うさこ

ザ・ステアケース -偽りだらけの真実-のうさこのレビュー・感想・評価

4.0
Netflixのドキュメンタリーをこの夏見たばかりだったので、はじめはあれだけ詳細な番組、しかもドキュメンタリーがあるのにドラマ化する意味があるのだろうかと思いながら見ていた。1,2話は特にそう。でも、フランスのテレビクルーたちが出てきて、あのNetflixの番組を撮り始めてようやく、このドラマはドキュメンタリーで描けなかったことに踏み込もうとしているんだと気づき、そこからはどんどん引き込まれていった。

ピーターソン夫妻の養子の娘たちがドキュメンタリーでは献身的に父親を支え、それがとても印象的でいじらしいほどだったのだが、それも一面的な見方だったのかも。実際、養子の娘たちにとって、いつ放り出されてもわからない家庭で、愛情をかけてもらったけど威圧的でもあった父親について公平に考えることができただろうか。

それから、ピーターソンを物理的にも心理的にも援助していたソフィーの存在も興味深い。彼女はNetflix番組の当事者なのだが番組には当然登場していない。収監中も何度もフランスから訪れ、彼を励ましていたという。なんというか、妻を殺した罪で捕まってるのに新しい恋人ができるとは、何という人たらしなんだろうとちょっとあきれてしまった。

そして、何よりこのドラマで意味深かったのは、トニ・コレットが演じるキャスリーンの過去が何度も回想として描かれたことだろう。ドキュメンタリーではピーターソンのソウルメイトであり、悲劇的な死をとげた愛妻。写真の中の彼女は幸せな人生を送っていたように見えたが、実際どうだったのだろう。作家とはいえそれほど収入があるわけでもないのに、理想につきすすむ夫、血を分けない4人の子。とてもストレスフルな毎日だったんじゃないか。仮説として何度も描かれた死の状況は、本当に恐ろしかった。

なぜキャスリーンは死んだのか。それは結局わからないままだったけれど、彼女が一生懸命に、誠実に生きていた女性だったこと、それなのに死後に残されたのは、のらりくらいと真実を語ることを避ける傲慢な夫だったということはよくわかった。ラストシーンは恐ろしいくらい真に迫っていた。
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