これは好き。しかも、回を重ねるごとにどんどん面白くなっていく。プライムタイム・エミー賞で何度も耳にした“The Bear”（本作の原題）は、まさにこの作品だったんですね。シーズン1では、くたびれたレストランの混乱と迷走が描かれましたが、シーズン2では店名を“The Bear”に改め、新装開店に向けた奮闘が描かれます。

シーズン1の時点では「みんな胸糞悪い奴らばっかり」と思っていましたが、シーズン2ではそんな印象がどんどん薄れていきます。特に、“嫌いな奴”から“いい奴”への変貌ぶりが際立っていたのは、なんといってもリッチー。エピソード7の彼は最高でした。

そして、シーズン1ではストレスが溜まり続け、ムカムカがひっきりなしに湧き起こる展開が続きましたが、それはシーズン2でも変わりません。ただ、不思議とクセになりますね。まるでカラスミのような匂いに特徴のある珍味みたいに楽しめます。

混沌の中から生まれる美味とドラマ、その中毒性に引き込まれ、気づけば見続けてしまうのです。ヒステリーって案外美味ねー。

それにしても、スーシェフ（副料理長）シドニーを演じたアヨ・エデビリが今回も素晴らしかった。彼女の知的で可愛らしいキャラクターは、混沌の中に光を差し込むような存在で、物語に絶妙なアクセントを加えていました。プライムタイム・エミー賞で助演女優賞を獲得したのも納得の演技力。他の作品でも見たくなります。

1話30分程度というテンポの良さも心地よく、溜まっていくフラストレーションすらクセになります。アジア人キャストがいたら、さらに嬉しかったのになー。そこだけ残念！

• #料理店の舞台裏
• #アヨ・エビデリに注目

S1に引き続き人間関係の描き方が上手いし、嫌な空気のピリピリした感じがリアル😭
7話のリッチー回はお仕事ドラマとして完成度が高すぎて感動した
S3が楽しみ

「前作を超えるための挑戦」

前シリーズの成功に依存せず、大幅に構成を変えた挑戦的な続編。

全10話を一つの物語として設計し、とくに6話目に山場を置いた構成。各話30分ちょっとの中、この回のみ約60分の長尺で、映画的な完成度を持っており、いつまでも余韻の残る素晴らしいドラマシリーズでした。


■ シーズン全体のあらすじ
小さなサンドイッチ店を継いだカーミーは、仲間たちと共に新しいレストランを立ち上げる決意を固める。

改装や資金繰り、スタッフの再教育など、多くの困難に直面しながらも、一人ひとりが自分の役割や成長のきっかけを見つけていく。とくに6話目では家族の過去と向き合う大きな事件が描かれ、それを契機にバラバラだった人々が再び集まり、店を再生へと導いていきます。


■ 基本情報
制作年：2023年
監督（一部エピソード）：クリストファー・ストーラー、ラミー・ユセフ ほか
出演：
ジェレミー・アレン・ホワイト（カーミー）
エボン・モス＝バクラック（リッチー）
アイオ・エデビリ（シドニー）、ほか
※第6話は特別ロングエピソード（約60分）、豪華ゲスト俳優が多数登場


■ 感想
□ リッチーの成長
カーミーが復帰したことで居場所を失ったリッチー。苛立ちから店を飛び出すものの、行き先を問われて答えられない姿は痛ましいものでした。そんなリッチーが“サービス”の意味を理解し、自信を取り戻していく過程は感動的でしたね。

□ 家族と母親の描写
第6話では、母親の言動が子どもたちの心に深い傷を残してきた様子が描かれていました。これ、、、自分にも思い当たるところがあって、辛かったですね。

そんな”毒親”のもと、カーミーの姉のナタリーや、カーミー自身が不安やトラウマといったメンタルヘルスの問題を抱えているようでしたが、これらを正面から描く点も素晴らしく、不安に不安が重なってくるような描写は、とてもリアルでした。

□ 再構築・再集結
前半でばらばらになった人や場所が、6話を転機に再び集まってくる、ドラマチックでエモーショナルな展開。

リッチーやカーミーだけでなく、シドニー、マーカス、ティナ、ナタリーといった周囲の人物の成長も描かれ、誰が主役で誰が脇役かの区別がないような人物描写は、見事でした。


■ まとめ
前作を超える完成度を持ちながらも、過剰な演出に頼らず、人物描写と構成力で勝負したシーズン。

レストラン業界やメンタルヘルスといった社会的テーマを描きつつ、豪華なゲスト俳優を迎えた特別回を核に据えることで、単なる続編の枠を超えた作品に仕上がっていました。

アメリカの底力を見せつけられたような、本当に見事なシリーズだったと思います。