たも

最果てのパラディンのたものレビュー・感想・評価

最果てのパラディン(2021年製作のアニメ)
5.0
 途中で時間を空けずに一気に観たい派として2期が無事に放映終了したのを見計らって初見で1期を一気見した。

 まずこのレビューを書くに当たって今の心境は、本当に心の底から2期を観たくてウズウズしていると同時に、原作がなんなのか調べたいのと(おそらくラノベだけど)原作者の先生がどんな人物なのかを知りたいって気持ち、それとついでにこの作品の平均スコアが3という事実に目を見開いて驚きを隠せないほど動揺している。

 たしかにここ数年ずっと流行りの可愛いマスコット的な使い魔とか可憐なヒロインとか麗しいお姉様とかお色気とか俺つええ無双系を売りにしてる訳じゃないしその他諸々の刺激慣れした作画やら動きが多いヒット要因に繋がる分かりやすさは少ないと観てる途中に感じたけど、いや、まさか、こんなに想像力を掻き立てられる物語が正当な評価を貰えていないなんて、世の中は捨てたもんだと思っている。

 個人的に転生物の作品として最高の作品を更新した。
 転生物作品のメリットとして、まず主人公の出生など細かいプロローグをかっ飛ばせるところ(最初から面白い場面で物語を展開できる)、セカンドライフだから凡人を最強にできるところ、話の構成がめちゃくちゃ楽になって誰でも簡単に話を作れるところがある。
 この作品は転生物なのに簡単に真似ができないほど世界観と人物が噛み合っているし、唯一無二のところまで昇華されている。
 本当にこの作品が好きだ。登場人物に無能もいないし悪意のある頭の弱い愚か者も登場しない。その時点でも評価が高い。
 正直初めは、ああ、はいはい転生物ね、わかりましたよって。って感じで(つまらない転生物をいくつも観たから)門前払いしたいような気持ちになっていたけど、本作に関しては1話観ていくたびに作者の知見と善意と隠せないほどのこの作品への愛が透けて伝わってきた。
 初めのうちは設定もありふれていて大した作品には思えないから舐めていたのがこれだけ評価を上げた要因かもしれないけど、登場人物の吐くセリフがとにかく正当で魅力に溢れている。

 神の加護を力に変えるドワーフエルフの存在する剣と魔法の王道ファンタジー。まずこの使い古された古典の王道をモチーフにする辺りがもう絶対にこの世界が好きなのが分かってしまうし、村の統治やお金の回し方から民俗学やらの宗教も学んでないとこんだけスムーズな物語の展開はできないと思う。これだけ才のある方が筆を握ってくれたことを灯火の神に感謝したい。少なくとも俺には到底真似のできないディテールをいくつも表していた。
 例えばメネルドールがグールになった村人の子供と遭遇して怖気付いてしまったところをサッと起点を効かせたウィルに助けてもらうシーン。そのすぐ後にお礼を出来る人間性でメネルを好きになった。その後に恩人にエルフの長寿は辛いと弱音を吐いているところは万人には理解できないだろうけど、世界観を表すのに一役買っている。そのほかにも何度も予想を裏切られて感銘を受けたし物語や人物の心境をうまく表していると感じるシーンが多々あった。

 そして何と言ってもキャラクターが魅力に溢れている。今まで見てきた異世界転生ものの主人公の中で一番好きな主人公だし、その3人の師匠も全員かっこいいし、仲間も一人一人余すことなくみんな最高だった。不死の神と封印されてるイカれた強さの敵も魅力的だと思う。敵が強すぎてベルセルクを連想するほど強すぎると感じたしどうやって倒すのか純粋に気になる。

 話の内容は多少難しめだけど描いてるテーマは師弟愛、家族愛、友情やら分かりやすいのも良いところだと思うし素直に感動した。早く2期が見たいけど13話しか見れないなんて……。今のところこの作品がつまらなくなることはあり得ないと断言できるほど完璧な作品だと感じている。変に大衆ウケを気にするのだけが不安だけど、これほど作品を愛している人が物語を愚弄するとは思えないから安心か。
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