シズヲ

メガロボクスのシズヲのレビュー・感想・評価

メガロボクス(2018年製作のアニメ)
3.8
『あしたのジョー』連載開始から50周年を記念して製作されたアニメ。オリジナルはあくまで原案とし、『AKIRA』辺りを彷彿とさせる近未来的サイバーパンクのボクシング物として昇華されている。ストーリーや世界観そのものに強い個性がある訳ではないけれど、強化外骨格のようなギアを装着してリングに上がるボクサー達のビジュアルはやはり視覚的なインパクトがある。作画的にも安定しているけど、メガロボクスの演出はもうちょっと派手にしてくれても良かった。mabanuaの手掛ける音楽は終始クール(要所要所のラップはよくわからないけど)。

主線がハッキリした荒々しいタッチが良い意味でマンガ的で実に格好いい。往年の面影をどことなく残しつつ、現代向けにブラッシュアップした味わいがある。前述したように世界観そのものに目新しさは無いけれど、貧困街の雑多なビジュアルに加えて『あしたのジョー』をサイバーパンク的なアイデアで再構築した着想は面白い。主人公のギアレス・ジョーはストイックに筋を通す男で実に格好良いし、細谷佳正の好演も含めた彼の魅力が作風の男臭さを強調している。ジョーを支える傍らで過去と対峙し成長していく南部のオッサンも“真の主人公”のような味があり(「もう立つな!」から「立つんだ!」への変化よ)、二人の間を取り持ってチームを作り上げるユキオも憎めない。チーム番外地はある種の疑似家族めいている。ストーリー的には二期と比べると王道のサクセスストーリーで、勇利(目元が時折力石っぽくなるのが良い)という目標の提示も含めて率直な内容になっている。

ジョーが序盤でギアを放棄してしまうのは折角のギミックをふいにしてる感が確かに否めないが、最終決戦でメガロボクスがボクシングへと変わる構図が生まれるので嫌いではない。とはいえギア特有の戦いをもうちょっと演出などで掘り下げてほしかった気持ちはある。カタルシスに関しても意外と中途半端なきらいがあって、“ギアの無いジョーが強敵に打ちのめされた末にギリギリの勝利を掴む”みたいな構図が良くも悪くも多い印象。散々殴られた上で勝負はあっさり決まる感が否めず、フラストレーションの解消としてはちょっと物足りなさがある。“過去の経歴を洗い出されてチーム解散の危機”を描いた次のエピソードで“南部の借金に関する思惑でチーム解散の危機”を描くような構成もちょっとスッキリしない。

色々と引っかかる部分も多いけど、近未来サイバーパンク×ボクシングという設定や泥臭さに溢れたタッチ、登場人物の造形によってトータルでは十分楽しめる。ジョーと勇利のライバル関係が“ボクシング”へと集約される終盤の展開はやはり格好良いし、二期の変化球的な導入部と比べると全体の大筋もシンプルで分かりやすい。海外人気の高い作品だったらしいけど、この結末からあの二期へと向かうのは思い切りが良すぎる。
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