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HANNIBAL/ハンニバル3の傘籤のレビュー・感想・評価

HANNIBAL/ハンニバル3(2015年製作のドラマ)
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脚本が取っ散らかっている。シーズン1、2からテコ入れして新機軸の話を作ろうとしていたのか、あるいは本来もっと長く続くはずだった物語を無理やりワンシーズンでまとめたせいなのか、前半特に話の軸がブレブレで誰に肩入れして見れば良いのかわからない。見ていて気持ちが離れていく。しかも会話は思わせぶりで、何かの引用やメタファーらしきことばかりが続くため頭に入ってこない。引用やメタファーが決まるのはそれが後に意味を持った時だし、であるならば、極力抑えて視聴者の関心を繋ぎ止めるような会話にするべきだ。
アート性やゴシック感を出そうとするあまり画面が暗くなり過ぎているのもいただけない。画面内で何が起こっているのかが非常にわかりづらく、せっかく豪華な俳優が良い演技をしていても無碍にしてしまっている。暗い雰囲気に頼りすぎだ。画面か話、せめてどちらかでももっとクリアにしていればこんなに気持ちが離れずに済んだのに。
レッドドラゴンが登場してからはちょっと持ち直していたし、ここまで登場してきたキャラクターを使い捨てにするようなことをせず、それぞれにちゃんと役割を持たせていたのは好感。ハンニバルは最後までハンニバルとしての威厳を保ち、底知れない魅力を醸し出していた。それは一重にマッツ・ミケルセンの演技と容姿によるところが大きいだろう。新たなハンニバル・レクター像を提示するという点では大成功だ。ウィルについては良いところもあり、ダメなところもある。話の視点を彼に合わせると、途端に脚本は引き締まり、彼の能力である「犯人に共感することで犯罪の方法を解き明かす」という部分も映像的な面白さがあって見ていられる。だが、シーズン3ではそれがほぼ封印されているし、彼の気持ちがどっちつかずで見せ場に乏しい。錯綜する人間関係を描きたかったわけじゃないのに脚本がとっ散らかっているせいで、そう感じてしまうというのはこのドラマの明確な弱点だ。
……なんだか文句をつけ過ぎた気がする。シーズン1、2の出来に比べると落差のひどさを感じてこのような感想になってしまったが、本来シーズン7まで作るはずだった物語を諸事情により3シーズンにまとめることになったのだから、そりゃ綻びも生じるよな、とも思う。それを踏まえると、頑張って最終話の決着まで持っていたなと思わなくもない。思わなくもないが、やはり単体として見たとき、手放しで賞賛できない点が多いのだ、このドラマは。
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