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THE DAYSのごnのレビュー・感想・評価

THE DAYS(2023年製作のドラマ)
4.0
見応えがあった。
見られる人は見た方がいいと思う。

ドラマとして。
映像は、最初は津波シーン等もあって、言い方は軽薄になるが「映像として」「壮絶」なシーンもあるが、大半は、第一原発免震棟、中央制御室、官邸など、建物の中の人間ドラマで。
だからこそ、人間の緊迫感、徒労感、悲壮感、死の覚悟とか、そういうのがめちゃくちゃ丁寧に丹念に伝わってくる作りです。
人が招いた災難をどうにかできるのはまた人間の力でしかないという感覚が伝わってきます。

あと、役所さん。私あんま、なぜ彼の評価が高いのか理解してなかったのだけど(安定した役者さんだなーぐらいにしか思ってなかった)。
今回のは、素人の私でも心臓鷲掴みにされる、すごい演技だ、と思いました。
表情や声のトーン、絶妙な間、ちょっとした挙動で伝えてくるものが、多い。ものすごい多い。本当に、吉田署長がそこにいた。



映像の力というものの必要性を実感したドラマ化だと思う。
映像であるべきだと思った。
それだけに、実際に被災されたかた、あの場にいた方は、見るのがつらいだろうと思う。
逆に言えば、これを見られてしまう、「映像の力」と言える自分が、いかに幸せで、いかに遠く彼岸のことと捉えていたかと思うと、恥ずかしくさえ思った。

活字(アナウンサーやキャスター、NHK特集番組の音声含む)では知っていた事実ではあったけども、その活字で表現されていたことに、血肉があること、活字と血肉の落差を本気で感じた。
「ベントです!ベントです!」とアナウンサーがぎゃーすか叫んでいて、遠巻きに白い煙をポフっと出した建屋の映像を、ただ、テレビのワイドショーでみていた、その裏で、こんな生身の戦いがあったのか、と、震えた。
中央制御室の彼らが、暗闇のなか、懐中電灯片手に危険な作業をしている最中に、私は、暖かい部屋で、電力消費をしまくって、テレビをただただ見ていたし、「東京に放射能が飛んでくるのか」だけを気にしていたような気がする。
もちろん、被災地に物資を送る手伝いとかもした。実際に現地に届けにいってくれた子の壮絶な話も聞いていた。地元が福島の子で、家が崩壊した子の話も聞いていた。それでも、です。それなのに、です。

被災地から遠く離れた官邸や東電本社のやからが、責任問題だなんだにとらわれて無責任なことを言い合っていたのを責めたくなったが、自分が「何やかやで遠く彼岸の出来事」としてしまっていたのと根本的なマインドは同じだったような気がして責められない。

人災かといえば、とどのつまり突き詰めれば人災だろう。
でも、電力を使っているみんなに責任がある。
日本の国土が狭いというのもあるかもしれない。
沖縄基地問題もそう。東京で「基地は防衛上必要」って言ってるやつ、代々木公園に基地できてもええのか、と、問われると否だろう。
経済発展に、CO2削減に原子力発電は必要だといっているが、じゃぁ、東京湾岸に原子力発電所作ります、って言い出したらNOだろう。
受け入れた側も、各自治体の事情があったと思う。
経済的に潤うだなんだあったのだろう、と。

SDGSといっているが。
CO2削減が未来の地球のため、未来の子供・人類のためだとしよう。
原子力発電というのはどうか。未来のためになってるのか。
私は原子力発電反対論者ではない。
合理的かつ非常に効率のよい発電技術だと思っているし、実際、日本という国の事業継続上、エネルギーの自給自足の観点でも、使わざるを得ない部分もあると思っている。
が、一方で、事故があるないに関わらず、「使用済み燃料棒をどうするのか」について、土に埋めて時間稼ぎをしているだけで、根本解決はどうするのか、未来に解決を委ねている。
だいたい、海水注入をし続けたから収束したのかどうか定かではない=原子力発電というものの構造や、リスク分析が終わっていないわけだ。
そんなもんを、増やすようなことが、SDGSなのか。
未来の地球のためになっている、というのか?

と、いいながら。
Netflixをこうこうとあかりをつけた部屋で、電力消費しまくりながら見ている自分もいる。
許して。ごめん。と。

何にせよ。

東電の現場のみなさんも、関連協力企業の皆さん、圧倒的に力強い統率力と体力と腕力と使命感をもった自衛隊の皆さん。
日本がどうこうとか、責任問題がとか、会社の存続がとか、そういうことじゃなく、福島という故郷であり地元であり家族が住む暮らしと命を守らねばと踏ん張ったみなさん。
「すまない」と言いたいけど、それを言ったら終わるから危険な任務を強いなければならない部下に「ありがとう」と言い続けた、誰かの夫であり父であり、普通の中間管理職サラリーマンであったはずの吉田署長を始めとする皆さん。
本当にありがとう。ありがとう。ありがとう。ありがとう。
あなたたちが、あんな壮絶な戦いをしていたとは、今日この日まで、ちゃんとはわかっていなかった。今もなおわかっていないかもしれない。
ごめんなさい。何かできることを考えます。

ってなりました。

っていうぐらい、いろんなことを考えちゃえるドラマですので。
私と同じように、「そうはいっても少し遠い話」だと思っていた人には見て欲しいです。活字だけだとわからないものがわかると思います。
ごn

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