ポレポレ

光る君へのポレポレのレビュー・感想・評価

光る君へ(2024年製作のドラマ)
4.9
NHK BSで視聴。

「もしも紫式部と藤原道長が幼馴染みだったら?」という大胆な設定の下、平安時代中期の貴族社会と紫式部の生涯を描いたドラマ。ヒロインのまひろ/藤式部(吉高由里子)が『源氏物語』を生み出し、また道長(柄本佑)が政治の世界での最高権力者となるまでの過程が、緩やかだが叮嚀な描写で紡がれていく。

最愛の人と添い遂げられない、望みのものを手に入れられない。喜びも悲しみも、楽しさも苦しさも全て味わい抱えながら人生は続く。良いことも悪いことも余さずに「生きること」を描いた展開は、大石さんが書いた朝ドラ『オードリー』を思わせた。男たちの権力闘争に女たちも協力する/させられる政治劇は見応えがあった。

初期の、まひろが市井にて歌の代作をしていたことが、『源氏物語』にて詠まれる数々の歌の原点という展開は巧みだと感じた。他にも『源氏物語』のオマージュらしき場面--後の『源氏物語』執筆時の材--が多数。できれば、物語を書き終えた喪失感だけでなく書けぬ苦悶も描いてほしかった。時代設定のためか大御所クラスのキャストが全然出演しなかった点が寂しい。

ききょう/清少納言(ファーストサマーウイカ)。
源倫子(黒木華)。
藤原公任(町田啓太)。
藤原斉信(金田哲)。
藤原行成(渡辺大知)。
藤原実資(秋山竜次)。
藤原兼家(段田安則)。
藤原道隆(井浦新)。
藤原詮子(吉田羊)。
高階貴子(板谷由夏)。
藤原道兼(玉置玲央)。
藤原伊周(三浦翔平)。
藤原隆家(竜星涼)。
花山天皇(本郷奏多)。
一条天皇(塩野瑛久)。
藤原定子(高畑充希)。
藤原彰子(見上愛)。
安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)。
……これまで僅かにしか知らなかった、或いは全く知らなかった平安時代の人物たちが、なんと生き生きとしていたことか。また乙丸(矢部太郎)・いと(信川清順)・直秀(毎熊克哉)・周明(松下洸平)・双寿丸(伊藤健太郎)といったオリジナルキャラクターの配置もよかった。“F4”(道長・公任・斉信・行成)の集いはいつ見てもおもしろく、“一条朝の四納言”--公任・斉信・行成・源俊賢(本田大輔)--は頼もしい。“呪詛周”は強烈だった。

メインテーマ『Amethyst』から始まる物語も終焉。嗚呼、喪失感が甚だしい!
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