鈴木パンナコッタ

トランスフォーマー アーススパークの鈴木パンナコッタのレビュー・感想・評価

3.9
ここ数年のトランスフォーマーでトップクラスの面白さ。非常に完成度が高く、面白かった。
従来の思想的な対立の時代が終わり、差別感情による対立が新たな争いを生む。それを乗り越えるのが戦争を知らない若い世代という、非常に現代的かつ完成度の高い作品だった。戦後を舞台にした日常から始まり、相互理解を深めて融和路線を推進するいい話。
サイバトロン対デストロンの善悪の戦いは「どうやって世界を統治するべきか?」という主義の違いが世界を二分したことから生じた。これは冷戦の構図から来ている気がしてて、当時の世相を反映したものだったと思う。が、ここ数年はアドベンチャーやサイバーバースなど戦後の物語が続いていて、多分冷戦をベースにした世界観が現代にそぐわなかったのだろうと思っている。戦争が終わり、日常の中で起こる小さな冒険のスケールに縮小していった印象。
そこでアーススパークは戦争で傷ついたトランスフォーマーたちと、ロボットへ向けられる人間の視線が軸に。ロボットへの差別感情は戦争経験の有無ではなく(プロレス回のロビーらの友人、バンブルビーファンのシュローダー等)、個々人の思い込み/思い入れや、触れ合った経験などによって左右される。
テランと機械的に心を通わせるマルト兄妹は地球・サイバトロン星の架け橋になる希望となる一方、肉体を機械化するマンドロイドはロボットの排斥運動を強化。双方が異星の技術の恩恵を受けているが、その行動は正反対となる。銃が悪いのではなく、銃を撃つ人が悪い理論。このアニメを見た子供たちに、我々一人ひとりの心がけで世界が良くも悪くも変わるのだと伝える。
人間に考えの違いがあるように、トランスフォーマーにも多様な立場・意見があり、秩序を維持するために法に従わないディセプティコンを捉えるというのは、そのままトランスフォーマーにも人間と同じ心があることを示す。機械ではなく、異星人としての側面を上手いバランスで表現している。最終話でスラッシュが「トランスフォーマーも人だ」と言い切ったのは見事。
排除の論理を標榜するマンドロイドに対して、対話を試みてきたテランがディセプティコンの協力を得るラストは感動的。人とロボットの肉体や出自の差を乗り越えて一致団結する、示唆的な展開。現代的なメッセージを込めつつ、エンタメとしても非常に盛り上がるバトル。
あと映像面も見応えがあった。普段は日常的な光景が続くので、本格的な戦闘になったときの3DCGをフル活用した立体的な空戦や、複雑な動きのカメラが変形やカーチェイスを追うなど、映画のような派手な映像は非常に迫力があった。アドベンチャーから導入された2D的なルックの爆炎や煙などの効果も、違和感なく馴染んでいる。短い尺の中でも楽しい映像だった。