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新機動戦記ガンダムW Endless WaltzのTheCharacterのレビュー・感想・評価

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3話で纏まる話ではない。日数としては2~3日くらいの出来事なんだろうか。テレビシリーズですら登場人物の背景の補強は十分ではなかった。しかし、じっくりと物語の本筋を辿ることができたため、それらは前向きな余白として存在したのである。本作では主人公5人の過去が描かれるが、唐突に本編へ挿入されるため時系列が分かりにくい。その上、じっくりと時間を割くこともできないため、エピソードの重要度、また必要性において疑問の残るものになっている。その点において、マリーメイアとバートン一族に比重を置くべきであったことは明白だ。とはいえ、それらが話数の都合で不可能なのも明らかである。結果的に、作品全体が急拵えの、付け焼き刃な印象であった。

五飛の問う"兵士のアイデンティティ"については、テレビシリーズでヒイロが既に答えを出しているので今更の感は拭えず。トレーズが五飛の拗らせを加速させたのは、中々に罪深い。2人の戦いはあまり格好のいいものではなかった。作品の性質上、見せ場としてバトルシーンを用意しなければならないことが、本作においては枷になっていた印象がある。デザインを一新されたMSの活躍が、より描かれて然るべきと感じた。

マリーメイアには圧倒的に論理力が欠けていた。リリーナを相手に持論は展開するものの、議論への発展を避けるが故に、互いの見せ場を作るに至らない。その辺りは二又の眉毛が恋しくもなるが、種々の"子供らしさ"をそこに見出してもいいのかもしれない。そもそも勝者を目指す時点でトレーズの意志を継いでいるとは言い難いが、前向きに捉えるならば独自の発展ともいえる。その点に関してはレディ・アンによる非常に前向きな補足もなされたが、そこにも少々疑問が残る。こちらとしては、『頭のおかしい人の身勝手な持論』として決着させてもらえれば問題は無く、安易に戦争を肯定するようなことはしてほしくないのが本音である。

作品としてはテレビシリーズの蛇足的なものに終わっているように思う。だが、新たなMSデザインは一部を除き、かなり向上しているように思う。特にゼロカスタムの有機的な意匠は今尚鮮烈である。トールギスは"血の涙"的デザインが無くなっていて残念。また、エピオンにも登場してほしかった。シナリオや演出は全体として甘い仕上がりであったが、熱くなれる場面が用意されていないわけではない。ゼクスとノインが共にいられることも喜ばしい限り。そして、子供が撃たれるシーンはやや不謹慎ながら、あまり見られない表現として印象的であった。

唯一の心残りは、ドロシーの不在である。
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