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Vivy -Fluorite Eyeʼs Song-のnamikiriのネタバレレビュー・内容・結末

Vivy -Fluorite Eyeʼs Song-(2021年製作のアニメ)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

物語は一見すると、シュタインズゲート(ゼロを含む)のようなディストピアを防ぐために、Vivyが奮闘するSFアクションと歌を織り交ぜたエンターテイメント作品のように見える。

でも、この作品は実はもっと別のテーマ性を秘めていると気づいて、そこで作品の評価が上がった。

ここからネタバレします。😄
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AI達が自分の使命を全うする姿はカッコ良く、気高さすら感じる。

しかし、それだけならエステラやDIVAが主人公でもいいじゃないかと、最初は違和感を持っていた。特にエステラ回がかなり好きなので。

そんな折、たまたま見た特別総集編と「Fluorite Eyeʼs Song」がそのモヤモヤを晴らしてくれた。

確かに、使命に殉ずるエステラやDIVAはカッコ良い。しかし、その使命は人間に与えられたもので、だからこそ葛藤せず、決意というものが要らなかったと考えることもできるなと気づいた。

一方でVivyは、闘いを続けながら、守れなかった命を見送りながら、停止するほどの無力感に打ちひしがれながら、葛藤し続ける。その姿はカッコよくはないかもしれないが、実に人間臭いではないか!

歌えなくなったVivyは、最後の闘いの前に吹っ切れたように、ふと思い立ち、自分の心のありのままを詩(ウタ)に込める。

Vivyは多くを語らず、もう一つの任務を果たして、その生きた100年は蛍火が消えるように静かに儚く消えていったように見えた。

しかし、彼女は遺した詩の中で自分の葛藤する胸中を叫び続けていた。

「私は何のために歌い、何のために闘い、何のために生きるのか?」

それは、この作品のタイトルにもある
「Fluorite Eye’s Song」の詩に込められている。

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ここからは私の詩の解釈なんだけど、人生に決まった最期なんかどこまで行ってもない。けれど、人の幸せのために自分の命を投げ打ってでも、人を守りたいと願ったVivyの気持ち。これは「使命」ではなくVivyが葛藤の末に出した「決意」で「死生観」に近いものだったように思う。

Vivyの最期は儚く見えるが、実は彼女にとっては満足のいく最期で、鮮やかに彩られていた人生だったのではないかと思っている。

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【タイトルに対する考察】

・Vivyは、フランス語のVive vie から来ているのかなと。鮮やかな一生という意味と人生万歳!という人生への賛美の意味があるように思えた。

・Fluoriteは、蛍石でVivyの目や儚さを感じさせる。また、「蛍の光」の歌から終わりを感じさせる。対して、Vividは鮮やか。

・ヴィヴィー(Vivy)は、(Lily)リリー(百合)の韻を踏んでいるようにも。そこから発展して、lyricは、歌劇。叙情詩などイメージが膨らむ。

・Eye’sは、AI’sとのダブルミーニング。

Vivyの生きてきた100年の闘いの鮮烈さ、儚く消えていく瞳のコントラストに、美しさが感じられた。彼女は妹達の死と自分の最期を予感して、その記憶こそ生きる意味と言ったのかもしれない。

【SFである意味】

・使命が1つというのは、「2001年宇宙の旅」のHALが、仲間に知らされていない秘密を背負ってしまったが故に狂うところが原典にあると思われる。

・人生100年時代と言われる今、Vivyの100年は決して長くはない。人の死生観そのものがテーマの作品は重くなりすぎるので、それをAIに置き換える事でちょうど良いバランスを狙ったものと思われる。こちらのテーマに気づいた人は少ないように思えた。

【個人的感想】

長月さんは、ノベルゲー(18禁含む)の影響を強く感じる。今回のVivyは、田中ロミオさんの「加奈 〜いもうと〜」のようなイメージを感じた。僕的にはかなり印象に残る作品で、あの歌も印象的だったので。

AI達のそれぞれの生き様を歌で表現するというのがこの作品のコンセプトだったのだと思っている。妹達を看取るというのは重いテーマなので、そこのバランスが作劇上、難しかったところだと思う。

個人的には、中終盤のメリハリと序盤のモモカの掘り下げがもう少しあるとよりよく感じられたと思う。

特にモモカが「Vivy」と名前をつけた事と彼女を救えなかった事が話の起点になっている。それが彼女を葛藤させつつも、本来の使命と関係のない闘いを続ける理由だと思えた。

話のテンポを保ちつつ、ここに厚みを持たせて欲しかった。「Fluorite Eye’s Song」の歌詞の中にある「あなたのため」に違和感を覚えてしまった。曲自体は、すごく気に入っている。

モモカが「Vivy」という名前を与えるのは出来過ぎていると思うが、私は天使ガブリール😇がドロップアウトせず、モモカになり変わって(両方ともCV: 冨田美優)「Vivy」という「名前と心」を「祝福」として与えたと考えると面白いと妄想している。

この作品をもう少しブラッシュアップした劇場版があれば見てみたい。
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