がらがら

イカゲームのがらがらのレビュー・感想・評価

イカゲーム(2021年製作のドラマ)
4.0
現時点でNetflix史上最も試聴され、この作品の成功によってNetflix株価を過去最高まで押し上げたほどの化け物韓国ドラマ。

内容としては日本では擦られまくったいわゆるデスゲーム物。プロットからゲームの内容まで様々な部分で『カイジ』や『ライアーゲーム』などの日本の作品から影響を受けたことが伝わってくる。

じゃあなぜ日本でもいくらでも作られているような作品が全世界でヒットしたか考えると、まずはなんといっても画作りの上手さだと思う。同じ人を集めてゲームをやらせるにしても、参加者は緑ジャージで事務局側はピンクの衣装に統一するだけで、地味なゲームですらもここまで画として映えるのかと感心する。番号管理される参加者たちという構図は社会的風刺も感じるし、一つ一つの美術もセンスが良くて見ていて面白い。

複雑すぎないゲーム内容も広くウケるためには良かったのかもしれない。正直、今作はゲーム自体の面白さには重きを置いていなくて、『カイジ』や『ライアーゲーム』などような作品の魅力の一つである、頭脳戦やルールを利用した逆転劇みたいなものはほとんど無い。ルールはシンプルで、勝敗もほぼ運や精神・体力の強さに左右されるものばかり、その辺を期待して観るとガッカリする人も多いと思う。自分としても頭脳戦は大好きなので、『カイジ』の鉄骨渡りを毎回やってる感じの今作は少し物足りない部分がある。でもシンプルだからこそ、だらだらとルール説明をするようなこともなく、誰でも状況を理解できて、映像作品としての面白さが損なわれていない。

またゲームの題材はメンコやだるまさんがころんだなどの昔の子供の遊びがチョイスされる。子供の遊びで本当に死ぬっていう、ギャップを狙ったど定番な手法ということもあるけれど、頭が悪くても貧乏でも遊びに強ければヒーローになれる「人生において唯一平等だった時代の象徴」という理由付けがされている。実際はそんな遊びでも体力がある奴や頭が回る小狡い奴の方が有利で、女や老人や馬鹿正直な人間などの弱者は脱落していく。真の平等なんてどの時代にも存在しないという残酷な現実を突きつけてくる。

ゲームの面白さに重きを置いていないことにも関わってくるけど、デスゲームとしては丁寧な人間ドラマも良い。『新しき世界』のイ・ジョンジェを始めとした実力派俳優をしっかり揃えて、ゲーム参加者たちの人間ドラマに重点を置いて描いているのが今作の魅力。韓国だけでなく世界で問題になっている、貧富の格差という社会問題をベースにしてドラマを構築しているから、デスゲームという荒唐無稽な設定でも登場人物たちに感情移入できる。

そんなんで脱落させていいのかよとか、一部の人間のエピソードの中途半端さとか、気になる所はいくつかあるし、これより面白いドラマはNetflixにはゴロゴロある。でもガラパゴスなジャンルと思われたデスゲーム物を世界トップの作品に仕上げてくる韓国エンタメ界の実力の凄さに圧倒された。

『スペース・スウィーパーズ』を観た時にも書いたけど、韓国の映画ドラマ業界では、良い作品を作ってそれが評価されて更に良い作品を作るという素晴らしいサイクルが完全にできていて、しかもNetflixのおかげで加速している。
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