このレビューはネタバレを含みます
全日本人が観るべき傑作。このような作品は、加害者である日本人の手で作るべきだった。
日本統治下の朝鮮での、日本人による人種差別と搾取。そこの朝鮮人たちは、言語や名前など、ありとあらゆるアイデンティティを剥奪される。
だが、性差別や性暴力事件も相まって、最も虐げられるのは、主人公ら女性たちだ。
それと並行して、バブル期の日本で暮らす老年の主人公とその孫たちの話が展開する。
以下、特に印象に残ったエピソード。
EP3
不動産投資の会社で働く主人公の孫ソロモンが、朝鮮人のおばあさんの立退交渉のために、主人公を連れて行く。
そこでおばあさんと主人公により語られる壮絶な苦難の過去。そして、バブル期に生き、もう差別なんかないと思い込んでいるソロモンには、その苦難が理解できない。世代間の断絶。
EP4
子供を身篭るも認知しないと切り捨てられ、新たな夫と見ず知らずの土地、大阪に立つ主人公の寂しさと孤独の身を斬るような痛みが、妊娠の痛みとして外面化しているのが巧い。
EP7
主人公を身篭らせたハンスの過去を描く。EP6までは日本人からさえ恐れられる冷酷なビジネスマン。
ハンスを不可逆に変えたのは、関東大震災での愛する父との死別と、デマによる朝鮮人虐殺事件である。
この虐殺事件は、日本の超保守層の一部から全くのでっち上げと叫ばれるが、世界的には、著名な大学の歴史学者により調査された歴史的事実だ。
そして最終話EP8。
かなり中途半端だなと思ったけど、シーズン4まであるっぽい。
現代へと接続する空撮が秀逸。問題は未だに残っている。
最後のドキュメンタリー場面が苦しい。
・2014.11.10関東大震災における朝鮮人虐殺――なぜ流言は広まり、虐殺に繋がっていったのか 加藤直樹×山田昭次×荻上チキ
https://synodos.jp/opinion/society/11601/
"震災後の2年後に出た警視庁の報告でも、「朝鮮人が暴動を起こした」といった話が流言であって事実ではなかったということを前提に書かれています。そうした流言がどのように発展し、どのように広がっていったのかということも分析しています。多くの朝鮮人が殺傷されたことについても書いています。"
"要するに朝鮮人虐殺が実際にあったこと、朝鮮人暴動などデマだったことは当時から常識だった。今になって、暴動はデマじゃなくて本当にあった、虐殺はなかったというようなことを言い出すのは、90年経って当時を知る人がもはやこの世にいなくなったのと、それをいいことに歴史を改ざんしようとする人々が増えたということです。"
・関東大震災朝鮮人虐殺事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E6%9D%B1%E5%A4%A7%E9%9C%87%E7%81%BD%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E4%BA%BA%E8%99%90%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
