シュローダー

大豆田とわ子と三人の元夫のシュローダーのレビュー・感想・評価

大豆田とわ子と三人の元夫(2021年製作のドラマ)
4.5
「カルテット」以外に観た坂元裕二脚本ドラマはこの作品だけなのだが、そりゃあつまらない訳がない。まず目につくのは豪華絢爛たる俳優陣。出てくると「おっ!」となってしまう人たちが脇役でさりげなく出てくるのにも驚かされるが、やはり主役の4人。これが全員素晴らしい。特に元夫チームの三者三様のボンクラぶりを見てるだけでとにかく萌える。何より最高だったのは岡田将生。僕はこの作品でほぼ初めてこの人の演技を見たんですが、凄く良い俳優だと思いました。わがまま放題で超ウザい子供っぽさ。それ故に1番真っ直ぐにとわ子へラブコールを送り続ける姿が回を重ねるごとに愛おしくなっていく。第1話での「マジカル頭脳パワー!」の引用によってとわ子の年齢設定を示しながらも、「ロマンティックあげるよ」を歌わせることによる心情表現も抜け目ない辺りの引用芸の面白さは勿論のこと、途中で予想の斜め上を行くアクロバットを決めるストーリーを象徴するかの様にバラモスを倒したと思ったらゾーマが出てきましたとばかりに満を辞して登場するオダギリジョー登場以降の展開はもう息をも吐かせぬスリリングさ。特に好きなのは8話。坂本裕二脚本×ファミレスのマジックに改めて痺れると同時に、元夫チームとはまた別の意味で隙だらけでボンクラで魅力的なオダギリジョー。「人を褒める」という行為が内包するインチキ性と、インチキ故に真実が内包され、「本音」を引き出すコミュニケーションの駆け引き。痛烈で粋と言わざるを得ない。「カルテット」の様な火の玉ストレートを直球で投げる脚本的ジェットコースターとは違い、重たいボディーブローを着実に重ねていくこの物語はどうやって終わるのかと心配になっていたが、これ以上なく優しいラストだった。とわ子とかごめの関係性に、元夫たちとの関係性に優雅なケリをつけてくれる。RHYMESTER「サイレント・ナイト」の歌詞を引用するならば「ひとりがさびしくないのはひとりじゃないからさ。いつだってまた会えると疑っちゃいないからさ。たとえ君が出したのが俺とは違うアンサーでも星の下似たステップを踊り続けるダンサー」といういつの世も普遍的な幸福の形を提示し、網戸を自分で直せるようになる大豆田とわ子の姿。これだけでグッと来てしまう辺り、まんまと坂本裕二の手の上で踊らされているなと感じずにはいられなかった。僕の好みからすればちょっと甘すぎる所もあるが、毎週観てて面白かったので良し。