手塚治虫の名作「火の鳥」の望郷編を4℃が映像化。こんなの外れるわけないと思い鑑賞。まさに期待通りのものを出してくれた。満足度高めの作品。
火の鳥望郷編の本質を描いた作品でした。原作はもう少し長いですがエッセンスを抽出し再構成していた印象。望郷編はどうしても序盤のカニバリズムや近親相姦、つまり人間が究極状態にとってしまう行動の部分で語られがち。しかし、「望郷」が主軸であって、故郷へ帰りたい気持ち、そして新たな故郷は資本主義の加速によって朽ち果ててしまう。その要素をしっかり残して映像化されていてとても良かったと思います。
４℃の映像はやっぱり素晴らしい。１カット目から、あぁこれは成功だと思わせる美しい仕上がり。作画、美術、色彩すべてにおいて隙が無い作り。もう感動しっぱなしでした。これこれ、こういう映像を見たかったと思うものが多分に入っていてお気に入りの１つになりました。
演出も良く、とりわけ音の演出が良い。１話の夢から覚める、岩船の発進では音の効果によって一気に恐怖や臨場感感じられるものになっていました。
他の感想を見ると原作と違うからダメ、感情移入できないなど見ましたが、そもそも原作は複数あり、その新たな火の鳥が出来たと思ってみた方が吉じゃないかと思います。また、手塚治虫作品は展開で押し上げる系の作家で感情移入させるタイプではないのでその批判も的を得ていないような気もします。
【総評】
素晴らしい映像化。火の鳥の映像化の中でベストではないでしょうか。エッセンスを描き切り、かつ４℃の美しい映像で魅了される。
