だんごむし

KLEO/クレオのだんごむしのネタバレレビュー・内容・結末

KLEO/クレオ(2022年製作のドラマ)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

東ドイツの秘密警察Stasiが育てた殺し屋Kleoが主人公。
最初はKleoの手腕に恐れを覚えるものの、観ているうちに彼女に感情移入していき、だんだんと彼女が、Stasiの作り上げた悲しきモンスターに見えてくる。
彼女がこんなにも殺しをやってきたのは結局、仕事で1番になって認められるためであり、それは唯一の身寄りである祖父からの愛情を十分に受けてこなかったから、裏切られたからである。

だからこそ、ラストのKleoの決断には驚かなかったし、とても腑に落ちたし、最終的に自分のための決断ができてよかったなと思った。

一方で面白いのは、このKleoをう警察官Sven. 詐欺を扱う管轄で,落ちこぼれだが、Kleoの暗殺現場に居合わせてからは、Kleoを逮捕することに執念を燃やし、仕事そっちのけで捜査をし、ついには首を切られる。
自分の目的のためには殺人を辞さないKleoもだいぶとち狂ってるけど、実はSvenも目的のために仕事や家族を犠牲にしてて、かなり狂ってる。2人とも仕事で認められたいという承認欲求で動いているあたりが実は2人で1人の人物のようで面白い。

最後は人間味のある着地だったな。


この作品でもう一つ特筆すべきは女性キャラがめちゃめちゃたくさん出てきて、力を持ってて、活躍してかっこいいということ。
主人公だけでなく、西ドイツ側の警察の偉い人も女性だし、最後にKleoを追い詰める東ドイツの暗殺者も女性、その人に指示を出してる人もまた女性。普通のドラマならかっこいいところや権力は全て男性が掻っ攫うし、それに慣れちゃっている悲しき視聴者を嘲笑うかのような痛快なセッティング。
Kleoが武力行使して、男どもが弱者の立場にいるっていう構図も、普通と逆で面白い。
またエンディングでは、敵だったはずの女性キャラの出産を咄嗟に助けるという女性同士の連帯も描かれている。


それから、Svenの奥さんはおそらくアフリカ系、西ドイツ警察のキーパーソンは中国系と、かなり幅広いバックグラウンドの俳優を集めている。その上でもちろんおもしろいドラマをしっかり成り立たせてるのだから、大きな拍手を贈りたい。
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