滝和也

伝説巨神イデオンの滝和也のレビュー・感想・評価

伝説巨神イデオン(1980年製作のアニメ)
5.0
聞こえるか
聞こえるだろう
遥かな轟き!

イデオンガン
重力加速機始動!
バイオニックコンデンサー
上がってる!
行けるぞー!コスモ!
パワー89!
イデオンガン発射!

裂ける時空!惑星すらいや銀河すら破壊するイデの力。その凄まじき力が呼ぶ、愚かしくも、破滅的な結末。自らが作りしガンダムへの強烈なアンチテーゼをみせ、人の不寛容と言う監督の本音を叩きつけた真の傑作。

「伝説巨人イデオン」

地球人のソロ星への宇宙開拓移民が進む中、巨大な宇宙船と3つのメカを地中から発掘した。その頃異星人バッフ・クランは無限力、イデを求め、ロゴ・ダウと呼ばれた星へ調査団を派遣していた。ロゴ・ダウとはソロ星であり、2つの異文明が接触することとなる。互いを異星人と呼び、些細な事から戦闘が開始され、戦力に勝るバッフクランに対して、地球人は第6文明人の遺跡としたその船に避難をする。そしてイデのゲージが輝き、3つのメカが動き出し、合体、巨神と化した…。バッフクランの兵器を蹴散らし、巨神は船と共に宇宙へと舞い上がる…。

無限力イデを手に入れるため、ロゴダウの巨人イデオン、ソロシップを追うバッフクランと生き延びるため戦い、逃げ続けるソロシップの地球人。と言うロードムービーでありバトルアニメだが、中身は人のエゴ、不寛容を叩きつけてくる、とてもお子様には見せられない様な強烈な内容。

重機動メカを筆頭に凄まじい軍事力を持つ戦闘国家バッフクランが追っかけてくる訳なので、途中の開拓惑星に逃げ込めば惑星ごと壊滅させられ、同じ人類でも助けてくれないし、助けたとしても屍累々となり、終いには母星である地球にも見捨てられると言う有様。ザンボット3の神ファミリー以上の酷い扱いを受ける…。

更に…イデオン自体が第6文明人の意志の集合体である無限力を遺憾なく発揮し始める後半は星ごと叩き斬るイデオンソード、ブラックホールのエネルギーを叩き込む波導ガンと最早環境破壊のレベルではなく、大銀河を破壊する戦争へと進む。

何度もわかり合い、戦いをやめる機会がありながら、人が背負う業、国家対国家ではどうにもならない事象があり、転がる石の様に破滅へと転落していく、凄まじいドラマであり、富野由悠季の本音である人はわかり合えないを象徴する最高傑作と呼べる作品です。

その凄まじき展開故に打ち切りとなるのですが、その後映画版にて完結します。その発動編の凄まじさは筆舌に尽くせないレベル。そちらは前にレビューしています。

ただこの作品、このシナリオ、プロットの凄まじさがよく語られていますが、実はバトルアニメとしても傑作。30分番組でしたが、どの回もバトルシーンが実はほとんどなんです。まぁドンパチが長い。楽しませてくれます。

伝説の巨人であるイデオン自体はデザインがダサ過ぎるのですが、その恐ろしいギミック故に名シーンを次々生み出してしまいます。その破壊力はスーパーロボット大戦をやった方ならわかりますが、並ではない。イデオンガン、イデオンソードは星ごと破壊しますし。ダイナミックな作画による迫力がまた素晴らしい。しかもこれ、好きな時に使えるわけではない。イデのゲージが上がらないと使えないし、上げる方法もわからない。まぁ純粋なるものの自分を守りたいと言う心には反応するみたいですが、わからないから途轍もないピンチを呼ぶわけです。バッフクランもそんなことは知らないので兎に角強烈な対策で何とか倒そうとエスカレートし、更に凄まじき力で跳ね返すと言う繰り返しでバトルも行き着くとこまで行ってしまう。

イデオンの通常兵器も見せ場を作りまくる。第6文明人は巨人であり、かつ謎のエネルギーで動くのでイデオンは中身スカスカ。そこにミサイルランチャーが山ほど積まれていて、周りを囲まれても、ハリネズミ並みの全弾発射で対抗。糸を引いて飛ぶミサイルはマクロスで確立した板野サーカスの実はハシリ。またこの全弾発射をカミューラ・ランバンアタックとも呼びました。

イデオンは当然ワンオフの機体ですが、敵は完全に量産されてます。後半は対イデオン用のワンオフ機も出ますが…。これが魅力的なんですよね。重機動メカ。宇宙戦争に出てきた3脚型のバトルポッドをイメージして下さい。またはヤマトよ永遠にに出てきた掃討3脚戦車かな。人型じゃないんですよね。ギラン・ドゥから始まりドグ・マック、ジグ・マック、ロッグ・マック、ガンガ・ルブとガルボ・ジックと…。イデオンも100メートル超えなのでどれもデカい。その中にあって実は一番怖いのが小型のアディゴ。とは言えモビルスーツよりデカい。これが中々手強くて好きでした。イデオンのパイロットを二人殺してます。加粒子砲に足が着いたデザインなんですが、素早い動きの上に、数が大量。イデオンの全弾発射も避ける強敵でした。

キャラクターも皆人間臭い。エゴもあれば情も愛もあり、人と言う生き物をある意味誠実に描いています。ベスとカララの種族を超えた愛、ギジェとシェリルの寂しさと心の隙間を埋める愛が印象的でした。また裏切り、背徳、嫉妬と言う負の部分も惜しみなく叩きつけてくる大人のアニメでもあったのは言うまでもありません。

イデと言うある種神である存在を通して人の愚かさ、そして愛を問う、正に富野由悠季が神として君臨した作品。ビデオに収め、何度となく見た思い入れある作品でもあります。劇場版と合わせて是非是非ご覧下さい。
滝和也

滝和也