演劇に魅せられた少女たちが世界クラスのスター=ワールドダイスターの座を目指す青春群像劇。物語の進行と共に様々な演目が用意されており、実力派声優たちの演技を目にするだけでも観ていて楽しかった。だが作品が魅力的に映るが故の物足りなさを覚えたのも事実であり、TVアニメーションのフォーマットに適していたかはやや疑問が残る。と言うのも、メディアミックスの特徴からか多くの劇中歌が披露されていたが、これによって本来重視されるべき演劇の演技が影を潜めてしまったようにも思えたからだ。更には作品独自の異能力(=センス)も設定に加えられており、早い話が1クール=12話で消化するにはごった煮で駆け足な印象を持った。では失敗作だったか?と聞かれると決してそんなことはなく、主人公ここなの演技の才が開花する契機となる静香とのエピソードは感動的で目を引くものがあったし、センスである彼女といちいちシンクロした動作を見せるのも、アニメーションの特性を生かした表現でとても面白く感じられた。それにしても誰もが知る「オペラ座の怪人」では、まさかアンドリュー・ロイド・ウェバーの「Overture」が流れるとは思わないが(版権の問題もあるしね)、現代的でアニソンライクなポップスを背景に演出と迫真の演技でここまで質の高い演劇が表現できるのかと驚かされた。キャラクターも魅力的だったし、やっぱり全体の尺が足りてないよ、この作品。