混沌から生まれる美味とドラマがクセになり見続けてしまいます。

うまいサンドイッチがウリの庶民派イタリア料理のファミリーレストラン。地元人気店ながら、外見はくたびれた感じで、壁は汚れ、古びた家具が雑然と並んでいます。厨房も混沌そのもの。怒鳴り合いが日常茶飯事のスタッフたちは、一癖も二癖もあるキャラクターばかり。

そんな店を舞台にしたこのドラマは、兄の突然の死をきっかけに名門フレンチのシェフだった弟カーミーが店を引き継ぐところから始まります。厨房は汚れ放題、従業員はバラバラ、さらには外部監査で低い評価を受けたり、水道管が破裂したりと、カオスな日々が続きます。それでも少しずつ、カーミーがもたらす新しい風と共に店が整っていく過程が描かれるのがこの作品の醍醐味でした。

なんといっても料理の描写がいい。どんな混沌の中でも、料理の美味しさが伝わってきます。名店としての底力を感じさせるシーンの数々が、視覚的な楽しさを提供してくれます。うまそー。

また、キャスト陣の演技も見どころです。主人公カーミー役のジェレミー・アレン・ホワイトは『アイアンクロー』（'23）で強く印象に残っていて、今回は緊張感漂う演技が物語を引き締めていました。そしてなによりスーシェフ（副料理長）シドニーを演じたアヨ・エデビリが素晴らしかったです。彼女の知的で可愛らしいキャラクターは、混沌の中に光を差し込む存在としてメチャメチャいいアクセントになっていました。プライムタイム・エミー賞で助演女優賞を獲得するほどの演技力にも納得です。その他のキャラクターたちはクセが強よすぎて、最初はイライラさせられますが、話が進むにつれて彼らにも愛着が湧くかもしれません。

エピソードは1話30分程度で、テンポの良いストーリーテリングが心地よいです。溜まっていくフラストレーションも観ていて嫌じゃないです。ただ、唯一残念なのはアジア人キャストがいないこと。これだけちょっと残念…。……とおもったらヒロ・ムライが製作総指揮の1人として名を連ねていた。ますます目が離せなくなりました。

シーズン2からは新装開店。新しい店名も気になります。今後どのようにお店が成長していくのか、目が離せないです。

このドラマが言いたいこと、伝えたいこと。というか、受け手の自分が勝手に解釈してるだけのこと。それは、誰もが孤独であり、誰かが誰かを愛していても、気がついた時は既に遅かったり、どのタイミングで受け止めれば良かったのかなーと頭抱えたりしながらも、日々生きて行かなくてはならないし、けれども、どん詰まりの時は誰かを頼ったっていいんじゃないかと語りかけてくれる。そんなエピソードが細かーく散りばめられたドラマというか、作品なんじゃないかなーと思ってる。

邦題タイトルから想像して、脳天気なグルメモノと思ったら、火傷する。それくらい、ヒリヒリするドラマだと云う事。原題は”THE BEAR”これは、シーズン1を最後まで観たら納得する。
シカゴの老舗サンドイッチ屋の厨房が舞台なのだが、ドラマとして、料理への情熱、ひたむきさも、勿論描いているのだが、今シーズンの主題は、そこじゃない。生々しいほどの痛みを抱えた主人公の店のオーナー、カーミーの奮闘劇と店の仲間がこれまでのやり方を捨て、チームワークで、店を再機能して行く所にある。
元々、カーミーは、ニューヨークの一流レストランでスーシェフまで登りつめたが、挫折し、そんな時に兄が他界して、その兄がオーナーを務めていたサンドイッチ屋のオーナーをやる事に。丁度店に志願して入って来た若い女性のシドニーがカーミーの店を一から立て直すプランに賛同し、初めのうちは空回りながらも徐々に店の仲間達の信頼を得ていく。だが、料理の腕は一流のカーミーも、人間的には、欠落だらけ。しまいには、シドニーにも見捨てられる事に。以下ネタバレ含むが、今シーズンのラストエピソードは、本当に秀悦。冒頭のアルコール依存者の会で、カーミーが語り出した自分にとっての兄への思い。実に自分とは、正反対の兄の喪失感と愛情が痛いほど伝わってくる。このラストエピソードで、兄の親友であり、マネージャーのリッチーとも、最初は、ウマが合わなかったが、グッと距離感が縮む出来事があり、序盤のエピソードで、リッチーだけが見つけていた、兄マイケルからカーミーへの手紙を受け取り、封を切った瞬間、カーミーは、勿論、
観てるこちら側も、涙腺が緩む。そして、手紙の裏側に書かれていた事が今後の店の将来を左右する大事な事が書かれていた。

私は、思わず二周したぐらいに、抜群に面白い。30分×8話で、観やすいし、今年観たドラマの中でも上位に入るだろう。

本当にいい
よくあるチーム一致団結系の話だけどキャラの心理描写と緩急の付け方がうますぎる
1話30分で怒涛のように押し寄せて終わるいさぎのよさも好き
キッチンの喧騒もワクワクした
リッチー回来るかなと思ったけどそれはS2でのお楽しみでした