たも

最果てのパラディン 鉄錆の山の王のたものレビュー・感想・評価

5.0
 作風も物語も作者の思想も全て好きだ。つまらない小細工がなくて分かりやすい大衆ウケに走らないところも心の底から賞賛を送りたい。ヒロイン不在でおっさんを従者にして鍛えてる映像なんてどこの誰に需要があるのか分からないけど完全に俺得だった。ウィルが技を教えることにブラッドの面影を見るところとかリアリティしかないし、一般市民とかモブと会話する時でさえウィルはパラディンの名に恥じない聖人として対話してるようだった。細かいところに光る設定をまま見かける。詩人のビィと賢者のガスをウィルが中継ごうとするところとか、その発想だけでもワクワクして仕方がない。ビィの詩を余すことなく全て聴きたいくらいにはこの物語の世界観に陶酔してる。

 あえて悪いところを挙げるとしたら、他の作品を引き合いに出すのは心苦しいけど、他の良いとされている異世界転生ものとこの作品を比べると圧倒的にテンポが悪いと思う。けどそのテンポの悪さも卓越した美しいセリフや、一言一言発してからその言葉を噛み砕いて返答して、っていう律儀さから来ているから一概に短所とは言えず、俺みたいに好きな人にとっては長所たらしめている。ただ、時間をかけすぎていることも否めないから、一期の時のように戦闘や会話にも心が躍るなにか世界観の落とし込みみたいな要素があるとこの上なく嬉しかった。一期とは制作会社が変わっているようだから当然監督も脚本も変わっているんだと思うけど、単純に世界観と映し方が素晴らしい。
 新しい要素としてはウィルが既にガスと同等のチート級の魔術に長けていることと神様が他の人と話をすることと防御壁の助力ができることくらいだったと思う。呪いは制約があるとしても、あれだけの魔法を使うとインフレが加速してしまいそうだ。せっかく本格ファンタジーが最大の売りだからそこが懸念点ではある。
 竜との戦闘は素人目に見ても会話が挟まりすぎだし強大な敵だというのは十分に分かるからこの時だけは大衆ウケを狙って場面転換とか演出を加える手心が欲しかったと思う。洞窟崩せば竜の勝ちやん、ってツッコミ入ったらどうするんだろうと思ったけど、酒を寝かせるためにという慢心もあったし竜は負けて然るべきか。

 全く話は変わるけどスカイリムはあまりの自由度の高さで最後までやりきったと思えるまでプレイできたことがないけど、この話の内容をそのまま移植してRPGができたらとんでもなく相性が良さそうだし面白そうだと思う。きっと実現しなそうだけど、この作品が題材の本格RPGやりてえなあ。
たも

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