きゅうげん

GAMERA -Rebirth-のきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

GAMERA -Rebirth-(2023年製作のアニメ)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

待ちに待った令和ガメラ!

昭和ガメラの「子供の味方」らしさは、キング作品っぽい・スピルバーグ作品っぽい80‘sな青春ドラマへ昇華されています(エンディングのしっとりしたガメラのマーチもいい味)。
かつ平成ガメラらしい生々しくえげつない怪獣バトルも忘れてません。バトルフィールドやシチュエーションが限られるとはいえ、各怪獣との対決は趣向と工夫を凝らしたCGバトルになっていますし、そもそも新生歴代怪獣の造形がどれもかっこいい。
特にやっぱりグロキモな新ギャオスと、深海らしく壮麗でクールな新ジグラが最高。
それに、月面基地計画とか古代人の人類選別とか人身供儀の幼児虐殺とか『ムー』もかくや、という諸要素で個人的にはもうニッコリ。


ただしかし、日米両陣営の政治的・軍事的駆け引きとか、陰謀めぐらす財団の内部闘争とか権謀術数のサスペンス部分が浅く薄くボンヤリで、ハードさには欠けるものが……。その割を食ってタザキさんとエミコさんのキャラの機微が煮え切らないし、オズボーン将軍の命令内容は現実感がないし、意味深長な佐々木大隊長もよく分からないし……。
広げたアイデアの風呂敷を上手に片づけられたとは言えないかも。
てかそもそも、令和にリメイクするなら令和のストーリーにしてよ!
80年代らしいドラマのために舞台を80年代にしても、設定が80年代らしくないから没入感・説得力が削がれます。
それこそ内憂外患で激動だった1989年当時の歴史的な出来事を盛り込めば、政治面・軍事面の作劇にも厚みが増すし、最先端超科学やオカルト考古学などの『ムー』的なエッセンスにも適ったでしょうに。

展開についても、終盤のジョー君の自己犠牲はドラスティックな“あるある”とはいえ突拍子なく、あの場面は成長し覚醒したボコ君が『アルマゲドン』的犠牲を払うも、駆けつけたガメラが助けてみんな生還……の方が作品のテーマに沿いつつ丸く収まる気がします。
ジョー君が死んだのか生きてるのか、という気疲れは起伏の激しいクライマックスにおいてノイズでしかないし、必要性の薄いCパートの目配せにしかなりませんし。


くわえて看過できないのがCGアニメーションとしての問題点。
「フレームレートをあえて落とす」という技は近年主流の表現ですが、それにしてもみんな口はパックパクで体がカックカク。ヌルヌルなプロレスをみせる怪獣パートに対して人間パートは紙芝居かってくらい。
それとこれは日本製CGアニメ全般にいえますが、人を捌き切れていない! 
3Dモデルを動かすCGアニメの演出手法は、どちらかといえばアニメというよりも演劇。市街地での避難誘導の場面とか潜水艦の発令所の場面とか、モブキャラかメインキャラかに関わらず画面内の人物が手持無沙汰すぎて画そのものがモッサリまぬけに観えてしまいます。
終盤も終盤、復活したガメラを見守る崖上のボコ君のボ~ッとした一瞬が映るワンカット、実写映画だったら完全にアウトでしょう。

無理に演技をつけなくても、最近の『スパイダーマン』シリーズのようにマンガチック・イラストチックな動く一枚画の構築に注力する……ってほうがイイのかも知れないですね。
日本のアニメ産業も近頃かなり3DCGへ舵をきってきましたが、固定観念・既成概念を覆すような、アニメーションとしての表現の進化はお預けが続いてる気がします。
ネトフリ版『ウルトラマン』の最終シーズンまだ観てないんですが、同じ轍を踏んでるんでしょうか。
う~ん……。