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青の6号のmitakosamaのレビュー・感想・評価

青の6号(1998年製作のアニメ)
3.9
個人的には今作はもっと高く評価されて然るべき作品だと思ってる。
確か1話の初見は九段会館での完成披露試写会のはず。アニメーションがデジタルに移行する時代であり、今作とブラッドザラストバンパイアは、日本のアニメデジタル化の指針を示したパイオニアだと定義して良いと思う。2Dと3Dとのマッチングに活路を見いだした日本独自のアートスタイルは、この2作が確立させたものだ。何より今作によってゴンゾは正に時代の寵児となったのだ。

もう四半世紀経つが、映像作品として未だ色あせない。もちろん映像的には今ならもっと上手に出来るだろう。それでも今作はオーパーツ的な完成度の高さを誇る。
実際、初見でビックリしたのが“水”をモチーフにしたことだ。本来なら表現が難しい“水”は実験的要素の強い作品なら避けるべきハードルの高さだ。だが今作はデジタルアニメの初期の初期なのに、勇敢にも水の表現にチャレンジしてる。

物語はと言うと、退屈だという意見も多いようだが僕はとても楽しかった。
“悪の天才科学者ゾーンダイク”により海洋系のミュータントが大量に作られ、人類との生存戦争が起きている時代。南極を拠点にポールシフトを起こし人類を殲滅させようと目論むゾーンダイクと、核攻撃も辞さない人類側の潜水艦艦隊・青。
青の6号の紀之真弓は、かつてのクルーだった速見を説得し共に戦う。

速見はかつての同僚とのトラウマから船を下りたが、再び覚悟を決めゾーンダイクに対峙し対話を試みる。

まずゾーンダイクが特徴的だ。改造人間による世界征服というと仮面ライダーのショッカーを思い浮かべるが、むしろ今作はHGウェルズのDr.モローの島だ。
かつて内戦により家族を失ったことがゾーンダイクの行動原理とのことだが、セリフだけで、その内戦に関する描写がなかったことはちょっと残念。

だがゾーンダイクと速見という、敵味方共に厭世的な2人が対話を試みるという展開はとても良い。今作って今の時代の方がシンパシーを受け入れやすいんじゃないかな?

村田蓮爾のキャラデザも山下いくと達のメカでザも魅力的。マヒローの演出力もゴンゾ随一だと思う。
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