Aix

SHOGUN 将軍のAixのレビュー・感想・評価

SHOGUN 将軍(2024年製作のドラマ)
3.9
真田広之がプロデューサーと主演を務めたFX制作の時代劇ドラマ。日本に漂着したイギリス人航海士と将軍に成り上がるまでの吉井虎永の話。

日本と海外の両方でヒットするようにとても上手くバランスが取れた作品でした。今作はラストオブモヒカンとかアバターのような白人至上主義的なノリもあるし、もっと意地悪な言い方をすると、日本のラノベにありがちな異世界転生モノとやっていることが結構近いんだけど、あくまでも按針が手のひらの上で転がされていて、前述したジャンルたちよりも一つ頭が抜けていたと思います。また、今作のベースがアクションではなく、駆け引きがメインのギャングドラマなストーリーだったのがとても良かったです。結局ギャングドラマならド派手な戦を避けられて予算が浮く上に、世界中でヒットしやすいし、観客の目を欺くのにもちょうど良い題材でした。

今作は全体的に雨とか地震の描写が多過ぎるし、若干CGも安っぽいものの、衣装、セット、撮影のおかげでルックは美しかったです。主人公の真田広之の芝居の振り幅は知れているため、役者で一番輝いていたのはアンナサワイでしたが、ねずみ男な浅野忠信は見ていて面白かったし、広松役の西岡徳馬は古き良き日本の時代劇のパフォーマンスで、なんだかとても懐かしかったです。コスモジャービスも愛嬌があって悪くなかったと思います。作品もキャストも、今作はエミー賞やゴールデングローブ賞のいくつかの項目でノミネートされてもおかしくはないでしょう。


とまあ褒めどころの多い今作ですが、キャラクターの感情の変化が少し早過ぎるような気もしました。歴史ものだからしょうがないとは言え、大阪やら江戸やら伊豆やらの行ったり来たりに尺を割くことが多い割に、鞠子は序盤で按針に心を許すし、按針と仲間の関係も結局必要最低限しか描かれません。もはや悲しいモンスター扱いをされていた落ち葉ももう少し葛藤して良かったです。全体的にリアリティのある作品ですが、所々ご都合主義っぽい瞬間があって、今作の落ち目になっていたのが否めません。この手のドラマにしては劇伴も弱くて、そういうところも評価が下がるポイントになっていると思います。

今作をゲームオブスローンズのような超大作にしたいのかは謎ですが、真田広之はシーズン2の出演にサインしたそうです。ただ個人的には、シーズン1の時点で魅力的なキャラクターのほとんどが役割を果たしたし、この先の虎永と按針の話はそこまで面白くならないような気もします。もしゲースロのように今作を長々続けていくのであれば、時代とキャラクターを変えた方が成功するかもしれません。結局いつの時代も、戦争で成り上がろうとしている日本人はいくらでもいるし、そんな時代にノコノコやって来た外国人も大勢いるので。

余談ですが、藤役の穂志もえかはこのドラマの出演後、海外から結婚してくれというDMが届いたんだとか。日本のおなごがみんなあんなふうだと思っちゃいかんでござる。。。
Aix

Aix