Nagaki

D.P. -脱走兵追跡官-のNagakiのレビュー・感想・評価

D.P. -脱走兵追跡官-(2021年製作のドラマ)
4.5
まず、オープニングに見入ってしまう。

生まれた時、幼少期の発表会、運動会、そして入隊式の映像が流れるが、どれもお家のビデオカメラで撮影したような画質とアスペクト比で、手ブレもある。
写っているのは彼だけだが、そのカメラの裏側にいる、彼の家族の存在も同時に感じさせられる。

「兵役に行くのが義務である韓国の成人男性」としてではなく、「家族や恋人、友人など、大切な人がいる1人の人間」として、映されているのが、とても印象的だった。胸を締め付けられるオープニング。毎回泣きそうになってた。


本編も6話×約50 分で、サクサク見れるが、1話、1話が重い。
韓国ドラマの過剰な演出なのでは?と思うこともあったが、見終えた後に色々と検索してみると、韓国では「非常にリアルだ」という反響が大きかったということを知り、衝撃を受けた。
(このドラマを見て、「刑務所のルールブック」でのユ大尉のエピソードも、実際にあってもおかしくないと思った。)

このドラマの舞台になった2014年は、実際に、韓国の軍隊で大きな事件が起きていたらしい。
軍隊内で集団暴行を受けて、兵士が死亡してしまった事件と、兵士が銃を乱射して5人の兵士が死亡した事件。
どちらの事件の原因も、「軍隊内でのいじめ」だった。

本作でも、これらの事件を直接的には表現していないが、これらの事件を背景にしたであろう演出が見受けられる。



実際に韓国では、誰もが進んで行きたいとは思わない兵役を回避すると、容赦なく非難されてしまう。

芸能界では特に。

芸能人にとって、自分の人気が上がってきた頃に入隊をしなければいけないのはなるべく避けたい。また、俳優の所属事務所も、人気のある俳優が入隊すると、稼ぎ時を逃してしまう可能性もある。(ちなみに、D.P.主役のチョン・ヘインは、大学在学中に兵役済み)

ひと昔前は、韓国籍を放棄したり、自分の子供を留学させて、その地の市民権を取得させたり、疾患を患っていると偽るなど、あの手この手を使って、兵役回避をしようとした芸能人たちが多く、彼らは瞬く間に炎上し、非難を浴びた。

一方で、有名な話だけれど、「愛の不時着」のヒョンビンは、自ら最も過酷な海軍を志願して入隊したことで、さらに人気を獲得した。


日本人で、女である私は、
「韓国人の成人男性は兵役に行くのが義務である」ということは知っていても、
このドラマを見るまでは、「そうなのか〜、国も文化も違うし、そういうもんなんだろうな、、」くらいにしか思っていなかった。何も知らなかった。

しかし、このドラマを通して、肉体的にも精神的にも過酷な兵役を目の当たりにして、
なぜ、芸能人や裕福層の人たちの兵役回避や免除に対して、韓国人が敏感に反応しているのか、分かった気がする。

また、韓国人が家族をとても大切にする理由も、分かった気がする。
Nagaki

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