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エルピス—希望、あるいは災い—のsnowbirdのレビュー・感想・評価

4.5
さすが渡辺あや脚本。最近日本のドラマから離れていたけど、久々に良い作品に出会えた。展開の面白さ以上にリアリティとメッセージ性の深さを味わう作品。個人的に、作品の根底にある価値観に深く共感。善玉菌も悪玉菌も同じ。正しい報道とは何か、なんて誰にも分からない。正しいことをやろうとするより夢を見よう。
報道をテーマにした韓ドラ『ピノキオ』を少し前に観て、「正しい報道をしよう」というメッセージに違和感を覚えていたので、言いたいことを全部代弁してくれた感じ。
不自然で都合のよい偶然はなく、テレビ局の現場や取材風景など現実味がある。テレビ局内での力関係や国家権力との関係、組織が一枚岩でない描写なども説得力がある。
批判している人は、登場人物の多面性や余白を残す描き方、曖昧で白黒をつけない結末が、つまらない、分かりにくい、共感できないと感じるみたい。だが、好きな人間からすると、それこそが魅力なのだ。ヒロイン恵那の姿勢がブレブレという見方もあるが、それを正当化するのではなく、弱さや矛盾として描いている。朝ドラ『カーネーション』の糸子然り、ダメなところも弱いところも持ち合わせているからこそ、好きになれずとも共感できる。
サブキャラもの描き方もよかった。村井さん・笹岡さんが特にいいキャラ、役者の演技も良かった。

マイナス点を敢えて言うなら、シリアス、暗め、怖い描写も含む大人向けドラマなので気楽に見たい人は避けそう。また、冤罪事件など、すでに有名な事件を題材にしているため、知識がある人には新鮮味に欠ける。宗教や外国からの圧力などのダブーに切り込んでほしかったけど、まあこれが精一杯なのかな。
同時期に同じフジ系列で放送されていたSilentがやたら推されていた印象だが、エルピスから注目を反らしたかったという意図を感じる。
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