シュローダー

MIU404のシュローダーのレビュー・感想・評価

MIU404(2020年製作のドラマ)
4.8
エンタメの極みをいく超面白いドラマである。まず言っておかねばならないのは、このドラマの脚本を務めるのは「逃げ恥」「アンナチュナル」「獣になれない私たち」最近では「犬王」も素晴らしかった新進気鋭の脚本家、野木亜紀子だということ。この人の脚本がまず凄い。基本的には日本のドラマの定番ジャンル「刑事バディ物」としてアクションもド派手に決める王道の展開を見せてくれるが、起きる事件の背景は、パワハラ問題。外国人技能実習生の搾取。など、現実の日本の「今」の社会問題を容赦なく抉り出す超ヘビー級のボディーブローを叩き込んで来るので、気楽に観る訳にもいかなくなってくる。しかし、それは決して説教臭く示される訳ではない。物語の一要素としてきちんと独立している。その要因は、やはり最高の役者陣が嫌味なく物語を転がしてくれるから。とにかく綾野剛と星野源という「コウノトリ」でもお馴染みのコンビのアンサンブルが一生観ていたいレベルで素晴らしい。"野生バカ"こと綾野剛の危うさと表裏一体の邪気を全く感じさせない笑顔一発でもう惚れちゃうし、星野源の心に闇を抱えながらも相棒にどんどん影響されてだんだん他人と自分を信じだしていく。「お前はどうしたい? 返事は要らない」この関係性を深めていく過程は、連続ドラマという形式故に積み重ねの重みが増してくる。モロにジョーカーな演技を楽しそうにやっている菅田将暉のお陰で最後の最後まで怒涛の展開を見せてくれるので退屈する事は一切ない。そして、このドラマを観ていて1番アガるのは、毎回最後に流れる米津玄師の「感電」。特に6話で流れる時のタイミングは余りにも完璧過ぎて失禁しそうになった。社会問題×エンタメのバランス感覚の巧さ。視聴者の感性を信じて敢えてミスディレクションを吹っかけてくる脚本など「攻殻機動隊SAC」すら彷彿とさせる見事な物語。このレベルのドラマが地上波で流せるなら日本のドラマもまだまだ捨てたもんじゃない。