収拾も付かない。ジャズ大名の原型と言えなくもないかも。後のイデ&フジ科特隊員ににんまり。

ルナシー(2005年製作の映画)

3.2

狂気と恐怖と虚実入り乱れた精神病院が暗示するのはまやかしの現代社会。愛は届かない。戸川純の諦念プシガンガを思い出す。我一介の肉塊なり。彼の作品にしてはおとなしく分かりやすく感じる。

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ(2015年製作の映画)

3.4

典型を貫いた変身ヒーロー誕生譚。こんな、邪悪というよりは地獄な味付けで見てみたかったよ!ジーグだけど石ノ森的。いかれてる事に対する哀しさもひしひしひりひり伝わってくる。かっこいい。

藁にもすがる獣たち(2018年製作の映画)

3.2

ドヨンドヨン!とってもタランティーノ。コミカル過ぎる面もあるが容赦ない残忍冷酷描写で溜飲を下げるノワール群像劇。娯楽に吹っ切れていて、よくできてる感が強過ぎるのがむしろ嫌味な程。

リターン・トゥー・マイ・ラヴ(2005年製作の映画)

3.8

冴えない人間の冴えないドラマ。だからこそ愛おしい。上手くいくこととうまくいかない事の価値は、人生に於いては同等なのだ。リヴタイラーといい関係になれただけで人生薔薇色だと思うが!笑

兵隊やくざ 脱獄(1966年製作の映画)

3.8

だいたいいつもと同じ!終戦期のソ満最前線。立場逆転の混乱の中、将校を並べてぶっ叩く様が爽快。この戦争、敵とは一体誰だったのか?を問う。そして「上等兵殿〜〜っ」。

静かなふたり(2017年製作の映画)

3.6

気になるセリフがたくさんあるからそれほど寡黙ではない。尖ったリベラル思想が見え隠れ。カモメが落ちてくるのは、今そこにある社会問題。世界や愛する人との距離の取り方を小粋に描いてる。

情婦(1957年製作の映画)

4.0

元祖ネタバレ禁止を謳った推理劇。サスペンスユーモアペーソスの配分が完全無欠。まさに「情」婦の心の機微を演じ切ったデートリッヒの凄み。案外この邦題も悪くない(原題:検察側の証人)。

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

4.0

家族というものが、宿命ではいという事を伝えたいのではないか。それをまた感じられた事で個人的にはグッときた。人々の(特にペドゥナ)の悲しみと喜びがこの作品の根幹で注目すべきところ。

血の贖罪(2012年製作の映画)

3.1

地味な印象の配役は絶妙。悩み苦しむ者、世間にまみれる者、現実逃避に邁進する者。チクチクと心臓を刺してくる過去。結末のカタルシスより、贖罪の意識の過程を緻密に描いていると感じた。

恋に至る病(2011年製作の映画)

2.5

こういうポップ?で分かりやすい大袈裟な演技演出でリアリティを損うより、荒唐無稽が過ぎる話につきリアルに振った方が面白かったと思うのだが…。私には軽過ぎた。

戦争と一人の女(2012年製作の映画)

4.0

戦争末期。市民が投げやりな時間を過ごしていた一側面。焼夷弾が落ちてくる様を見て美しく感じる心地。「もっと燃えろ!」。劇中、戦争とは彼女の恋人でもあるだろう。堕落論を文学にすると確かにこれだ。

真空地帯(1952年製作の映画)

3.9

空気を吸っているか?真空地帯を感じる事ができるか?息苦しさを感じ取られなくなったら、取り返しのつかない事態に突入しているのだ。昔話ではない事は、学校や会社を思い浮かべればすぐ分かる。

親知らず(2005年製作の映画)

2.9

ファンタジーのようでそうではない不可思議。何回見ても多分腑に落ちないだろう。極めて現実的奔放な恋愛を描きながらなぜかしんみりほんわりした空気。切実な恋心も伝わってくる。不思議まみれ。

ユリゴコロ(2017年製作の映画)

2.7

なんなら禁じられた遊びの音楽をそのまま使って欲しかった。血という幻想を払拭できない想像力が毎度残念に思う。ユリゴコロは教育なのか環境なのか本能なのか。容赦のない優しさがキーワード。

新・兵隊やくざ(1966年製作の映画)

3.8

3作目にして早くもほぼ兵隊ではない!笑 安定の痛快無比っぷり。天下無敵の娯楽ラブストーリーを堪能。軍批判をこういう形で表現する事の得がたさは、勝新の暴れっぷりが体現している。

ヴァン・ゴッホ~最期の70日~(1991年製作の映画)

3.1

ゴッホの描き方は作家によって違い過ぎる程違う。優男色男部分にフォーカスした人間くさいゴッホを描いた本作。このゴッホはかっこいい!映像にゴッホ的な色彩が少ないのはむしろ新鮮。

華麗なるギャツビー(2013年製作の映画)

3.0

CGや特殊効果は似つかわしくないと感じてしまうのは私が年寄りだからだろうね。狂乱景気の再現は74年版より確かに凄みはある。デイジーとの再会の場面は個人的に頷けないかな。

ポエトリー アグネスの詩(うた)(2010年製作の映画)

4.1

死について、老いについて、罪について。愛すべき家族や隣人の暗部をこれでもかと突き付け、我々の偽善を痛烈に暴く。救われる事はないのだろうが、詩作による贖罪が赦しはある事を教えてくれる。

エンジェル、見えない恋人(2016年製作の映画)

3.8

愛はあるのか。見えるもの見えないもの。社会的哲学的な意味が見え隠れする。透明である事とか盲目である事はそれを伝える方便。極上ファンタジックな味付け。愛を信じたくなる。

フォロー・ミー(1972年製作の映画)

4.1

ミア・ファローと音楽が悶絶クラスにチャーミング。ラブコメのお手本。堅苦しい席に足が向かない彼女に超共感。仕草も態度も愛くるしい。この作品を見ると誰もがデートをしたくなると思うよ。

桜の森の満開の下(1975年製作の映画)

3.8

気がふれるとはこういう事なのか。桜の魔性。どうしてなのか分からない事こそ魔が刺すという事。鬼がやって来たのだ。岩下志麻の横顔が妖し過ぎる。美しさに堕ち呑まれ狂い咲く若山富三郎に打たれる。

続兵隊やくざ(1965年製作の映画)

4.0

毛のやり取りにキュンとする。上等兵殿とのいちゃいちゃにはもっとキュン。大宮の喜びよう!勝新にしかできない愛嬌抜群の暴れん坊。物語の根底には日本軍への凄まじい怨念が。

タイム・オブ・ザ・ウルフ(2003年製作の映画)

3.8

こうやって文明は滅んでいくのだ。社会性人間性が失われていく様。列車の中からの果てしない自然の風景は、希望ではなく世界は人間のものではなくなった事を訴えているようでならなかった。

ラ・ピラート(1984年製作の映画)

2.8

登場人物全員が激情型。徹頭徹尾ハイテンションな愛のバトルロイヤル(誰が生き残るのか!)。痴話喧嘩の全てが詰まっている。キスシーンが激し過ぎて痛そう。バカ映画寸前だが映像とキャストでなんか妙に芸術的で前>>続きを読む

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)

3.1

おぞましい主題ながら物語としてきっちり決着をつけるのは勿体なくも感じるが潔い印象が強い。愛欲と食欲の葛藤!彼女もいかれているが、この大学のいかれっぷりは際立ってます。

人間の條件 完結篇(1961年製作の映画)

3.7

憎しみは人間の心に巣食う膿。傷つくと溢れ出てくる。人間は、どこまでも卑屈にも鬼畜にもなれる。品行方正頑固一徹仲代の悲しみ。彼の存在こそ生き抜くには最大の間違いという絶望。