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SHOGUN 将軍の傘籤のネタバレレビュー・内容・結末

SHOGUN 将軍(2024年製作のドラマ)
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このレビューはネタバレを含みます

「所作」そして「顔」。それぞれの登場人物がそれぞれの思惑を持ち、どう”振る舞う”かが見所となる本ドラマにおいて、所作と顔は良い具合に作品の質を高めてくれています。「宿命」「胸中」「夢」というキーワードを序盤から散りばめることで、死生観や"秘すれば花"の考え方を見せていく過程も上手く、さらにそれら日本人の精神性を必要以上に理想化してはいないのも特徴でしょう。また、対するカトリックやプロテスタントの教義でさえ否定するようなことはしていません。ここら辺、演出や脚本がほんとよく出来てるなあと感じる点でした。

10話における虎永と薮重の会話シーンは本作を締めくくるのにふさわしい場面だったと思います。これまでひた隠しにしてきた本心を虎永が語る場面であり、すべては太平の世のために、死んでいった者の魂を犠牲にしないために、先の先を見据えている「未来への回想」。物語はいざ関ヶ原の戦いというところで幕を閉じますが、「紅天」はすでに成し遂げられ、彼の語る夢は確かな実感を持って実現します。
そこで私は気がつきます。私たちもまた虎永の意中、いや、夢の中にいたのかもしれない、と。
このドラマに登場する人物はそれぞれに宿命があり、覚悟を持ってそれに殉じていきました。彼らの生き様は各々が何を信じ、どのようにその宿命をうけとめ成し遂げるかに注がれているのです。しかしそこで見えている光景は、虎永のひた隠しにされていた胸中の、夢の中の一部であり、最終的に彼の壮大な夢へと収束するのです。まるで私たちも彼の意のままに物語を見続けていたのかのように、まるで私たちが彼にとっての胡蝶の夢だったかのように。
私たちが『SHOGUN 将軍』を観ているのではなく、
虎永が見た夢を、私たちが生きているのだ、と。

すべてが圧倒的でした。私の今年のベストドラマ候補です。
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