田舎町ポンポ・ヒルズで暮らす少年・セト。大魔法使いを目指して日々特訓に励むも失敗ばかり…。大切な家畜を逃がしてしまい、住民を怒らせるばかりか、育ての親・アルマからも叱られてしまう。そんなある日、空から怪物・ネメシスの卵が降ってきた。ネメシスを倒せるのは魔法使いだけ。町の人たちを守るため、セトは不在のアルマに代わり、ネメシスと戦うことを決意。しかし、想像を超えるネメシスの強さに、セトは歯が立たず…。
突如現れた魔法使い4人組“ブレイブ・カルテット”。アルマ以外の魔法使いを初めて見たセトは、あっという間にネメシスの動きを封じた彼らに頼もしさを感じる。自分もカッコよく活躍できることを証明したいセトは、リーダーのドン・ボスマン(ボス)に協力を申し出る。その志に感動したボスは、住民を避難させる間、封印が解けたネメシスを引きつけるよう頼む。大役を任され、闘志みなぎるセトは、再びネメシスに立ち向かう!
魔法使いと普通の人間は分かり合えない。アルマに何度教えられても納得がいかないセトは、魔法使いを悪者にさせないため、すべての元凶であるネメシスを全滅させると宣言。ネメシスの巣があるといわれる伝説の地・ラディアンを目指すことを決意する。無謀な目標にあきれるアルマ。セトを諭そうとするも、お互いを大切に思うからこそ、2人の意見は食い違ってしまう。その夜、アルマはセトと出会ったころのことを思い起こす…。
伝説の地・ラディアンの手がかりを見つけるため、アルテミス学院を目指すセト。その道中、魔法使いを取り締まる組織・異端審問所のドラグノフ隊長と遭遇する。何も悪さをしていないセトだったが、なんと魔法使いというだけでオリの中に捕らわれてしまった。脱出を試みるもうまくいかない。困り果てたそのとき、赤毛の少女・メリと出会う。一方、セトを心配するアルマの元には、研究者を名乗る男・ドクがやって来ていた。
魔法使いの街・アルテミス学院。セトは到着早々、アルテミスの一員となるための入院式に参加することに。しかし、そこで学院の創設者であるマスター・ロード・マジェスティから、強引にあるペナルティーを課されてしまう…。アルマの言いつけに従い、セトは最強の魔法使い・ヤガを探し始める。ラディアンの手がかりを得るため、やる気満々のセトとメリだったが、知らず知らずのうちにトラブルを巻き起こしてしまう!
ヤガへの弟子入りを果たすためには、魔法の才能を見せなければならない。セトはメリに教えを請うが、メリは攻撃魔法が苦手でセトが望むものを教えることができない。優しいメリはセトを心配するあまりに性格がひょう変。もう一つの凶暴な性格『クレイジーメリ』が現れてしまう。クレイジーメリは、力とは死ぬ気にならないと身につかないものなのだと、危険で厳しい訓練を強いる。しかし、訓練中にトラブルが発生してしまい…。
ミス・メルバの喫茶店でコーヒーを飲むことがドクの日課だ。穏やかな昼下がり、ドクは急にマンホールから出現した触手にさらわれてしまう。地下水道に潜むその怪物はデビルフィッシュクラーケン。コーヒーが好物で、ドクの体に染みついたにおいに釣られて彼をさらったのだ。セトとメリは救助のために地下水道に潜るが、セトのタイタンパンチですら、怪物の柔らかい体には通じなかった。難航する救出をよそにドクは…。
セトはめきめきと魔法の力を習得していたが、慣れることによって力の扱いも雑になっていた。ヤガはそんなセトを戒めるため、魔法の使用を封じる手袋を着用させ、破ったら破門だと言い渡す。そんなとき、ポンポ・ヒルズで対決したブレイブ・カルテットが、悪事を働くためにアルテミスに潜入しようとしていた。学院の外壁掃除を命じられていたセトだけがそれを発見してしまう。セトは魔法無しで、侵入を阻止しようと奮闘するが…。
新人隊員・ガーヴィスにとって、隊長であるはずのドラグノフの態度はだらしないものに見えており、古参の隊員が信頼していることが信じられなかった。異端審問官らしく危険な魔法使いと戦いたいとガーヴィスは願う。そんな折、エドムンド隊より緊急信号が届く。ネメシスの襲撃で、船が壊れてしまったというのだ。大勢の魔法使いを捕えたエドムンドに、感心するガーヴィス。そのときドラグノフは、ある真実に気がついていた。
セトがアルマのもとから旅立って1か月。アルテミス学院では祭りが開催されようとしていた。にぎやかな雰囲気にセトは胸が高鳴る。マジェスティの思いつきに見えるその祭りは、実は自衛のための資金を集めるためのものであった。最大の注目は箒(ほうき)レース。優勝候補の少年・ニックにアルマのことを馬鹿にされたセトは、彼を見返すため、レースに参加することを決意。アルマから譲り受けた箒にまたがり、セトは空を駆ける。
ドクのもとにネメシス事件についての依頼が届いた。警戒するドクは依頼を断ろうとするが、ネメシスを追いたいセトは強引に出発を決める。一行は轟音(ごうおん)と喧騒(けんそう)の街、ランブル・タウンへと旅立つ。その街では、異端審問官・コンラッドの理不尽な政策によって魔法使いがひどく冷遇されていた。ネメシスと遭遇したセトはこれを捕まえようとするが、そこに全身包帯姿の謎の魔法使い・グリムが立ちはだかる!
セトたちはスラムにある依頼主の家にたどり着く。長男・タジはネメシスの感染者だった。家族は、移民たちの訴えに耳を貸さない異端審問官に代わって調査をしてほしいとセトたちに懇願する。セトたちが調査を開始すると、避難を告げる鐘の音が響く。ランブル・タウンは乱開発により地盤が不安定になっており、街の崩落を避けるために定期的に住民を移動させなければならないのだ。街が無人になったそのとき、ネメシスが現れる!
異端審問官・コンラッドは、ランブル・タウンで起きる事件は移民や魔法使いたちによるものだと大衆を扇動した。恐怖と不安をあおられた人々は、感染者たちを排除するのだと蜂起。それは以前から移民を忌み嫌っていたコンラッドの計画だった。暴徒と化した人々に捕らえられたタジは処刑されそうになるが、間一髪、駆けつけたセトとメリに救い出される。セトは人々を扇動するコンラッドを止めようとするが…!?
セトはドクを人質にされたことで返り討ちにあい、捕らえられてしまう。コンラッドはセトを移民と結託していた犯罪者としてつるし上げ、人々をあおりたてる。移民居住区への砲撃が始まった。セトはグリムの手によって救出されるも、時を同じくしてネメシスが出現、街はさらなる大混乱を迎える。ネメシスを操っていたのは女魔法使い・ハーメリーヌであった。ランブル・タウンの人々を憎む彼女の目的は何なのか?
15年前、感染者である幼いハーメリーヌは、同じ境遇の子どもたちとともにランブル・タウンに幽閉されていた。若きコンラッドは、子どもたちをかばう異端審問官准尉・オクシュマレを手にかけ、これを移民たちによる反逆だとでっち上げる。恐怖した人々は幽閉区画を島から崩落させる。これが15年前の真相だった。ただ一人事件を生き残ったハーメリーヌは復しゅうの機会を狙っていたのだ。悲劇の始まりを知ったセトは…。
巨大なヤリを繰り出す強敵・コンラッド。死闘の末、セトはついにコンラッドを打ち倒す。しかし、ハーメリーヌの手によって街の崩落は始まっていた。攻撃を受けたセトは、吹き飛ばされ意識を失ってしまう。目覚めると、そこにはセトによく似た顔立ちの男が立っていた。ピオドンと名乗る謎の男はセトに問いかける。何のために戦うのか、どの立場の側につくのかと。そして、セトは戦いの場へ急行する。ハーメリーヌを止めるために。
ついにハーメリーヌと相対したセト。ハーメリーヌは「街の住人に救う価値はない」とセトを激しく攻撃する。みんなを守るために魔法を使うセトだったが、自身の過去を顧みて、やがて同じ境遇のハーメリーヌに共感してしまう。魔法使いへの迫害や差別は確かにあった。しかし、決してみずから暴力を振るうバケモノにはなってはならないともアルマに教わった。セトがハーメリーヌにある申し出をした時、異端審問官の軍艦が急襲する!
“野獣”トルク将軍の凶刃によって倒れるハーメリーヌ。激高したセトが戦いを挑むも、異端審問官フォン・ツェペシュに返り討ちにされてしまう。意識を失うセト。しかしその時、セトに秘められていた大きな力が暴走を始める。ツェペシュを一蹴し、意識がないままトルクへと襲いかかる。さらに“山頭”サントーリ大佐も加勢し、激しい戦いが繰り広げられる。街からの脱出を図るメリたちの前に、マジェスティからの迎えがあり…。
アルテミス学院に帰還したセトたちは、異端審問官の不正を暴いたヒーローとして熱烈な歓迎を受ける。しかしセトは、ハーメリーヌのことや自身の暴走を思うと、とても素直には喜べなかった。マジェスティがセトたちをたたえるパーティーを開くも、その悲しみは晴れない。一人ふさぎ込むセトのもとに、アルマが会いに来る。セトを心配するメリが連絡を取っていたのだ。アルマはセトに、ランブル・タウンのタジからの手紙を読む…。
ランブル・タウンでの不正が公にされたことによって異端審問所の信用が失われつつある今、ドラグノフ隊に物資の支援をしてくれる街はなかった。新人兵士は、悪事を働いたコンラッド隊だけでなく、人々を救うために戦った自分たちまで不遇な扱いを受ける理不尽を嘆く。ドラグノフは、正しいと信じた行いであってもいい結果が伴うとは限らないと諭す。一方、アルテミス学院ではランブル・タウンの一件で流通が止まってしまい…。
ヤガが残した手紙から、セトが新たな旅立ちを決意したその時、アルテミス学院に大量のネメシスの卵が降ってくる。魔法使いたちが迎撃するが、撃ち漏らした卵が孤島へと落ちてしまう。そこは今まさにメリがお使いで出向いている場所だった。セトはメリを救うために急行し、卵からかえったネメシスと戦う。あまりの強さに、追い詰められたセトは再び力を暴走させてしまう…。制御できない己の力に恐怖するセトは、ある決断を下す。
©2018 Tony Valente, ANKAMA EDITIONS / NHK, NEP