maro

デジモンアドベンチャーのmaroのレビュー・感想・評価

デジモンアドベンチャー(1999年製作のアニメ)
5.0
 ストーリー:★×20
キャラクター:★×20
    映像:★★★★★
    音楽:★×100

『デジモンアドベンチャー』シリーズ第1作目。
僕が観てきたアニメの中で5本の指に入るであろうほど好きな作品だ。
子供たちの成長譚としてこの上ないほど夢と冒険とロマンに満ちている。

リアルタイムで観ていたのは中学3年生のときだろうか。
当時は受験生だったし、アニメ自体から離れていたこともあって、ちゃんと全部観れてはいなかったと思う。
大人になってから観て思ったのは、これは決して子供向けの作品ではなく、大人になった今観ても十分に楽しめるということだ。

選ばれし子どもたちがデジタルワールドという異世界に飛ばされて、そこでパートナーデジモンたちと共に世界の歪みを正す冒険をするのだけど、これがまた子供が経験するにはあまりにも辛すぎることの連続なのだ。
ただでさえ、子供たちだけで生活環境の整っていないジャングルのようなところに放り出されるという恐怖。
そこではガチで彼らの命を狙う凶悪なデジモンたちがいるばかりでなく、冒険の途中で多大な犠牲を払い、目の前で仲間の死に直面することもしばしば。
そんな中で主義や方向性の違いから起こる対立や葛藤。
小学生のときにこんな経験をしたら、その後の同年代の人たちなんてすごく幼く見えてしまいそうだ。

そして、大人になってから観て面白いのがこの対立や葛藤の部分だ。
各キャラクターそれぞれに長所と短所があって、それが人間ドラマを引き立てている。
正義感が強く、リーダーとしてのカリスマ性もあるけど、少し無神経でひとりで突っ走ってしまう太一。
いつも冷静で仲間想いだけど、時に感情的になり極端な行動に出てしまうこともあるヤマト。
面倒見がよく、みんなを優しく包み込むけど、すべてをひとりで抱え込んでしまう空。
知的かつ理論派で、みんなが進む方向の道標となってくれるけど、ひとつのことに集中するとまわりが一切見えなくなってしまう光子郎。
根は誰よりも優しいのに、天真爛漫で素直がゆえにわがままに見られがちなミミ。
真面目で責任感が強いけど、最年長の自分が何とかしなければという想いが強くて空回りしたり、優柔不断なところも目立つ丈。
少々泣き虫でお兄ちゃんっ子だったけど、旅を通じて逞しく成長していったヤマトの弟のタケル。
普段は元気な女の子だけど、時に神秘的な雰囲気を漂わせる太一の妹のヒカリ。

しかも、彼らの性格は家庭環境も影響しているっていう大人向けのドラマのような設定も見どころだ。
例えば、太一はヒカリに過保護なところがあるんだけど、それはかつて自分が病気のヒカリを外に連れ出してしまい、病状を悪化させた過去があったから。
ちなみに、病院から帰ってきたヒカリが「お兄ちゃん、ごめんね、ちゃんとボール蹴れなくて」と言ったところは心がズキンときて涙が出た。
ヤマトは両親が離婚してタケルと離れ離れに暮らしているがゆえに、実は人一倍寂しさを抱えているのに、それを表に出さない。
空は愛情の紋章を持ちながらも、一時期みんなから離れているときがあったんだけど、それは華道の家元である母親との確執が原因で、自分の愛情を信じることができなかったから。
他にも、光子郎は両親の実の子供でなかったり、丈は医者の家系だから半ば強引に勉強をしていたりと、みんなそれぞれ事情があるのだ。

こういった長所と短所が長い冒険の中で、時に調和を生み、時に軋轢を生むところにすごく人間らしさが出ていてよかった。
だからこそ、仲間と交流するうちに「自分はこのままでいいのか」という葛藤にも苛まれ、人間として成長していったのだ。
中でも第45話以降、各キャラクターが自分の想いを貫くために別行動をとるところなんか、小学生にしては随分と大人っぽいことするんだなと思った。
まあ、ヤマトはだいぶわがままにも見えたけど(笑)

そんなヤマトが第51話で、葛藤の末に自分の道を見つけられたところは印象に残る。
己の弱さ(=本当はずっと寂しかったこと)を素直に認めた上で、それを解決する手段(=仲間が側にいること)があったからこそ、暗闇から抜け出せたんだよね。
パートナーデジモンのガブモンがそれに気づかせてくれた。

あとは、けっこう泣かせる演出が多いんだよね、このアニメ。
個人的には、第13話でパタモンが初めてエンジェモンに進化するところが最初に泣いたところ。
パタモンって他のデジモンよりも成長が遅いところがあるんだけど、この進化で一気に挽回して窮地を脱することができたから。

第21話も印象的な回だ。
演出が細田守となって、他の回とかなり異なる作風だったのよ。
BGMも『ボレロ』がメインとなり、劇場版1作目と似た雰囲気で。
最後に太一がヒカリに別れを告げてデジタルワールドに帰っていくところがちょっと泣けたんだよね。

第26話で、バードラモンが初めてガルダモンに進化するところも泣けた。
先に書いた、空が自分が愛情の紋章を持っていることに悩みながらも、その紋章がついに光るところで、ようやく報われた感じがしてほろっとしたんだよなあ。

第37話で、ウィザーモンが犠牲となり、テイルモンが初めてエンジェウーモンに進化するところも涙なしには観れない回だ。
やっぱり感情の高ぶりからの進化シーン(およびそこで流れる『Brave Heart』)はね、、、鉄板の感動ポイントだよ。。。

他にも、第47話のレオモンが死ぬシーンや、先にも書いた第48話の太一とヒカリの過去のシーンなんかは泣けるんだけど、やっぱり第54話の最終回が一番泣いたかな。
別れが辛くなるからミミに顔を見せないパルモン。
そんなパルモンが最後の最後でミミを見送りに来たときに、ミミの帽子が風でぶわっと舞い上がり、そこで『Butter-Fly』のアレンジバージョンが流れる演出が神がかっていてね。。。
なんか泣いてばっかだな(笑)

そんなわけで、夢と冒険とロマンが詰まった最高のアニメ。
モンスター系のアニメは他にもあるけれど、デジモンほど人間とパートナー関係を結べている作品はそうはないかもしれない(『ポケモン』はパートナーというより、人間が使役しているって感じだし)。
だからこそ、子供たちとデジモンたちとの友情を超えた絆に、興奮と感動があるんだと思う。
これはもう絶対に観てほしいアニメです。

(2023.10.7再鑑賞)
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