シズヲ

ポケモンコンシェルジュのシズヲのレビュー・感想・評価

ポケモンコンシェルジュ(2023年製作のアニメ)
4.1
オ……オデも……ポケモンリゾート……行きたいど……(知能は低いが心優しい巨人)遥か昔の少年時代以来ポケモンには触れてなかったけど、ビジュアルが可愛かったのとストップモーションアニメが好きなので視聴。リゾート地で“ポケモンのお世話をするコンシェルジュ”として働くことになった社会人の緩やかなドラマ。舞台となるポケモンリゾートの世界観、南国の観光地のようなディティールも含めてとても良い。主人公の相棒としてコダックを抜擢しているのが本作の緩やかさを象徴している。

ポケモンの種類を絞ることなく多数登場させたうえで、アクションやビジュアルにおいてそれぞれの個性をきっちり違和感なく表現しているのが凄い。さりげなくやっているけど、この数のポケモンを用意してストップモーションでそれっぽく動かすことの労力を想像するだけで感嘆させられる。体毛があるらしいポケモンはフェルトで作られていたりなど、制作側が拘っているであろう質感の差も可愛らしい。主人公のハルさんを始めとする人間側のキャラクターも、良い感じにデフォルメが効いてて好き。のんさんの素朴な演技も飾らない愛嬌があって良い感じ。全4話20分構成ということもあり、過不足のないテンポによってユーモラスなアニメーションを維持している。

本作のテーマ性や主人公であるハルさんの造形、今更ながら現代におけるポケモンという作品の立ち位置の一端が伺えるので興味深い。「6年半付き合ってた彼氏と別れた……」で幕を開けて日々の仕事やストレスに追われていたハルさんの姿は、非常に分かりやすく“現代の若手社会人”の造形である。『スタンド・バイ・ミー』のイメージが根底にあるらしいポケモンだけど、もう“子どもの冒険”という枠組みだけに留めなくても良いのだなぁ。ここ十数年でサブカルチャーが如何に普及し、ポケモンというジャンルが如何に大衆化したのかが垣間見える。

社会人として右往左往していた主人公がポケモンリゾートという新天地に赴任し、のびのびとした時間の中で“ロールのしがらみ”から解放されていく。「もう急いで起きて朝のメールチェックに追われなくてもいい」という主旨の台詞や役割に囚われずに個性を尊重していく姿勢などからして顕著だけど、とても現代的な理想像に溢れている。仕事という体裁で描かれているものの、社会からの緩やかなドロップアウトめいた趣がある。そのうえで本作はオーソドックスな筋書きに留めつつ、あくまでポケモンを中心とするビジュアルの可愛さを主体にしているので適度な塩梅を感じる。
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