めしいらず

響け!ユーフォニアム3のめしいらずのレビュー・感想・評価

響け!ユーフォニアム3(2024年製作のアニメ)
3.9
主人公たちがいよいよ最上級生になったのだからいろいろ盛り込んだ意気込みはよく分かる。だけどちょっと詰め込み過ぎてしまっている気がした。恒例の流れに加えて、新入部員らの反乱と鎮圧、優秀なライバル出現と彼女への言葉とは裏腹な主人公の割り切れぬ思い、意気込むあまり空回りする親友と部員たちの間の調整に難航し部内に広がる不協和音、三度にもわたるオーディション…。そのどれもがドラマ的に必要だし見どころなのだけれど、それらを全13話に収め切るには無理があった気がどうしてもしてしまう。あと5話くらいかけて描いてくれていたらと思ってしまう。何よりドラマを多く描くことで肝心の演奏シーンがあまりに少なく、楽曲が最後までほとんど聴こえてこないのが残念。恒例のサンフェスや夏合宿の件りなどは割りを食って通り一遍になってしまっている。とは言え…とは言え…なのである。それでもやっぱり最高に素晴らしい青春劇だったと心から思う。特に第12話が比類ない。人生に起こることはフィクション物語のようには甘じゃないし都合良くもない。おそらく大方の予想を裏切ったものではないだろうか。主人公クミコの思いを誰より知るレイナにソリ奏者を(分かった上で)選択させる残酷さが慣習的なドラマツルギーとは全然違ってあまりに大人で、もうこれは脱帽である。甚だもって素晴らしい。絶対にこのやり方が正しかったと思う。選ばれること選ばれぬこと、勝つこと負けることの非情さから、主人公だからって目こぼしされてしまっては全てが台無しだ。曇りのない大団円なんか真実じゃない。まさにリアルな人生の苦味そのものだった。ただ、最後の最後のあの部分は蛇足(髪留めの件など隙がないのだが…)な気がする。「悔しくて死にそう」から始まったこの一連の物語は「嬉しくて死にそう」で幕を下ろした方がより鮮烈な印象が残ったと個人的には思う。
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